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41.別れ

「う〜ん。もう朝か」


 俺はベッドから起きる。最近寝てばっかりだったから体が硬いな。


 何故寝てばかりだったかと言うと、あの事件の後、体を動かす事が出来ずに寝込んでしまったからだ。


 ヘンドリクスが起こした王宮の事件から2週間が経過した。


 この2週間何をしていたかというと、さっきも話した通り寝込んでしまっていた。


 理由は身体付与のやり過ぎによる疲労と、血の流し過ぎによる貧血だ。


 俺と師匠とマーリンさんは戦いが終わった後に王宮に戻ろうとしたのだが、俺はあまりの疲労に動くことができなかった。

 今までそんなことが無かったので何故か! と思ったが、自分の鍛えている以上に肉体を行使したからだと師匠は言う。


 確かにカオスボルテックスの身体付与を2回も使ってしまったしな。魔力不足で気を失わなかっただけマシか。


 そして貧血はそのままだ。腕を切った時と、腹に風穴を開けられた時に血を流し過ぎたのだ。


 貧血に関しては、水魔法で傷は治せても血は増やせないみたいだ。


 そのせいで1週間近く寝たきりの状態で、残り1週間で体を動かせる様、運動をするのに使ってしまった。


 戦いが終わった後に王宮に戻ると、アレクシアたちに会うことが出来たが、俺の怪我を見てみんな慌てふためいてしまった。ヘレンさんは悲鳴を上げて、フェリスと目を覚ましたフィーリアとクロナは泣き出してしまい、アレクシアには怒られ、そして今度はエリスが気を失ってしまった。


 確かにエリスには悪いことをしてしまった。数時間前に息子の腕が切り飛ぶ姿を見たのに、今度は息子の腹に風穴が空いている状態だったのだから。


 その後はアレクシアが手配してくれた宮廷医師の治療により風穴は治すことが出来たのだが、目を覚ましたエリスに1日中怒られたのは言うまでもない。


 王様やジークも無事に、王宮の中心にある上級魔法障壁を発動させる魔法陣の所まで行けたようだ。なんでもこの魔法障壁は、王都全域か、王宮のみに魔法障壁を展開するかを魔力の量で選べるらしく、今回は王宮のみ展開したと、後でジークに聞いた。

 物凄く魔力を消費するらしいが、衝撃や魔法は一切通さないらしい。今回は無駄になってしまったが、別に構わないと王様は笑ってくれた。


 獣王様とフェリスたちは1週間前に獣人国ワーベストに帰ってしまった。もともと滞在期間は2週間ほどだったらしく、俺の寝ていた間に期間が来てしまったらしい。


 俺は屋敷で寝ていたのだが、そこまで獣王様たちが来てくれたのには驚いた。


 獣王様は


「さすが俺の息子(義理)だ!」


 って言うし、アシュレイ王妃もそれに頷くし、ファーガス王子は


「次は絶対勝負するぞ! 義弟!」


 と言ってくるから、またフェリスが怒るんじゃないか! と思いフェリスの方を見ると、顔を真っ赤にしてモジモジとしていた。


 ……何だこれ? 1週間前に俺を殴っていたフェリスはどこへ行った?


 そんな話もしながらも、獣王様たちは帰っていった。最後にフェリスが


「2年後に来るからよろしくね!」


 って顔をまた真っ赤にしながら叫んでいたが、どういうことだったんだろう? 2年後に来る用があるからまた会いましょうって事か? ……わからん。


 ただ、ジークが終始ニヤニヤしていたのが気になる。獣王様とも何か話していたみたいだし。


 ……まあ、2年後になればわかるだろう。


 そんな事もありながら、2週間が経ってしまった。


 その間の看病はクロナはもちろんクロエにフィーリアまで手伝ってくれた。そしてもう1人。


 コンコン


 ドアがノックされる。丁度来たようだ。俺が返事すると、


「あら、起きていたのね。体の調子はどう、レイ君?」


 と入ってきたのはマーリンさんだ。


 何故ここにマーリンさんがいるかというと、理由は王国の魔法師団長を辞めてしまったからだ。理由は勿論呪い持ちだということが魔法師団の団員たちにバレてしまったためだ。


 今まではマントに付いているフードを深く被って、魔法で見え辛くしていたので気付かれなかったが、この前の戦いの時に吸血鬼にフードを破られ魔法も解けてしまったため、みんなにバレてしまった。


 その事は直ぐ様、王宮の兵士たち全員が知る事となり、他の知らなかった貴族たちも大騒ぎだ。


 事件が終わった後の会議では、その話題も出て、出席していたマーリンさんも色々と言われたらしい。ジークも関係があったため出ていたのだが、それはもう酷かったとのこと。


 批難は勿論の事、今直ぐ王国を出て行け! や、自分たちを騙していたのだから賠償金を払えなど奴隷になれなど、貴族とは思えない馬鹿みたいなことを言い出す貴族もいたみたい。


 その他には、呪い持ちだった事を隠していた王様や宰相、ゲイン近衛団長を批判する声もあったみたいだ。これは殆ど王弟の一派だったみたいだけど。


 まあ、これに参加していた師匠がキレて一同は黙ってしまったと、ジークが言っていた。


 この戦いに関係するって事で師匠も勿論参加していた。基本は会議などには出席しない為今回も黙っていたみたいだけど、流石にマーリンさんの話は聞き逃せなかったみたいだ。


 まあ、マーリンさんの為を思ってナノール王国に連れて来たのが師匠なのだから当たり前か。


 ただ、隠していたのは事実だったので、王様は落とし前として魔法師団長の退団を指示をし、それにマーリンさんも同意したのだ。ちょっと目の色が違うだけで何故? と思ったりもするのだが、それほど根深いという事だろう。マーリンさん本人も居づらいだろうしね。


 そして、行く当てのないマーリンさんを師匠とジークが屋敷に連れて来たのだ。今後どうするかはまだ決まっていないが今のところは屋敷な滞在する予定だ。


 そして、屋敷の中だけはフードを脱ぐようにして貰っている。理由は綺麗な目に綺麗な顔が隠れて勿体無いと思ったからだ。それに、ランウォーカー家には、呪いなんて気にする人がいなかったのもひとつの理由だ。


 うちは土地の所為もあって実力があれば誰でも来い! って感じだし。マルコだけは気にしていたがジークが黙らせていた。


 俺がその事をマーリンさんに伝えると泣きだしてしまった時は焦ってしまったが。そのときのジークのニヤニヤ顔を、何度殴ろうかと思ったことは内緒だ。


「レイ君? どうしたの?」


 おっと、考え事をしていたらマーリンさんを心配させてしまった。


「いや、何でもないですよ。行きましょうか」


「ええ」


 マーリンさんは屋敷にいる間は俺が寝込んでいた事もあり、俺の身の回りの世話を色々としてくれる。その事でクロナが対抗心を燃やしているのを見ると可愛いと思ったりもする。


 ……ただ、体が動けない時に、お風呂に入れないから体を拭いてもらっていたのだが、その仕事を2人で取り合うのは止めて欲しかった。マーリンさんも顔を真っ赤にしてクロナと取り合っていたからな。最終的にはクロエが拭くことになったが。


「今日はみんなが帰る日よね」


「ええ」


「寂しくないの?」


「それは寂しいですけど、俺が決めた事ですし」


「そう。あのね。レイ君に今後の事を話しておきたいの」


「おお! どうするか決まったんですね!」


「ええ。私もランウォーカー辺境伯領に付いて行こうと思うの」


「え? そうなんですか?」


「今後どうするか考えていた時に、辺境伯から領地に来ないか誘われてね。そこでランウォーカー家専属の魔法師って事で雇われる事になったの。仕事としてはランウォーカー家の魔法師団の育成にフィーちゃんの魔法の指導ね。向こうだと私の事を、王宮の魔法師団長だと知っている人もいないし」


 なるほど。確かにこのまま王都にいるよりかは良いだろう。


「それは寂しくなりますね」


「ふふ、そう思ってくれてありがとう」


 2人で話しながら食堂へ向かうと


「おはよう、レイ」


「あら、おはよう、レイ」


 すでにみんなが集まっていた。


「おはようございます、父上、母上、エリザ母上。マルコ兄上、ウォント兄上。おはよう、フィーリア、クロエ、クロナ」


「おはようございます、レイ様」


「「……」」


 フィーリアとクロナが明らかに落ち込んでいるな。これから当分会えなくなるから仕方がないか。


「父上、今日はすぐに?」


「ああ、食事が終わったら直ぐに経とうと思う。1ヶ月近く領地を空けてしまったからな。エイリーンたちに申し訳ない」


 そんな事を話しながらも、食事が終わりいよいよお別れの時だ。


「エリザ。また屋敷を頼むな。何時でも領地に来て良いからな」


「そうね。子供たちも手が掛からなくなってきたしそろそろ行っても良いかもね」


 そうしてキスをする2人。横ではエリスが呪詛を吐いている。


「マルコお前次に会った時に痩せてなかったらわかっているな?」


「は、はい、父上!」


「ウォント、監視を頼む。お菓子ばかり食べていたら水魔法で攻撃しても良いからな」


「わかりました、父上。お任せ下さい」


「そして、レイ」


「はい、父上」


「これからお前にいろいろな事が起きるだろう。だけど何があろうと俺たち家族は絶対に助けるからな。1人で抱え込まず相談してくれ。時間はかかるが何かあれば直ぐに駆けつける。まあ、お前には婚約者がいるから大丈夫か」


 そう言い笑うジーク。


 ……最初は良い事を言っていたのに、この親父は。


「今度会った時は不意打ちじゃなくて実力でその顔を殴ってやりますよ」


 俺はニヤリとした顔で言ってやった。


「言ったなこの野郎。まあ、楽しみにしているよ」


 そして拳同士を合わせる俺とジーク。


「レイ。あまり言っても聞かないから諦めた部分もあるけど無理だけはしないでね。あなたは私の可愛い息子なんだから」


 そう言って抱き締めてくれるエリス。


「善処します、母上。母上もお体はお気をつけて」


 そして


「フィーリアもクロナもそんなに泣くなよ。これでもう会えないわけじゃないんだから」


「で、でもぉ、うぇぇぇん!」


「レイしゃま〜!」


 そして抱き付いてくる2人。


「ほら、2人の笑顔を見せてくれよ、な?」


「は、はい!」


「わ、わかりました!」


 そうして微笑んでくれるフィーリアとクロナ。うん、可愛い。


「やっぱり2人は笑顔が可愛いよ」


「お兄しゃま〜!」


「レイしゃま〜!」


 よしよし。頭を撫でてあげる。


「クロエも頼んだよ」


「はい、お任せ下さい、レイ様」


 そう言いお辞儀をするクロエ。


 最後に


「マーリンさんも領地で頑張って下さいね」


「ええ、私もレイ君と並べるように強くなってくるから」


「はい、楽しみにしています!」


 そしてこの時がやってきた。


「さあ、馬車が来たから乗ろう」


 ジークから順番に乗っていく。


「じゃあ、レイ。元気で頑張れよ!」


「無理だけはしちゃダメだからね!」


「お兄しゃま〜〜〜〜! うぇぇぇん!」


「レイしゃま〜〜〜〜! うぇぇぇん!」


 こうして俺は家族と別れた。


 俺も次会うまでに成長しておかないとな。

取り敢えず幼年期?少年期?はこれで終了です!

今日か明日に登場人物表を作って、幾つかの閑話を入れたら学園にいきたいと思います!

一気に年齢が飛びますが、ご容赦下さい!


評価等よろしくお願いします!

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[一言] 1.「今のところは屋敷な滞在する予定だ。」 →「今のところは屋敷に滞在する予定だ。」 2.「体が動けない時に」→「体が動かない時に」
[一言] 「今のところは屋敷な滞在する予定だ。」 →「今のところは屋敷に滞在する予定だ。」
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