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55.森での遭遇

 俺たちは冒険者登録をしたその日は、依頼を受けずに帰った。理由はただ単にもう遅くなってしまったからだ。今から依頼を受けて、荷物運びなどの雑用の依頼は出来るだろうが、かなり遅くなってしまい明日の学園生活にも支障をきたすという事で、今日は行はなかった。


 そして。その次の日の放課後、再びやって来た俺たちは依頼が貼られている掲示板を物色する。ちなみに今日は、エマとバードンも来ており、ラビさんの元で冒険者登録中だ。


「さあ、何受けようかな? やっぱり雑用より討伐系の方がいいよな〜」


 とダグリスが聞いてくる。しかし残念な事に最底辺のFランクの依頼だとゴブリンかキャタピラーか1つ上のEランクのウルフやバトルビー、スライムってところか。ちなみにスライムは、前世の某RPG風の可愛らしいスライムではなく、アメーバみたいなドロドロとしたスライムだ。見た目は内臓が見えていてかなりグロテスクだ。そしてスライムの攻撃は、酸を吐いてくる。普通の鉄の剣だったら溶けるくらいの強い酸だ。


「やっぱりゴブリンとかかしら?」


「えぇ〜。そんなの村にいた頃と変わらねえじゃねえか」


 とレーネの意見に反論するダグリス。そんな事言われても、受けれる討伐系がそういうのしか無いからな、仕方が無い。掲示板の依頼票はBランクまで張り出されている。Aランク以上になると貴族からの依頼などもあり、重要な依頼などもあるために、受付で管理しているらしい。


「取り敢えずゴブリンを受けよう。ここから1時間ほど歩いたところにある森にいるからすぐに行けるし」


「そうっスね。ゴブリンなら幾ら倒しても大丈夫っスから、この人数でも行けるっス」


 とケイトも同意してくれる。ゴブリンは常時討伐依頼だ。こいつらは放って置くと、勝手に増えている。黒いあいつらみたいに繁殖力が半端無いのだ。殆どはゴブリンが生んでいるみたいだが、あいつらは雌なら何でもいいらしく、人間の女性も襲われ苗床にされる事がある。


 その上、肉は不味すぎて食えないらしくと、全く役に立たない生き物だ。余りに放って置くと、集落を作るらしいし。


 昔、ゴブリンの集落を放っていた貴族がいたらしく、増えているのを知っていたのに、軍事費や冒険者を依頼するお金を出すのを渋ったために、ゴブリンが増え過ぎて、貴族の領地が襲われ滅んだ貴族もいたとの事。


 その時のゴブリンの数は5千体ほどもいたらしく、リーダーとしてゴブリンキングがいたとの事。ゴブリンキングはBランクの魔物で、他のゴブリンが成人男性の腰ぐらいの大きさに比べて、2メートル近くの巨体になるらしい。


 領民が1万ほどいたらしいが、戦える者が少なくて、国軍が着いた時には、男は殺され、女はゴブリンに犯されていたそうだ。年なんか関係なく、下は10歳にも満たない女の子から、上は老婆まで。既にお腹が膨れている女性もいたみたい。


 その事件があってからは、冒険者ギルドでは、常時討伐依頼を出している。普通ゴブリンは売るところがなく、稼ぎにはならないが、国がお金を出して依頼しているため、成功料が保障されている。その為、お金の無い冒険者にとっては、稼ぎのいい依頼になっていたりする。それでもかなり低いので1日使ったら無くなるのだが。


 ゴブリンを討伐すると、ゴブリン1体で30ベルになる。王都だと、安いものだと300ベルで夕食が食べれるぐらいなので、頑張れば夕食が食べれるくらいの金額だ。


 ちなみに、この大陸の通貨はベルと言い、1ベル硬貨、10ベル硬貨、100ベル硬貨となっており、銅貨で大きさを変えたものとなっている。それ以上の通貨として、1千ベル紙幣、1万ベル紙幣がある。この大陸ではこのように、既に紙幣を使われている。


 これは大陸共通で使えるもので、特殊な魔法が使われている為、偽造は出来ないらしい。何でも、数百年前の勇者が広めたらしい。その時代は銀貨や金貨を持ち歩く時代だったが、ジャラジャラと持ち歩くのを嫌った勇者が紙幣を教え広めて今に至ると。そう簡単に行くのかなと思ったりもするのだが、多分色々とあったのだろう。


 そんな事を考えていると、エマとバードンの登録が終わったらしく、ラビさんが呼んでいる。


「お2人の登録は終了しました。今日は依頼を受けますか?」


「はい、森に行ってゴブリンを狩ってこようと思います」


「そうですか。レイ君たちなら大丈夫と思いますが気をつけて下さいね」


 とラビさんに見送られながら、俺たちは冒険者ギルドを後にする。近くの店で必要な水などを購入して門を出る。別に水魔法などで作っても良いのだが、全員が使えるわけでは無いし、逸れた時に持っていなければ、命に関わるので買っておく。俺も万が一魔力が尽きた時の為に買っておく。


 そして、門を出て1時間ほど、舗装された道を歩いて行くと、道の外れに森が見えてくる。此処が今日の目的地だ。


「そういえば、そこの道を通ることは有るけど、森の中へ入ったことは無いわね」


「それは、入る必要が無かったからっスよ。ここに入るのなんて、冒険者ぐらいじゃ無いっスか?」


 とケイトが言ってくる。確かに普通は入らないよな。高さは3メートル程の木々が鬱蒼と生えている。中の方に入ると木々のせいで太陽の光も微かにしか入らないだろう。


「よし、それじゃあ、入るか!」


 とダグリスが先頭を歩く。それを見て溜息を吐くレーネ。なんかこれを見るのも慣れてきたな。


 ダグリスの後を追うみんな。森の中をどんどん進んでいく。もう少し警戒心を持ってほしいが。


 そのまま、歩く事10数分。……いくら何でもおかしい。この森に入ってから魔物どころか、動物すら出てこない。鳥の囀りも聞こえず、聞こえるのは、木々の揺れる音のみ。他のみんなは話しながら進んでいき、気づいていないようだ。しかし、


「レイ、何かおかしい」


 と、エレアも思ったようだ。このまま中に入っては不味い気がする。これ以上進まない為に、みんなを止めようとしたが、それは手遅れだった。


「お、急に開けたところに出たぜ。……ん、誰かいるぞ」


 俺たちはが辿り着いたのは、今まで木々が鬱蒼と生えていたのに、その場所だけ穴が開いたように、何も無いところへとやってきた。そして、そこにいたのは


「おや? ここに人間が来るとは珍しいですねぇ」


 と銀色の長髪に紫色の肌。耳が尖っており、モノクルを右目に付ける男が立っていた。

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