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61.呼び出し

 ーレガリア帝国王宮ー


「カナミン、いったい何があるんだろうね?」


「わからないけど、あまり良い予感がしないよ」


 私はマリとそんな話をする。今日はいつも通り、訓練が終了し、さあ夕食にしようと思った時に、この国の第1皇女のカタリナ皇女が訓練場にやってきた。そこで


「みなさん、訓練お疲れ様。疲れているところ申し訳ないのだけど、私についてきてもらえない? お父様が呼んでいるのよ」


 と言われた。カタリナ皇女は、私たちと歳が近いからか、コウキ君たちと仲が良い。私は時折見せる冷たい目線がどうしても信じられないためそこまで仲は良くないけど。


「やあ、カタリナ。大丈夫だけど何かあったのかい?」


「そんなことないわよコウキ。ただ呼んでいるだけだから。ふふふ」


 とカタリナ皇女はコウキ君の腕を胸元に抱くように掴む。それを見たアユミさんは


「ちょっと、カタリナ。コウキにちょっと引っ付きすぎじゃない?」


 と、怒る。これは良くある光景なので、誰も気にしないけど。そしてカタリナ皇女についていくと、連れてこられたのは王座の間ってところ。


 ここで皇帝陛下に謁見したりするらしい。みんなで中に入ると、中には大臣たちが左右に並んでいる。うぅ、こういうところは慣れないから緊張するなぁ。


「カナミン、顔青いよ。緊張してる?」


「マリ、それはそうだよ。こんな豪華な場所に立ったことないんだから」


 私がそう言うと、マリはクスクスと笑う。もう! それに周りの大臣たちの雰囲気がピリピリしている。何があるんだろう。


 そんなことを考えていたら


「皇帝陛下のおな〜り〜!」


 声がする。その瞬間全員が片膝をつくようにしゃがむ。これは玉座の間で謁見する際の、初めの姿勢って習った。そして皇帝陛下が


「面を上げよ」


 て、言うまで上げちゃダメなんだって。そして


「よくぞ参った勇者たち。ここでの暮らしはもう1年になるがどうだ?」


「はい、何不自由なく暮らさせていただいています。これも皇帝陛下のご配慮のお陰です」


 と私たちを代表してコウキ君が話し出す。こういうのには慣れているのか、堂々としている。それを横で見るアユミさんは見惚れているわ。マリはその姿を見てクスクスと笑っているけど。趣味悪いよマリ。


「そうか、それは良かった。それでお主たちを呼び出したのはそろそろ実戦に出てもらおうかと思ってな」


 それを聞いた瞬間、全員に緊張が走った。やっぱり嫌な話だった。


「それはどういうことですか?」


「ん? 軍団長に聞けばお主たちは皆訓練では物足りないほど、成長していると聞く。それなら次は実戦を経験するべきだと思ってな」


「……実戦というのはどういう形で?」


 コウキ君が皇帝陛下に聞くと、皇帝陛下はニヤッと笑った気がした。


「戦争に決まっているだろう」


「なっ!」


 それを聞いたみんなは絶句した。そんな。戦争なんて。


「なに、いきなり人を殺せとは言わんよ。軍団長率いる10万の軍にただ付いて行って貰えば良いだけだ。戦場の雰囲気を知るために」


 ククク、と笑う皇帝陛下。そんなわけない。戦場へ行ったら必ず出されるに決まっている。それほどの力を勇者たちは持っている。S級の冒険者さんたちには及ばないけど、軍団長と渡り合える人たちだっているんだから。私にはそこまでの力はないけど。


「カナミン……」


 そんなことを考えていたら、マリが顔を真っ青にして私を見てくる。そうだ、私は決めたんだ。こんな世界に来ても私を心配してくれるこの大切な親友を守るって。私はマリの手を握って


「大丈夫だから。私がそばで付いてるから、ね」


 と言うと、マリは心なし顔色が戻った気がした。


「時期は来年の冬が明けた時期になる。軍団長よ。その時まで、勇者たちを育てるのだぞ」


「はっ! お任せ下さい!」


 時期まで後1年ないくらい。その間に死なないように強くならないと。


「場所はどこになるのでしょうか?」


 とコウキ君が聞く。


「場所はレガリア帝国とナノール王国の国境にあるランウォーカー辺境伯領だ」


 何としても生き残らないと。天国から私たちを守って、隼人従兄さん。


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜レイside〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 そんな話が進んでいるとも知らずに俺は馬車に揺られていた。理由は王様に呼ばれたからだ。魔族に出会ってから1週間が経とうとしていた。


 師匠から話を聞いた次の日は、みんなにもう1日様子を見て休めと言われたので休み、次の日から学園に登園した俺は、ダグリスたちに質問攻めにされた。


 傷は大丈夫なのかとか、体調はどうだとか、色々と聞かれた。それほどに心配かけてしまっていたとは申し訳ない気持ちになる。しかしその後が最悪だった。


「魔族にナイフを刺されたレイを見たときは私も、エレアも思わず叫んでしまったわ。だって心臓に一突きなんだもの。でもその時にレイが『まだ、終わらせねえよ』って言いながら魔族の手を掴んだのは驚いたわ」


「うん、もうダメだと思ったのに動くから」


 エレアとシズクが俺と魔族の戦いを熱演しやがるからだ。


「あれは凄かったわね。いきなりレイの体が青紫に輝き出すと、雷が迸りレイの体が雷そのものになったんだもの」


 興奮しているのか顔を真っ赤にして話すシズク。止めてくれ。頼むから。


 そんなこともありながらも何とかこの1週間は乗り越えた。そして今日は王様からの呼び出しで、俺とアレクシアとフェリスで馬車に乗って王宮へ向かっている。


「陛下は何の用事で俺を呼んだんだ?」


「さぁ? 私はお父様に呼んでこいって言われただけだからわからないわ」


「私が呼ばれた理由は?」


 フェリスもアレクシアに聞くが、首を傾げるだけ。いったい何の用だろうか?

よろしくお願いします!


訂正

53話から話数がずれていたので訂正しました。

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