46.クラス
飛ばされた男は腰に下げている剣を抜く。この学園は武器の帯刀は許可されている。なのでこの男子生徒も剣を持っているわけなのだが
「覚悟しろよ、このアマ!」
完璧に頭に血が上っている。流石に止めないと何方かが怪我するまでやり続けるぞ。そう思った俺が間に入ろうとした瞬間、
「何をしているの、あなたたち!」
と女性の怒鳴る声が。声のする方を見ると……あなたこそ何をしているのでしょうか?
「な! なぜあなた様が学園に! 卒業したはずじゃあ!」
剣を抜いた男も驚き、剣を下ろしてしまっている。周りもびっくり。俺もびっくりだ。戻ってきたダグリスが「誰だあれ?」ってレーネに聞いて「なんで知らないのよ!」って叩かれている。そこにいたのは
「なんでいるかって? それは私がここの教師になったからよ!」
大きなお胸様を張るアレクシアがいた。
アレクシアの発言にみんな唖然としている。その中で紫髪の生徒は首を傾げる。彼女も知らないみたいだ。
「今年からこの学年の武術の実技担当になったのよ。よろしくね!」
アレクシアがそう言うと、周りは大歓声。男も女も関係なく喜んでいる。アレクシアは女性からもモテるからなぁ。そしてアレクシアは、俺の方を見てウィンクする。もしかして俺が入学したから?
「それよりもあなたたち入学早々問題起こして。まだ未遂だから許すけど、これでもし怪我人なんか出してたら入学早々停学よ。昔にも実際になった人がいるんだから気をつけなさい!」
……絶対にエリスとエリザ母上だ。そんな話をジークがしていたのを思い出す。確かその時は1ヶ月の停学と雑用をさせられていたって言っていたな。
「ちっ、わかりました。覚えていろよこの女」
男は剣をしまうが、紫髪の生徒を睨みつける。しかし
「……だるい」
って言って教室は戻って行った。身長ほどある巨大な斧は腰にあるポーチへと入っていく。アイテムボックスか。
騒動が収まったのがわかった生徒たちはみんな教室へと入っていく。ダグリスやレーネも教室へ入る。俺はというと
「どういう事だよアレクシア。いつから決めていたんだ?」
アレクシアに問い掛ける。
「ん? いつからって言われても、元々考えていたのよ。教師になるか軍に入るか。私、元々年下大好きだし。それを師匠に相談したら、取り敢えずレイが卒業するまでは教師をやってみたらどうだって言われてね。でもいきなり教えるなんて出来ないからこの2年ほどは、軍の訓練に参加しながらも、ここの教師たちに教え方とかについて教わっていたのよ。レイの驚く顔が見たくて黙ってたの。……もしかして怒ってる?」
俺が黙っているのを怒っていると勘違いしたのか心配そうに見てくるアレクシア。ふぅ。俺はアレクシアの頭を撫でる。
「……そんなわけないだろ。アレクシアが決めた道だ。俺がとやかくいう事じゃない。それに……俺も会いたいしな」
俺がボソッと最後に言った言葉もしっかりと聞いていたようだ。物凄い笑顔で俺を抱き締めてくる。く、苦しい!
「あ、あの〜アレクシア先生? 早く中に入りましょうよ〜」
とアレクシアの背後から声が聞こえる。誰だ?
「あ、忘れていたわ。ごめんなさいねメアリー先生。レイに会えて興奮しちゃった」
と俺を離してくれるアレクシア。そしてアレクシアの背後には身長が150センチ程の緑色の髪をした女性が立っていた。メロディ副学長といい勝負だ。お胸様はもちろん無い。少し気の弱そうな雰囲気の女性だが誰だ?
「レイ紹介するね。この子は、メアリー・ビネガー先生。私の同級生で副学長の歳の離れた姉妹になるの。この子も魔法がとても得意でね、在学中は魔術実技はいつもトップだったのよ。ね、メアリー」
道理でメロディ副学長に似ているわけだ。身長もお胸様も。
「そうなんだ。初めまして俺の名はレイヴェルト・ランウォーカーと申します。よろしくお願いします」
俺が挨拶をする。
「あ、はいメアリー・ビネガーです。よろしくお願いします! って、それよりも教室に入りましょう! もう時間です!」
と教室へ向かうメアリー先生。俺も早く入らないと!
そして中に入ると机と椅子が横に8、縦に5の計40席並べられている。しかも机と机の間に人が1人通れるくらいの間がそれぞれの机に空いている。席は自由みたいで残るは1つしか無い。そこを見ると左側はダグリスで、反対の右側は紫髪の生徒だった。
廊下側の一番端の席の前から3列目に紫髪の生徒。俺は廊下側から2列目前から3列目になる。そこに座ると
「遅かったじゃねぇか。どうしたんだ?」
と、ダグリスが聞いてくる。席は開けていてくれたみたいだ。
「いや、ちょっとね」
俺が言葉を濁すと、ダグリスは首を傾げるもそれ以上は聞いてこなかった。そして
「みなさん、おはようございます! 今日からこの教室の担任になりますメアリー・ビネガーです! よろしくお願いします!」
と教卓に立ち高らかに挨拶をするメアリー先生。アレクシアは帰ったようだ。
「え、あの子が先生?」
「学生じゃなくて?」
「すげぇ、小さいんだけど」
「ロリ、ハァハァ」
みんな、メアリー先生の見た目が幼いせいか、先生だと信じられないようだ。……最後のやつはメアリー先生に近づけないようにしないと。
「なあ、先生よぉ。来る場所間違ってんじゃねえの? ここは託児所じゃ、ありませんよぉ!」
とさっきのキレていた男がメアリー先生にそう言い笑い出す。周りの3人ほどいる仲間の奴らも一緒に笑う。さっきの乱闘騒ぎといい、なんだこいつら? 俺がそう思った瞬間、
ズパァン!
と、男の顔の横を赤い矢が通り過ぎる。男の顔を擦り髪の毛はチリチリと少し焦げていて、突き刺さった壁には黒焦げの穴が開く。火魔法のファイアアローかな。物凄いスピードだったけど。
そしてみんなが矢の飛んできた方を見ると、人差し指を男に向けているメアリー先生の姿があった。
「……先生?」
1番前の真面目そうな男子生徒がメアリー先生に尋ねると、
「ペチャクチャ、ペチャクチャとうるせんだよてめぇら! こっちが挨拶してんだからてめぇらも挨拶しやがれよ! しかも私の方が年上だ、ボケェ! このクソ野郎、今度ふざけたこと抜かすと、その眉間ぶち抜いて、血の海に沈めるからな! わかったか!」
と怒鳴り散らすメアリー先生。……一体誰ですか? 男の方をチラッと見ると「は、はいぃ〜」としか言えていない。みんな唖然とメアリー先生の方を見る。メアリー先生は
「……あ、ご、ごめんなさい! 私、興奮するとさっきみたいになっちゃって。普段は気を付けているんだけど、今日は初めての教師デビューでしかも自分のクラスを持つから緊張しちゃって!」
とアワアワと謝るメアリー先生。さっきの見た後だとみんな何も言えない。
こんな事もありながらも学園生活がスタートした。
ただ、みんなで最初に話し合ったことは、メアリー先生を怒らせない様にしようだったが……
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