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2巻発売記念 不要な仮面

「うぅんー! 今日もいい天気だなぁ!!」


 俺は庭で体を思いっきり伸ばす。最近はアレクシアやヘレンの手伝いで書類仕事が多く、座りっぱなしだったため、体のあちこちが固まっているな。


 思いっきり体を伸ばすとパキパキと骨がなる。最近は朝に少し体を動かすだけだったから、今日は久しぶりに体を思いっきり動かそうかな? そんな事を考えていたらどこからかガシャンッ! と、何かが落ちる音が聞こえてきて、その後に泣き声が聞こえて来た。


 音のしたのは城の中からで、泣き声は子供の、少女の声のため、娘の誰かだろう。その前に何かを落とす音が聞こえたのが気になる。怪我をしてなかったらいいが。


 音のした場所には俺が1番近かったようで、音の元凶の部屋には俺が1番に辿り着いた。泣き声がする部屋を覗いてみるとそこには


「うぇっ……ぐじゅっ……ちゅ、ちゅかないよぉ……」


 母親譲りの光に当たると輝く綺麗な金髪の髪を短く切り揃えている3歳の少女。俺と聖女と呼ばれた妻、キャロラインとの間に生まれた長女、キリカが涙を流しながら何かを必死にくっつけようとしていた。


「どうしたんだ、キリカ?」


 俺がなるべく優しい声で尋ねると、ビクッと震えてリーチェは固まってしまう。そして、ゆっくりと俺の方へと振り向くと、くりっとした綺麗な金色の目に涙が溜まっていく。


 そのまま泣いてしまうかな? と思ったが、何とか堪えてから目に溜まった涙を手で拭い、持っていた物を見せて来た。


「……おとしゃま、ごめんしゃい。おかしゃまのおとしたの」


 キリカが手に持っていた物は、キャロが女神の加護を貰ってから付けていた仮面だった。丁度真ん中の部分でパキッと割れていた。


 しかし、キャロの仮面は棚の上に置いていたはず。キリカの身長では絶対に届かないのだけど。椅子を使ったとしてまだ。


「他には誰もおらずに1人で取ったのか?」


「……フェンにしゃまといた」


 フェンか。俺とフェリスとの間に生まれた今年で4歳の男の子で、かなりの悪戯好きだ。確かに悪戯っ子のあいつならやりかねないな。


 あいつなら椅子に乗れば届くだろうし。まあ、落として壊してしまった事については仕方がないが、キリカに押し付けて逃げたのは許せないな。後でとっ捕まえて叱るか。


「……まあ、壊れてしまったものは仕方ない。お父さんと一緒にお母さんに謝りに行くか」


「あい」


 俺がそう提案すると、キリカは頷いて手を伸ばしてくる。俺は笑いながらキリカを抱きかかえてあげる。同時にアイテムリングからハンカチを取り出して、キリカの涙や鼻水を拭ってあげる。


 この時間帯はいつも教会にいるだろうから、そこへと向かおう。キリカを抱いたまま部屋を出ると、音を聞きつけた侍女と兵士が立っていた。


 侍女には破片が散らばっているかもしれないため、掃除をお願いして、兵士にはフェンを捕まえるように指示を出す。


 兵士は少しやりづらそうな表情を浮かべていたけど、俺の名前を出してフェリスを頼ってもいい旨を伝えると、行ってくれた。


 俺はキリカを抱いたまま城を出る。当然だが城を歩いていると兵士や侍女たちとすれ違い、皆が俺に頭を下げてくる。キリカはそれを気にした様子もなく、笑顔で手を振っており、兵士や侍女たちの顔がにやけていた。


 俺の子供たちはみんな可愛いからなぁ。にやけるのもわかる。特に女の子は可愛い。男親だからかもしれないが、女の子たちに甘えられるとついつい甘やかしてしまう。そして、やり過ぎて妻たちに怒られるのだ。わかっていてもつい。


「これ食べるか?」


「うん! たべりゅ!」


 キリカにアイテムリングから取り出して渡したのは、俺が作った飴だ。木の棒にウサギの形の飴が付いている。それをキリカは嬉しそうに舐める。うん、やはりこの笑顔のためなら幾つでも作れるな。まあ、それが怒られる原因の1つなのだが。


 嬉しそうに飴を舐めるキリカを抱えながら街の中を歩く。街の人たちも俺やキリカの事を知っているために、色々と声をかけてくれる。その人たちに飴を舐めながら笑顔を振りまくキリカ。


 ただ、この笑顔を見て下卑た笑みを浮かべている奴らもいる。いわゆるロリコン共だ。そいつらは、可愛いキリカを見てフラフラと近寄ってくるが、キリカの視線に入らないところで雷を放つ。絶対にキリカには近づけさせん。


 後ろで男たちの倒れることがするが、気にせずに進む。キリカも飴に気を取られて気付いていないし。


 そんな問題もあったが、無事にキャロのいる教会へと辿り着いた俺とキリカ。教会の前では2人のシスターが箒を持って掃除をしていた。


 その2人に話しかけると、俺を見た2人は慌てて教会へと入っていく。そんな慌てなくてもいいのにな。俺もその後に続いて教会へと入る。


 教会の中にはアステルの像があり、教会に来た人々はそのアステル像に頭を下げて祈っていた。その光景を眺めていると


「あら、どうしたの、レイ、キリカ」


 さっきのシスターが呼んできてくれたのだろう。キャロが笑みを浮かべながら来てくれた。キリカもお母さんであるキャロを見て、手を伸ばす。俺はキリカをキャロに渡しながらここに来た理由と、割れた画面をアイテムリングから取り出した。


「どうやら、フェンとキリカが部屋に入って仮面を落としてしまったみたいでな。それを謝りに来たんだよ。な、キリカ」


「そうなの? 全く、棚には登っちゃダメって言ったでしょ? 怪我はなかった?」


「あいっ!」


 話を聞いたキャロはツンッとキリカのおでこをつついてから、どこにも怪我が無いかを確かめる。おでこをつつかれたキリカはその箇所をさすりながら元気良く返事をする。


 微笑み合う聖女と天使。まるで絵画のような綺麗な光景に、参拝に来ていた人たちは立ち止まってこちらを見ていた。中にはアステルにしていたようにおがむ人も。ふふっ、羨ましいだろ。彼女たちは俺の妻と娘なんだぞ!


 大きい声でそんな事を自慢したいが、怒られるのでやめておく。


「それで、仮面はどうする? やっぱり直すよな?」


 俺はもう一度割れた画面をキャロへと見せる。キャロは仮面を懐かしそうに眺めるが、少ししてから首を横に振った。


「いいわ。それはもう必要の無い物だもの。本当はあなたに出会ったあの日から不要になったものだけど、捨てるタイミングが無かったのよ。丁度良かった」


「おかしゃま、いらないの?」


「ええ、この仮面より、ずっと大切なものを手に入れることが出来たからね」


 そう言ってキリカの頭を優しく撫でるキャロ。まるで絵画のような光景だが、この光景が後日絵になって送られてくるとは思ってもいなかった。しかも、作者があのロリコンどもだったなんて。


 ……こればかりは褒めてやろう。

遅くなりましたが、12月13日に「転生して成長チートを手に入れたら、最凶スキルもついてきたのですが⁉︎学園生活始めました」が発売されました!!

この巻から魔族との戦いが本格化していき、新たなヒロインであるキャロやプリシアも出て来ます。

しかも、今回の発売に合わせて、1巻と2巻が電子書籍化!!

まだ、買っていない方もこの機会に購入していただけたら嬉しいです!!

2巻にはヒロインたちのポストカードが付いています!!

とても可愛いので是非購入してご覧ください!!!

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