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67.聖女

 俺は教皇の後へと付いて行く。そしてら俺の後ろにメリーさんが付いて来る。さっきの部屋での事があったため少し空気が重たい。


 その中で俺は考えていた。入り口で会ったクリスティーナ様は傷付けたら許さないと。メリーさんは傷つける前に帰ってくれと。教皇はこのまま1人では駄目だと。


 聖女には傷付けられる様な問題を抱えているってことか。何だろう。物凄く太っているとか? その程度だったら特に気にはしないけど。取り敢えず会ってみないとな。


 そんな事を考えながらついて行くと


「さあ、着いたよ」


 と教皇が言って止まる。ここに聖女がいるのか。


「キャロには来ることは伝えているからレイ君中に1人で入ってくれる? メリーは中に入るのは禁止ね」


「わ、わかりました」


 俺1人で入るのかぁ〜。緊張するな。今までの婚約者の出会いを思い出して糧としよう。


 アレクシアの時は、謁見が終わった後にアレクシアが入ってきて、初めはジークに決闘をお願いしたんだが、ジークが俺にする様に言ってきたので、俺とアレクシアが決闘をして、好かれたんだ。

 ……参考にはならんな。


 フェリスの時は、出会って早々顔を叩かれた。……これも参考にはならんな。


 仕方ない。行くか。俺が聖女のいるという部屋の前に立つと、メリーさんの視線が感じる。恐い。だけど俺は意を決して扉を叩く。すると


「どうぞ」


 と響く様な綺麗な声が聞こえる。そして扉を開け中へ入ると、そこには


「お待ちしてましたわ。レイヴェルト・ランウォーカーさん」


 俺と同じぐらいの身長の少女が立っていた。ただ不自然なのが、顔を隠していることだ。修道服みたいなを着て、顔を仮面で隠しているのだ。なぜこんなことをしているのだろうか。


 俺が不思議に思っているのがわかったのか、それとも毎回同じ顔をされてわかっているのか、わからないが


「やっぱり気になりますか?」


「え? ええ、それはもちろん」


 俺がそう言うと、聖女は自虐的に笑う。


「別に見せても良いのだけれど、これを見た後で婚約破棄すると、お母様がかなり怒るのよね。だから見る前に私が言った方が良いと思うのだけれど、どうする?」


「どうするって言われても……」


 このまま出て行くわけにはいかないだろう。


「見るよ。俺は何があろうと気にしない」


「……そう。後悔しないでね」


 俺が答えると、聖女は少し怒った雰囲気になる。なんかやっちゃったかな? そして聖女はまず頭まで覆っている修道服を頭の部分だけ脱ぐ。

 すると、中からサラサラと光り輝く金髪が出てくる。長さは腰ぐらいまである長髪で、聖女が首を振るたびにサラサラと揺れる。


 そして聖女は仮面に手をつけ、仮面を外すと中から現れたのは、綺麗な顔だった。母親譲りな切れ目で鋭い雰囲気があるが綺麗な顔をしている。そして右目は父親と同じ青い目なのだが、左目が黄金に輝いている。


「どう、気味が悪いでしょ?」


 と自虐的に言ってくる。俺には何を言っているのかわからなかったので首を傾げると、聖女も首を傾げる。


「……?」


「……?」


 そして俺が反対に首を傾げると、着いてくる様に聖女も同じ方へと首を傾げる。


「……って、何か言いなさいよ! 言いたいことあるんでしょ! 気持ちが悪いとか、化け物とか! 聞き慣れているから言いなさいよ!」


 そんな事をしていたら、聖女にキレられた。……そうか、みんなが言っていたのはこれが原因なのか。


 俺は4年前のマーリンさんを思い出す。あの時もただ目の色が違う事がばれただけで、魔法師団長を辞めなければいけなかった。今は辺境伯領で仕事をしているが、屋敷にいるとき以外は隠しているみたいだし。


 そして俺は聖女を見る。この子も辛い思いをしてきたのだろう。マーリンさんはそれだけで親に捨てられたと聞くし。


 聖女は両親には助けてもらってはいたけど、さっき本人が言ったみたいに、この目を見た人には辛辣な言葉を浴びせられてきたのだろう。


 ましてや、聖女は国中どころか大陸全土に知られている。そんな子がオッドアイなんて知られれば、隠していた教皇たちは問題に晒されるだろう。普通の子では耐え切れないほどの重圧を感じている筈だ。


 彼女の目からは涙がうっすらと見える。そんな言葉慣れるはずないのに強がって。


 俺は無言のまま聖女へ近づく。聖女は俺が一歩近づく度に一歩後ろへ下がる。


「な、何よ! な、何か言いなさいよ! 何か……え?」


 そして俺は彼女を抱き締める。本当は駄目なんだろうけど、今は何か言葉にするよりこうした方が良いと思ったからだ。


「最初にも言ったが俺は気にしない。だから君も俺の前では隠す必要は無い。もう我慢する必要は無い」


 そうして俺は力強く抱き締める。聖女はビクッと震えたが、おずおずと俺の腰へ手を回してくる。


「……良いの? 我慢しなくても」


「ああ」


 そして聖女は俺の胸へと顔を埋め声のならない声で泣き出してしまった。俺はただ彼女の頭を撫でることしか出来なかった。


 ◇◇◇


 数分後泣き止んだ聖女は、この部屋にあるソファーへと座り、対面に俺を座らせる。そのとき彼女の顔は茹でタコみたいに真っ赤になっていた。そんな顔されるとおれも恥ずかしいんだが。


「……」


「……」


 ……この沈黙の時間は辛い。何か話さないと。ええっと、やっぱりこういう時は相手の趣味とか聞くのかな? 好きなものとか? ああ、わからん! そんな1人で葛藤をしていると聖女がおずおずと話しかけてくる。


「は、恥ずかしいところ見せたわね。改めて自己紹介しましょ。私の名前はキャロライン・アルカディアよ。周りからは知っていると思うけど聖女って呼ばれているわ」


「はい、俺の名前はレイヴェルト・ランウォーカーと申します」


 俺が自己紹介すると、キャロラインにクスクスと笑われる。な、なんだ?


「ふふ、そんな堅苦しい話し方しなくて良いわ。さっきの砕けた感じで良いわよ。私の事はキャロって呼んで」


 そう言い微笑んでくるキャロ。うん可愛い。アレクシアやフェリスたちとはまた違った可愛さだ。完成された人形に表情がついた様に綺麗だ。


「わかったよ、キャロ。それでこれからどうしようか?」


「そうね。あなたは本当に良いの? こんな目を持つ私だけど」


「何回も言う様だけど、俺は気にしない。俺の知り合いにも1人いるしね。俺はその澄み通る様な青い目も、何もかもを照らす様に光輝く金色の目綺麗だと思うから」


「そ、そう……」


 俺がそう言うと、顔を俯かせ真っ赤にする。聖女なんて言われるけど、やっぱり1人の女の子だな。


「私の目はね」


「ん?」


 突然話し出すキャロ。あの目には何か理由があるのか?


「女神の加護のせいなのよ。女神の加護を持つものには称号か、スキルを与えられるんだけど、そのスキルに『神眼』っていうのがあるの。それがこの左目。

 魔力に応じて、距離関係なく遠くを見れたり、相手のステータスを見れたり、過去、未来を見ることも出来るわ。余りにも魔力が必要になるから使ったこと無いけど」


 と笑うキャロ。はぁ〜、それは凄いな。遠くを見れるだけでなく、ステータスやその上過去や未来まで見通せるのか。その分魔力が必要になるみたいだけど、普通に凄いな。


「あともう一つ能力が『絶壁』っていうスキルがあるの」


 絶壁。俺はキャロのお胸様を見る。すると前からクッションが飛んできて、俺の顔面へとぶつかる。


「グフッ!」


「……次やったら許さないわよ!」


 キャロの方を見ると涙目で胸元を隠しながら睨んでくる。気にしていたんだね。


「そ、それでその『絶壁』がもう一つの能力なのか」


「ええ、これは悪意のあるものを防いでくれるの。物理も、魔法も、毒も、全て。常時発動型で私を守ってくれる。さっき私をだ、抱き締めたのも、もしあなたに邪な思いがあれば発動していたはずよ」


 それは危なかった。それにしても凄い能力だな。あらゆるものを防ぐか。


「魔力を追加する事で範囲を広くできるし、今の私が頑張れば教皇国は囲えるわね」


 凄いとしか言えない。しかし、そこまで俺に話しても良いのだろうか。まだ今日会ったばかりなのに。俺が思っているのがわかったのかキャロは話し出す。


「良いのよ。あなたは私と婚約するのでしょ? なら隠す必要は無いし」


 顔を赤くしてそう言う。なら俺も話すか。

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