表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

67/350

59.王弟

 かなり怒った様子で家に入ってくる師匠。その後ろにいるアレクシアとヘレンさんもかなり怒っているみたいだし。何があったんだ?


「師匠、昨日はありがとうございました。ここまで運んでいただき」


「ああ、目は覚ましていたんだね。良かったよ。あいつとやり合って、ほんとよく無事だったよ。さすが私の弟子だ」


 師匠は俺が起きているのを知ると、先ほどの怒りが嘘のように、とても柔らかい笑顔を向けてくれた。その上、褒めてくれて、頭を撫でられる。なんか恥ずかしい……


「本当に良かったわ。私とヘレンが師匠と学園にいた時に、いきなりレイの魔力が膨れ上がるんだもの。その相手の魔力も凄まじかったしね。私も師匠について行きたかったけど、相手が危険だから師匠だけで行くっていうから仕方なく待っていたのよ」


 と言うアレクシア。やっぱりここまでわかるほどだったか。


「もう少しで軍も出そうでしたしね」


 と微笑むヘレンさん。マジか。俺がそう思ったのがわかったのか、ヘレンさんが「大丈夫ですよ。ちゃんと学園長が止めてくれましたから」と笑っている。それは良かった。


「それで、何があったんですか? みんな雰囲気が恐かったというか」


 俺がそう言うと、アレクシアとヘレンさんは顔を赤く染める。それを見た師匠は


「あはははは、2人とも怖がられているぞ」


 と1人で笑っているし。いや、1番恐かったの師匠ですから。まあいいや。とにかく、 話を聞くために座ってもらおう。みんなを席に連れて行き、そしてなぜ怒っているのかを話してもらった。


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜アレクシアside〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「師匠! 本当にレイには異常はなかったのですか!?」


 私は心配のあまりに師匠に強く言ってしまう。レイと私が出会って4年になるけど、あんなに衰弱したレイはあまり見たことなかったもの。いつもなんだかんだ言いながらも、笑顔で帰ってきてくれるレイ。ああっ、そんなレイが愛おしい! 


 昔はあの愛くるしい顔で真剣な表情を頑張って作ろうとしていたのが可愛かったわ。今は成長して可愛らしさは少しなくなって残念だけど、逆にカッコよくなってきているわ! それはそれでいいと思ってしまう私は、やっぱりレイの事が大好きなのね。そんな事を思っていると


「何度もしつこいよ、アレクシア。レイは大丈夫だよ。レイが切り札を使った事による魔力枯渇なだけだ。昨日から1日寝ている。1日も寝れば回復するだろう」


 と師匠が言う。うう〜、何度聞いても心配なのは心配なのです! ヘレンも私の隣でソワソワとしているし。はぁ、本当はレイの家に残って看病したかったのだけれど。


「師匠、それでお父様にはどの様に報告するのですか?」


「ん? そんなのありのまま言うしかないさ。実際にあの森の中心はほぼ消滅してしまって、元に戻るには時間がかかってしまう。それにあの魔力に気付いた者もいるだろう。隠し通せないなら言うしかないさ」


 そう言い、腕を組んで目を閉じてしまう師匠。今私たちは、馬車で王宮に向かっている。理由は昨日起きた森での事件を話すため。


 あれ程の轟音と雷鳴、あの魔力が王都の近くで発生した事により、直様、軍の警戒態勢が敷かれた。その上、王宮に大臣たちが集まっており、そこで軍を派遣して確認しようということが決まったのだ。


 しかし、いち早く何が起きているのかわかった師匠が止めたのだ。自分が先に確認して報告するからと。


 私もヘレンもあの雷鳴と魔力により直ぐにレイが巻き込まれているというのがわかった。4年も一緒にいれば好きな人の魔力ぐらいわかるわ! ヘレンは恥ずかしがって言わないけど、あの雰囲気は確実にわかっていたしね。


 そして馬車に揺られること数分。私たちは王宮に着いた。そして王宮の中へと入っていく。まだ原因がわかっていないためか兵士たちがいつも以上に立っている。


 私たちは謁見の間まで歩いて行き中へ入ると、大臣たちが左右に並んでおり、一番奥にお父様が座っている。……なんでグルタス叔父上がいるのよ。普段は政務には出てこないくせに、こういう時だけ出てくるんだから。


「レイモンド。森の事なんだけど確認してきたよ」


 そんな事を考えていたら、師匠がお父様に話し出す。普通だと不敬罪になる様な話し方だけど、師匠は許される。昔から王家の剣術指南役としているから信頼も厚いしね。


「おお、学園長。お手数おかけいたしました。それで、どうだったのですか。王都に危険がないならば直ぐに警戒態勢も解除しようと思うのですが。民たちも不安に思ってしまうので」


「ああ、危険はもう無いよ。私が行った時に去って行ったから」


 師匠がそう言うとお父様は直ぐに背後にいたゲインへと何かを言う。多分警戒解除を伝えのだろう。そして


「それで学園長。あの雷鳴などの原因は何だったのだろうか」


 そこで師匠が説明を始める。レイがクラスメイトたちと冒険者ギルドの依頼を受けに行っていたこと。その依頼の場所である森で魔族と出会ったこと。その魔族が、大昔に封印されたはずである七魔将であった事。その七魔将からクラスメイトを守るため、レイが魔法を使った事。そして戦いの場になった森の中心が消滅した事など。全てを話した。


「……七魔将か。そして今後5年内に全てが封印から起きるか」


 そう言い頭を抱えるお父様。それはそうよ。これはこの国だけの問題ではなく、大陸全土の問題になるもの。今まで魔族の問題は遠い国の話だったけど、今は考えないわけにはいかないし。


「それは本当の話なのですかな?」


 そんな事を考えていたら、突然声が聞こえてきた。その方を見るとそこにいるのは


「……何が言いたい、グルタス」


 グルタス叔父上だった。


「いや、話を聞けばそのレイとやらは学園長の弟子だそうではありませんか。そのレイが森で問題を起こしたのを隠蔽しようとして嘘をついているのでは無いかと思いましてね。その七魔将も目覚めるのにあと100年はかかる筈です。違いますか?」


 私は最後の方に言っていることはわからなかったが、師匠は驚きの表情を浮かべている。


「グルタス。貴様どこでその事を」


「グフフフ、私にも色々と伝がありましてね。そう言う噂もあると耳にしただけですよ」


 と気持ちの悪い笑みを浮かべるグルタス叔父上。昔からあの笑顔は苦手だった。あのドロッと濁った目で見られると、震えてしまう。今は耐えられるが、あんな目で見られるくらいなら、レイにしかん……ゴホンッゴホンッ! 見られた方がマシだ。


「私も予想外だったのよ。まさかこんなに早く封印から目覚めるなんて」


「そうなのですか。ならそういう事にしておきましょう。それでそのレイとやらはどうするので、陛下?」


「どういう事だ、グルタス」


「王都近くの大切な資源である森を中心だけとは言え消滅させたのですよ? 何か処罰を与えるべきでは?」


「な! ふざけないで、グルタス叔父上! レイはクラスメイトを守る為に戦ったのよ! レイが戦っていなかったらそのクラスメイトは全員死んでいて、もしかしたら王都まで被害が出ていたかもしれないのに、それなのにレイに処罰なんて!」


 私はグルタス叔父上のいう事に我慢が出来なくなった。何をふざけた事を。今回だって魔力枯渇で倒れる程頑張ったのに、それなのに!


「それは、アレクシア殿下がそのレイの事を好きだから庇っているのではなくて? 余り私情を持ち込まれては困りますなぁ」


 ブチッ!


 私の中で何かが切れる音がした。私はアイテムボックスからツインベルを出そうとしたが、誰かに手を掴まれた。その方を見ると


「頭に血が上り過ぎた馬鹿者」


 師匠が私の手を握っていた。……もう少しで謁見の間で剣を抜くところだった。いくら王女だからといってここで剣を抜けば反逆罪に問われても仕方が無い。でも、あのふざけた顔を殴りたい!


「……レイには処罰は与えん。さっきアレクシアが言った通りレイが戦わなければ、そのクラスメイトにも、もしかすれば王都にも被害が出ていたかもしれん。それを未然に防いでくれたのだ。感謝はすれど、処罰などありえん」


「……そうですか。まあいいでしょう」


 そう言い謁見の間を出て行くグルタス叔父上。普通では処罰ものなのだが、この人はお父様の弟だ。誰も何も言わない。


「学園長。ご苦労でしたな。アレクシア。レイにはまた王宮に来てくれと伝えてくれ。話したい事がある」


「わかりました陛下」


 さすがにここではお父様とは呼べない。そして謁見が終了し私たちはレイのいる家へと馬車を走らせる。もう丸一日寝ているわね。早くレイに会ってこのイライラを消したいわ。


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜レイside〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 そんな話があったのか。それにしてまグルタス王弟陛下か。そこまで狙われるようなことあったかな。


「あんまり考えないでね、レイ。グルタス叔父上はお父様を、玉座から降ろそうと必死なのよ。そのため、お父様のマイナスになるような事があると今回みたいに出てくるのよ。お父様の政治は民から信頼されているからそんなことできないけどね」


 と笑うアレクシア。でもいくら王様が玉座を降りようとも、次は息子のアルバート王太子が引き継ぐんじゃ無いのか? その辺はどうなのだろうか。よくわからん。


 あっ! そう言えば師匠に聞いておかないといけない事があったんだった。


「師匠、聞きたい事があるのですが、知っていれば教えて下さい」

 

「ん〜? なんだ〜? おっ、これ美味いな、エアリスも上手だな。アレクシアのは壊滅的だからな〜」


 とケラケラ笑う師匠。アレクシアは顔を真っ赤にして師匠に怒る。別に料理は出来なくても気にしないよ、アレクシア。それよりも俺が聞きたい事を聞こう。


「勇者召喚されたって本当ですか?」


 俺がそう言った瞬間、師匠の料理を取る手が止まった。そして俺を見て


「なんで知っている?」


 と聞いてくる。周りのみんなは話がついていけないのか、困惑としていて、アレクシアだけ驚いた表情を浮かべる。アレクシアは知っていたのかな? 女神アステルの言う通り本当だったのか。

よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
[良い点] 明らかに叔父上消した方がいいでしょ! 次松魔族出てきたら率先して戦わせたらいい 王命ならいけるでしょ 笑
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ