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45.入学式

 メロディ副学長が話し出し数分後、全部の席が埋まった。参加しているのは新入生と、貴族の親たち。教師に生徒会の人たち。上級生も後ろの方の席に座っている。そして


「それでは、これよりカルディア学園入学式を始めたいと思います。まず、我が校の学園長である、シルフィード・シックザール学園長から挨拶を賜りたいと思います。シックザール学園長、お願いします」


 メロディ副学長がそう言うと、壇上に師匠が上がる。いつもと違って凛とした表情で生徒たちを見据えている。新入生たちも剣聖の話が聞けるからか緊張した面持ちで話し出すのを待っている。


「では、初めましてという者もいれば、久しぶりという者もいるだろう。私が当校の学園長をしているシルフィード・シックザールだ。世間では剣聖などと呼ばれているエルフだ。まあ、老婆の長話なと聞きたくないだろうから手短に話そうと思う」


 見た目20代の女性が何を言っているんだか。


「私が言うことは1つ、目標を持ってほしい。何でもいいから自分が頑張れる目標を持ってもらいたい。ライバルに勝ちたいや、この魔法を習得したいなど、新しい魔導具を作りたいや、あの子と付き合いたいなど、何でもいいから目標を作って、そして在学中に達成してもらいたい。そのための努力をするなら私たち教師陣や上級生たちも喜んで力を貸そう。私に挑むでも良いぞ。受けて立とう」


 そう言い俺の方を見て笑う師匠。俺は目をそらす。俺の方を見ないでください。そんな事を思っていると


「うおっ、今剣聖が俺を見たぜ。これは期待されてんのかな?」


 と隣のダグリスが反応した。


「そんなわけないでしょ。あなた程度が剣聖に目を向けてくれる訳ないじゃない」


 レーネはダグリスに対しては結構酷いな。


「それではこれからの学園生活を頑張ってくれ。私からは以上とする」


 師匠が下りるとともに拍手が起こる。そして次から次へと挨拶がされていく。何人するんだろう。ダグリスなんか半分寝ているし。レーネが時々起こさないと確実に寝ているぞ。


「つきまして、在校生代表、生徒会長のマリーナ・ナノールによる挨拶になります。ナノール生徒会長お願いします」


 メロディ副学長がそう言うとマリーナ王女のが壇上に上がる。悠然として歩くマリーナ王女。その姿に男子生徒は見惚れる。アレクシアとは違って愛くるしい感じだからな。身長は150ほどで顔は童顔で止まったと嘆いていたが、アレクシアと似たようなお胸様をお持ちだ。いわゆるロリ巨乳ってやつ。男たちは保護欲が刺激されるらしい。


「皆様、在校生代表として挨拶させて頂きますマリーナ・ナノールと申します。まあ、他の方の挨拶で大体の事は言われてしまったので、簡単に挨拶させて頂きます。私がこの学園に入学して思った事は、1人では何も出来ないでした。それは私の生活が原因とかでなくて、授業の1つ1つが1人で進めるものが座学以外は無いからです。武術や魔法の訓練にしても基本は4人一組の班を組み練習します。魔物の討伐訓練などもありますが、それもクラス毎で行いますし。なのでクラスでは1人にならずに仲間を作ってください。1人ではこの先死んでしまいますから」


 笑顔でなんてこと言ってんだあの王女は。言っていることはわかるのだが怖い。


「頑張ってください。簡単ですがこれで挨拶とさせて頂きます」


 そして下りていくマリーナ王女。簡単すぎるだろ。


 そして式は進みようやく終わりになる。


「それではこれをもちまして入学式を終了致します。入学生につきましては会場に入る際の受付で貰った紙の場所へ向かってください。そこがクラスとなります」


 メロディ副学長の話が終わると周りが少しずつ移動していく。隣を見ると


「ぐぅぅう〜」


 ……完璧に寝てやがる。レーネも起こすのは諦めたようだ。隣で知らないふりをしている。


「レーネ、起こさなくて良いのか?」


「……そうね。移動しなきゃいけないし。ほら起きなさいダグリス!」


 レーネはそう言い頭を思いっきり殴る。うわぁ〜痛そう。


「痛! 何すんだよレーネ!」


 ようやく起きたダグリス。やっぱり痛かったようだ。


「あんたが寝ているからでしょ! ほら、式が終わったから移動するわよ!」


「わかったから引っ張るなって」


 まるで長年連れ添った夫婦みたいだな。多分本人たちに言ったら怒られるんだろうけど。


「そういえばレイはなんて書いてあったの?」


 レーネに聞かれたので、俺は受付で貰った紙を出す。そこに書かれていたのは、


「俺は風だな」


 この学園は5クラスに分かれていて、それぞれ火、水、風、土、光と別れている。1年生のクラスだと1ー風とか呼ばれる。ださいな。なんでも基本的な魔法属性に合わせているとか。闇が無いのは余り良い印象がないとかなんとか。メロディ副学長がそんなことを言っていたのを思い出す。


「あら、それなら私たちと同じじゃない。これは運命ね! レイが私たちを雇ってくれるっていう!」


 下心がだだ漏れだぞレーネ。俺は苦笑いしながらも2人と一緒に行く。こういう繋がりが、ジークやマリーナ王女の言う仲間になるのかな?


 そんなことを思いながら数分程歩いていると、


「お! あそこだぜ。早く行こう」


 とダグリスはクラスを見つけ出し走り出す。レーネはもう慣れたのか疲れた顔をしている。……今度体に良いものをあげようかな? 俺たちも教室に着いて、ダグリスが扉を開けようとした瞬間、


「ぐへっ!」


 な! 扉が吹っ飛んできてダグリスに直撃した! よく見ると男が吹き飛ばされている。扉ごと飛んできたのだろう。ダグリスは下敷きになっているが大丈夫だろうか?


「く、くそこのアマ! こっちが仕方なく構ってやったというのに攻撃しやがって!」


 お、吹き飛ばされていた男が立ち上がる。少しは丈夫みたいだな。そして教室に向かってキレる。何があったんだ?


「……別に頼んでいない。あなたが勝手に話しかけてきて、その上私の体を触ってきた」


 そして教室から出てきたのは自分の身長ほどある斧を担いで、紫色の髪をツインテールにし、紫色の目をした美女が出てきた。身長は160前後で普通サイズのお胸様だ。……えらく眠そうな雰囲気だな。


 なんか入学式早々面倒なことが起きたぞ。巻き込まれるのも御免だからこのまま知らぬ振りを……


「このアマ! ぶっ殺してやる!」


 ……出来そうに無いな。

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