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37.誕生会開催……そして

 俺たちは始まるのを待っていると


「アレクシア様、レイ君」


 ヘレンさんがやってきた。


「あら、ヘレン。宰相と一緒に挨拶の方は良いの?」


「良いんですよ。どうせ息子は如何だとか、融資が如何だとかしか言われませんし、全部お父様に任せてきちゃいました。お父様も良いと言って下さいましたし。頑張れとも……」


 最後の方は聞こえなかったが、結婚の話とかは参加しなくて良いのかな?


「そ、それで、レイ君」


「なんですか、ヘレンさん?」


「わ、私もご家族の方にご挨拶をしたいのですが」


「ああ、わかりました。こちらです」


 俺はヘレンさんを案内する。横でアレクシアがニヤニヤしているのが気になったが……


「父上、母上。今よろしいでしょうか?」


 ちょうど他の貴族たちの挨拶が途切れたので、話しかける。


「おお、如何したレイ? 良い女の子でも見つけたか?」


 アレクシアの前でなに言っちゃってんの? ほらアレクシアの目が細まっていくじゃないか!


「ジークなに言っているのよ。アレクシア殿下の前で。それでどうしたの?」


「あ、はい。父上はご存知でしょうが、母上に挨拶したいという方がいまして、こちらはこの国の宰相のご息女になります、ヘレンディーネ・ラルグルスさんです。俺が王都に滞在中に勉強を教えて貰えるようになった方です」


「初めまして。ヘレンディーネ・ラルグルスと申します。微力ながらレイ君のお力になれるよう頑張ります」


「ご丁寧にありがとうございます。私の名前はエリスレット・ランウォーカーです。レイは偶にぼーっとして聞いていない時があるけど、覚えるのが早いから教えるのも楽しいと思うからよろしく頼むわね。多分あなたもその中の1人なんだろうけど」


 エリスがそう言うとヘレンさんは顔を真っ赤にした。なんだその中の1人って? アレクシアはクスクスと笑っているし。よく分からん。


 そんな事を考えていたら


「皆の者待たせてすまなかった。これより主役に登場してもらう。では入って参れ、マリーナ!」


 王様がそういうとマリーナ王女が入ってくる。


「皆様! 本日は私の誕生会に出席して頂いて有難うございます!」


 マリーナ王女の挨拶が終わり誕生会が開催される。貴族の皆は爵位順に王様とマリーナ王女に挨拶をしていく。そういえば


「アレクシアはこんな所に居て良いのか? あの挨拶に参加しなくて」


 そう挨拶の場には第1王子のアルバート王子に第2王子のアレックス王子。それに王妃たちもそれぞれ挨拶をしている。それなのにアレクシアは俺の側にいる。


「お父様が今から見せ付けておきなさいだって。フェリスも獣王様にそう言われているからここに居るのよ」


「いや、アレクシアは兎も角フェリス王女は別に良いだろ?」


「何でよ?」


「いや、何でよって」


 俺はフィーリアと仲良くデザートを食べるフェリス王女を見る。美味しいのか尻尾がパタパタと振られている。


「獣王様に無理やり言われているんだろ。そんなの止めさせてくるよ」


 俺はそう言いフェリス王女の元へ向かおうとすると、アレクシアに手を捕まる。


「アレクシア?」


「レイは鈍感ねぇ。ヘレンの事も気付いていないし」


 何を言っているんだ?


 そんな時に


「レイ。そろそろマリーナ王女の元へ挨拶に行くぞ。ほらフィーリア。口の周りにクリームが付いているぞ。エリスに見つかったら怒られるぞ〜」


 そう言いながらフィーリアの口周りを拭いてあげるジーク。もうそんな順番か。


「アレクシアはどうする?」


「勿論行くわよ。フェリスも行くわよ! ヘレンはどうする?」


「わかりました!」


「ひゃあ! そ、それでは私も……」


 何故だ? よくわからないまま王様の元へ向かう俺たち。王様は俺たちの事に気づくとニヤニヤするし、何故か獣王までこっちを向いてニヤニヤしている。何なんだ一体。


「陛下。挨拶に参りました。マリーナ王女。誕生日おめでとうございます」


「ありがとう辺境伯。こちらもおめでとうと言っておいた方が良いかしらね?」


 そして俺たちを見るマリーナ王女。


「では発表しようか。辺境伯よ」


「わかりました。陛下」


 あ、そう言えば会の中盤で発表するって。もうそんな時間か! 緊張してきた。


 そして王様が言おうとした瞬間


「陛下! 失礼致します!」


 と、突然ドアが開き血を流した兵士が入ってくる。


「一体何事だ! 今は会の途中だぞ!」


 そこにゲイン近衛団長が対応する。


「申し訳ございません、近衛団長。先程軍本部の地下牢より犯罪者たちが脱獄。脱走数は100名ほどでその内の20名近くが例の魔剣を持っています。今軍団長たちが応戦していますが、中に最下層にいた切り裂き魔と吸血鬼も脱走していましてほとんどの軍がそちらに対応しております」


 先ほどまで盛り上がっていた会場が沈黙してしまった。


「一体なぜそのような事が起きるのだ!」


「な、何者かが地下牢に侵入しヘンドリクス元騎士団長に魔剣を渡した模様。しかも地下牢の守衛の中にはヘンドリクスの部下もいたらしく脱走の手助けをした様で……」


 話を聞いていくうちに皆現実味を帯びてきたのか、慌て始めた。


「陛下! 如何されるのです? 早く安全な場所へ行きましょう!」


「そうですとも! 軍が出ているならその内に避難を!」


 その瞬間


 ズドォーン!


 何かが壁を壊した様だ。


「キャアアアアア!」


「兵士たちよ。直ちに防衛体制に変更! 会場にいる皆さんをお守りするのだ!」


 そうだ。会場には近衛騎士団がいる。ゲイン近衛団長の指示でそれぞれ動く兵士たち。


 するとまた兵士が入ってきた。


「陛下、ご報告です。犯罪者の大半は確保又は打ち取る事で押さえ込みましたが、魔剣持ちが依然暴れている状況。今王宮前でマーリン魔法師団長含む魔法師団が防御壁で防いでいます」


「その魔剣持ちは何人程なのだ?」


「20人程度でございます」


 あの魔剣持ちが20人近くか。学生が使うだけであれ程の力を発揮したのだ。それが大人、鍛えられているであろう犯罪者が使うとなるとかなり強いのではないか?


「ゲイン近衛団長よ。直ちに会場の皆を地下区画に避難させるのだ。そこなら中々見つからないだろう。儂は中心へ行き上級魔法障壁を発動させる。これで侵入は防げるだろう」


「しかしそれでは陛下の護衛が!」


「こちらは大丈夫だ。辺境伯よ、ついてきてもらえるか?」


「勿論ですとも、陛下」


 王様はジークを指名する。


「わかりました陛下。ジーク、陛下を頼んだぞ」


「ああ、任せておけ」


 その後はそれぞれに分かれて移動する。俺たちも地下区画に移動する。移動し始めて数分ほど。やはり人数が多いため速度が遅いな。


 ゲイン近衛団長の近くにマリーナ王女たち王族と、獣王たちがいる。あの側なら安全だろう。


 俺の近くにはアレクシアと何故かフェリス王女にヘレンさん。そしてエリスにフィーリア、クロナにクロエだ。


「アレクシアたちはあっちの方が良いんじゃないのか?」


「そんなのどこにいても一緒よ。それより何かあったときのためにっと」


 ビリビリ!


 うお! いきなりドレスのスカートを破り始めた。綺麗な足がって、そんな簡単に破らなくても


「これで武器も出して」


 おお! アイテムボックスか! 空間魔法が付与された魔道具で数が少ない為高いんだよな。ランウォーカー家もジークしか持っていないし。ジークの腰につけるポーチ型だったけどアレクシアのはリング型みたいだ。


「そういえば、アレクシアの剣って」


「これ? そうよ、これも魔剣よ。ニ対剣ツインベル。二刀流スキルを持っている人にしか使えないって制限があるの。その代わり使えるとかなりの能力を発揮するわ」


 へえー。魔剣って色々な能力があるんだな。


「王宮の武器庫にも魔槍とかあるからレイも見てみる? 何か良いものがあるかもよ」


 それは良さそうだが、良いのかそれ?


 廊下を進んでいくと、


 ドガァーン! ドガァーン!


 と音がする。近いな。この音がする度に移動が止まる。貴族の子息の女の子たちは泣き出してしまい、男の子たちは強がってはいるが足が震えている。それも仕方がないか。そんなことを考えていると


 ドガァーン!!


 なっ! 近くの壁が壊された!


「ヒッヒッヒ! 予想通りだぜ! 王宮に何かあれば貴族たちは避難させる。その時使う道はこの道しかないからなぁ!」


 壁から入ってきたのはヘンドリクスと5人ほど魔剣を持った兵士だ。


「ヘンドリクス貴様!」


「おっと、動くなよゲイン。俺が貴族たちを切っても良いのか?」


 そう言われると止まるしかないゲイン近衛団長。


 そして近くにいた貴族の女の子に斬りかかろうとするヘンドリクス。危ない! 俺が向かおうとした瞬間、俺の横を通り抜ける白い人影。


 それは


「やぁ!」


 フェリス王女だった。


 ヘンドリクス目掛けてフェリス王女は殴りかかる。


「なぁ! このやろう!」


 しかし、ヘンドリクスは剣でフェリスの拳を防ぐ。そして


「寝てやがれ!」


 フェリス王女のお腹を思いっきり蹴る。


「がはぁ! あ……」


 そのまま気を失ってしまった。


「貴様! フェリスを!」


 それを見ていた獣王がヘンドリクスに向かおうとするが


「おっと、動くなよ獣王様よ。この王女の首が飛んでもいいのか?」


 フェリス王女の首元に剣を当てるヘンドリクス。


 その間にゲイン近衛団長が隊列を変える事が出来たが人質をとられた。


「俺の目的はただ一つランウォーカー家のクソガキが死ぬことだ! しかもすぐに死ぬのではなく、苦しんで死ぬ姿が見たいんでな!」


 やっぱり俺が狙いか。よっぽど恨んでいるらしい。


「俺に用があるんですか、ヘンドリクス元団長?」


「忌々しいガキだぜ。おい! 王女様、起きやがれ!」


 そう言い水魔法をフェリス王女の顔にかける。


「うっ! な、何? 痛!」


 目が覚めた瞬間お腹を抑えるフェリス王女。


「王女様に見てもらいながら苦しめクソガキ。まずはこの剣で利き腕を切ってもらおうか!」


 そしてら俺の足下に剣を投げつける。それを聞いたフェリス王女が騒ぎ出す。


「だ、ダメよ! レイ! そんな事しちゃ!」


 確か腕さえ残っていれば、レベルの高い水魔法が使える魔法師がいれば治せるってエリスから聞いたな。


 俺は剣を拾う。


「だ、ダメ! 絶対ダメ! お願いだから!」


 泣き出してしまうフェリス王女。


「大丈夫ですよ、フェリス王女」


 俺はフェリス王女に微笑む。そして


「はぁああ!」


 ズバッ! 俺の右腕は飛んだ。


「ぐぅぅぅぅう!」


 余りの痛さに剣を落としてしまう。アレクシアやエリスが叫んでいるが痛過ぎて聞こえない。家族の方を見るとフィーリアとクロナが泣き叫んでいる。


 ははっ、気持ちの悪いのを見せてしまったな。


「レイッ! 嘘! そんな! 離せ! 行かないと! 早くレイの血を止めないと!」


「ちっ! うるさい王女様だ。別のやつに変えるか」


 そう言い剣を振りかぶるヘンドリクス。流石にそれはやらせない。


 俺はいざという時の為に、ヒカリンに毎日少しずつ魔力を渡していたのを今使う。


「ヒカリンいくぞ! カオスボルテックス身体付与三重!」


「了解なの!」


 そして俺は剣を拾いすぐさまヘンドリクスの側まで移動する。


「なっ!」


 そしてフェリスを掴んでいる左手を


「はぁぁぁあ!」


 切る!


「ぎゃああああ! 左手が! 俺の左手がぁ!」


 そしてそこにちょうど


「良くやったね、坊や」


 この国最強がやってきた。

よろしくお願いします!

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