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36.誕生会

 俺とフェリス王女はすぐに部屋に戻った。

 部屋に戻ると王様たちはおらずにアレクシアだけが待っていてくれた。


「やっと戻ってきたわね、レイ、フェリス」


「うん、何とか」


「ごめんなさい、アレクシアお姉様」


「いいのよ。それでねフェリス。あなたに謝らないといけないわね」


「何のこと?」


「あなたとの約束を忘れていたことよ」


 そう言い立ち上がるアレクシア。


「私が約束を忘れていたばかりにこんなことになってごめんなさい! その上で私の答えを言うわ。私はレイが好き。私の思いでレイと一緒になりたいと思っているの。あなたとの約束を守れなくてごめん」


 頭を下げるアレクシア。俺はフェリスの方を見ると微笑みながら涙を流していた。


「ううん、いいの。私の方こそごめんなさい。1人で勝手に突っ走ってお姉様にもレイにも迷惑をかけた。本当にごめんなさい!」


 そしてフェリスも頭を下げる。数十秒ほどするとどちらからとも無く笑い出した。


「こんな私を許してくれる?」


「もちろん! 私の方こそ許してくれますか? お姉様」


「もちろんよ!」


 そして抱き合う2人。……不謹慎だけどなんかエロい。アレクシアとフェリス王女の身長がアレクシアの方が頭ひとつ分高くて、丁度フェリス王女の顔がアレクシアのお胸様に埋まる感じだ。


 数十秒ほど抱き合っていると、あっ! フェリス王女がタップし始めた。その気持ちはわかるぞ。俺も何度か味わったからな。


「プハッ! もうお姉様ったら! そんなに押さえつけられたら苦しいわよ!」


「ふふふ、ゴメンねフェリス。あまりにも可愛いからつい」


 そう言い笑うアレクシア。やっぱり仲良くないとね。


「それじゃあ、会場まで行こう。もうそろそろ始まってしまう」


「やべっ! 俺だけ場違いじゃないか。早く行かないと!」


 俺は急いで部屋を出ようとすると


「何言っているのよ、レイ? あなたは私たちと一緒に行くのよ」


 何言っているんだ、アレクシアは?


「な、なんで?」


「さっきフェリスを探しに行ったでしょ。もし間に合わなかったら結局はフェリスと2人で参加することになっていたんだから私と行ってもいっしょでしょう、ってお父様が」


 何を言っているんだ。


「そ、それはちょっと……」


「私と一緒に行くのは嫌?」


 そんな顔をしないでくれ……


「わかった。一緒に行こう。マリーナ王女よりは早く行かないと行けないし」


「そうね。主役より後に行くなんて最悪だものね。フェリスも行きましょ」


「わかったわ。お姉様。さあ、行きましょう、レイ」


 フェリス王女が俺の名前を呼ぶと、それにアレクシアが反応した。


「ふぅ〜ん。レイねぇ〜」


 物凄くニヤニヤしているぞ。どうしたんだ?


「ど、どうしたのよお姉様」


「いや〜、べっつに〜」


 そう言い部屋を出るアレクシア。なんだ一体?


「ま、まあ、行きましょ」


「ああ」


 俺たちは会場へと向かった。

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜???side〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「防御壁展開! 奴らを外に出すな!」


「くそ! 何であいつら武器なんか持ってんだよ! 魔法も封じていたのにどうやって!」


「グダグダ言っている暇があればさっさと防御壁を張りやがれ! ヘンドリクス団長め! 脱獄したと思えば最下層の犯罪者どもを脱獄させるなんて! しかもあんなものまで渡して!」


「軍団長たちがくるまでなんとしてでも持ち……グヘェッ!」


「ヤバイぞ! 突破される!」


 ズバァーン!


「ぐわぁぁぁ!」


「この武器いいなぁ! 人がスパスパと切れる! 久し振りの感覚にイッてしまいそうだぜ!」


「ふん。この変態が」


「ああん? おばあちゃんにはわからねえよなぁこの感覚は!」


「おばあちゃん言うでない! ワシは少し年のとっただけのピチピチの幼女じゃ!」


「血を吸いまくって殺し過ぎで捕まった吸血鬼がよく言うぜ」


「あれは吸ってもいい量が少な過ぎるのじゃ! まあ、魔力量の多いエルフなどは美味じゃったがな。あの魔法師団長だったか? あやつも中々の量じゃった。会うのが楽しみじゃ」


「量より質ってか?」


「そうなのじゃ! 高密度の魔力を持つものなら少し飲むだけでも満たされるのじゃ! ああ、そんな奴はおらんかのぉ」


「まあ、頑張って探せや。俺は俺を捕まえたやつを殺りにいくぜ」


「たしか剣聖じゃったか?」


「ああ、あのエルフ今度こそは切り刻んでやる。ああいう強気の女を切り刻むのが一番好きだ!」


「やっぱり変態じゃ」


「くそ! 切り裂き魔ゴーン・ウッズに吸血鬼ヴァレンティナ・ハイパーソンまで!」


「ぐわぁぁぁ!」


「ぎゃあああ!」


「ほれほれ! 踏ん張れよ! 兵士ども!」


「はあ、早く上等な血が飲みたいのう。兵士どもじゃあ今まで飢えていた分が満たされぬ」


「くそ! 救援はまだか!」


「す、吸わないく……れ……」


「まずいのう……」


「お! もう直ぐ上に上がる階段だぜ!」


「おお! ようやくじゃのう。それで後ろについてくる囚人どもはどうするのじゃ? さっきから何もせんのじゃが?」


「俺たちがやり過ぎてする事がないのさ。好きにさせればいいさ! さあ! 久し振りのシャバだ! 楽しもうぜ!」

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜レイside〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 俺たちが会場に入るとみんなが一斉に見てくる。


 うぅ、予想通りになったな。貴族の人たちは知っているのかこそこそと話すだけだが、子息たちはジロジロと見てくる。気まずい……


 中を進んでいくと


「あっ! お兄様!」


 とフィーリアが俺を呼ぶ。あっ、エリスに怒られている。まあ、みんなの前で叫んじゃダメだよな。隣にはジークがいて何歩が後ろにはエリス付き、フィーリア付きとしてクロエとクロナがいる。すると


「ああ!」


「おわっ!」


「な、何よフェリス。急に大きな声を出して」


「あ、ごめんなさいお姉様。だってあのネコ耳の少女、レイからする匂いと同じ匂いがするんだもん!」


「それは本当かしら、フェリス?」


「うん!」


 ……やっぱりわかるんだな。そう思いながら見てるとアレクシアがみんなの元へ向かう。


「辺境伯、レイを連れてきましたわ」


「これはお手数おかけいたしまして申し訳ございません、アレクシア殿下」


「いいのですよ、これから私の義理の父になるのですから遠慮なく仰ってください。それからエリス夫人。初めましてナノール王国第1王女のアレクシア・ナノールです。よろしくお願いしますわ」


「こちらこそよろしくお願いしますね、アレクシア殿下」


 ふふふふふふ、と笑い合う2人。なんか怖いぞ。


「は、初めましてです! レイお兄様の妹のフィーリア・ランウォーカーともうちましゅ! あっ! うにゅう〜」


 緊張し過ぎて噛んじゃったな。それを見ていたアレクシアは


「か……」


 か?


「可愛い〜〜〜〜! レイなんでもっと早く言ってくれなかったのよ! こんな可愛い妹がいるなんて!」


 あれ? あっ、そういえば家族については話してなかったな。そこにフェリスが


「お姉様、目的が変わっていますよ」


「あっ、そ、そうねごめんなさいねフィーリア。あとでお話ししましょう」


 そう微笑むアレクシア。


「は、はいです!」


 うん、いい笑顔。そしてターゲットの元へ向かうアレクシア、と何故かフェリス。


「え? え? え?」


 困惑するクロナ。そりゃあビックリするよな。まさか侍女の自分に王女がやって来るなんて。しかも2人。


「この子がそうなのねフェリス」


「はい! この子がそうです! アレクシアお姉様!」


 やばい、クロナが泣きそうだ。俺も行こう。


「アレクシアちょっ……」


「あなたがレイに匂いをつけた子ね?」


「は、はぃ……」


「あなたはレイとどうなりたいの? 侍女として支えたいのか、女として支えたいのか。私は欲張りだけど女としても戦士としてもレイを支えたい。いいえ、支えるの。あなたはどうするの?」


「わ、私は……」


 クロナが言うのを待つアレクシア。


「レイ様を1人の女としても侍女としても支えていきたいです! まだ女としても支えるとかわからないこともありますが、レイ様を思う気持ちは負けません!」


 そうはっきりと言うクロナ。……そんな風に思っていてくれたなんて。それを聞いたアレクシアは


「そう、わかったわ。それじゃあ一緒にレイを支えましょう。ええっと」


「あっ! 私の名前はクロナです!」


「そう、クロナ。これからもよろしくね!」


「は、はい!」


 おお! クロナがアレクシアに認められた! これは俺も心を決めなければな。そこに


「レイモンド陛下、獣王陛下のおな〜り〜!」


 王様が入ってきた。隣には獣王も一緒だ。


「みんな待たせてすまなかったな。もう直ぐ主役が入ってくるからもう少し待っていてくれ」


 ようやく誕生会が始まるか。

よろしくお願いします!

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