50.対抗戦
気が付いたら閑話を抜いても50話!
ダグリスが停学してから1週間程。今日は対抗戦の日だ。クラスのみんなも緊張しているのか表情が硬いな。
「おっす、レイ! 調子はどうっス?」
と俺に話しかけてきたのは、俺の後ろの席になるケイト・シリンガーだ。見た目は制服も着崩してただのチャラ男だ。その上かなりのお調子者だが、シリンガー男爵家の長男で班長をしている。
「ああ、ケイト。俺はいつでも大丈夫さ」
俺とケイトが話しているとそこに女の子がやってくる。
「あ、あの、ケイト君。み、みんなじゅ、準備できました!」
とおどおどした感じのこの女の子は、ケイトと同じ班でエマ・ラルローシャ。この子もラルローシャ男爵家の長女でケイトとは知り合いらしい。目がクリクリしていて可愛らしいのだが、前髪で隠してしまってよく見えない。しかも、俺は少し避けられている。理由は教えてくれない。
「お、そうか。ありがとうっス、エマ」
と、頭を撫でるケイト。エマもまんざらじゃ無い様子。ケイトの手のひらに子犬のように擦り寄る。ケイトも身長が160手前まであるから150ほどのエマを撫でるのも苦では無いのだろう。
……俺はようやくエマを少し超えたぐらいなので、アレクシアとかを撫でる時は、少し背伸びをしなければいけない。アレクシアは170ぐらいあるから。早く成長期は来ないのだろうか……
そんな事を考えていると、
「レイ。準備できた」
とエレアがやって来た。後ろにはレーネもいる。ちなみにエレアも160ほどでレーネが俺ぐらいだ。
「了解。それじゃあ行こうか。ケイトたちも行くか?」
「もちろんっス」
ケイトも一緒に行くというので、ケイトの班の残りのメンバーの元へ行く。そこには黒髪の長髪をした女の子と、大きな盾を持った男がいた。
「遅いぞケイト。準備ができたと言っているだろう」
「まあまあシズクさん。落ち着いてよ」
と女の子はケイトに怒り、男の方は宥めている。女の子の名前は、シズク・カイドウという名前らしく、昔にレガリア帝国が召喚した勇者の中の1人の子孫らしい。何代か前の人がレガリア帝国からナノール王国へと移動して今に至るとの事。
そして男の方はバードンという。体が12歳か? と聞きたくなるような巨体をしている。農村の出らしいが、兵士になりたくてこの学園に来たらしい。
「申し訳ないっス、シズクさん。それじゃあ先生のところへ行きましょうか」
とケイト班が先生のところへ向かうので俺たちも付いていく。先生に準備完了の報告をするためだ。
「……はいケイト班とレイ班準備完了ですね。ルールは前にお話しした通り、敵から班長を守り抜くのが今回の対抗戦のルールです。班長を倒されると班員が残っていてもその班は失格になりますのでご注意下さい。
あとこの空間は入り口は一緒ですが、入ったら転移しバラバラになりますので、班員同士は手を繋いで入ってくださいね。ではご武運を祈っています」
とメアリー先生が横にずれる。この入り口は訓練用の特別迷宮に繋がっているらしい。なんでもこのカルディア学園の創始者の1人が作ったらしく、今ではどのようにして作ったかはわからないとの事。中の物が壊れても次に入ったら直っているらしいし、中で怪我をしても外に出れば治っているという。不思議すぎる。そんな事を考えていると
「それじゃあ、僕らの班から行くっス。出会っても負けないっスよ」
とケイトが言ってくる。
「俺たちも負ける気はねえからな」
俺も言い返すと、ケイトは笑って空間へと入っていった。よし俺たちも行くかな。
「はい、エレア、握って」
俺はエレアに左手を差し出す。エレアも右手で握ってくる。レーネはエレアの左手を握っている。
「よし、行くぞ!」
そして空間へ踏み込むと、うおっ! 目の前が真っ白になって空を飛んでいるような感覚に陥った。そして次の瞬間周りが暗くなったので目を開けると、
「……校舎の中?」
そこは廊下だった。まるでカルディア学園の中みたいだ。しかし今とは少し違う古い感じ。創始者が作った時代の物か?
「なんか古い感じね」
「でも綺麗」
確かに新品同然だ。やっぱり作ったばかりの学園の時代なのか。
「よし、ダグリスの為にも何としても勝つぞ!」
「うん!」
「当然!」
よしやるか!
短いですが評価等よろしくお願いします!




