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書籍化記念 最後の日

「お兄様〜、朝ですよ〜!」


 ちゅんちゅんと鳥の鳴き声がする気持ちの良い朝。ゆっくりと眠っていると、そんな声が響くと共に勢い良く開けられる扉。そして


「とうっ!」


「ぐうっ!?」


 勢い良く俺の上に乗って来る何か。腹に来た衝撃に呻きながらも目を開けるとそこには


「おはようございます、お兄様! 朝ですよ!」


 と、にこにこ笑顔のフィーリアが覗き込んできていた。うん、可愛い。いつもはクロナが起こしに来てくれるのだが、今日は珍しいな。


「おはよう、フィーリア。フィーリアが起こしに来るなんて珍しいな?」


「んふふっ! 今日は待ちに待ったお兄様とのお買い物の日ですからね! クロナもおめかしをしているのですよ! 勿論、私もです!」


 そういうフィーリアはベッドから降りると、どうですか!? とその場を回って、黄緑色の花柄ワンピースを見せて来るフィーリア。そういえばそういう約束をしていたな。


 俺が初めて王都に来てから、まあ、色々とあったせいで先延ばしになってしまって、結局フィーリアたちが帰る前日の日になってしまったが、フィーリアとクロナと買い物に行く約束をしていたんだ。


 ジークたちが帰る準備や貴族同士の挨拶などに忙しいのもあって、それなら残された俺たちで買い物に行こうという事になったのだ。


「朝ご飯はクロエが作って下さっているので、早く行きましょう!」


 フィーリアは早く買い物に行きたいのか、部屋の中をぱたぱたと駆け回る。こんな朝早くから開いてる店はないからもう少し落ち着いて欲しいのだが、まあ、楽しみにしてくれている事は嬉しいので、それを言わない。


 俺もフィーリアに促されるまま起きて、顔を洗いに行ってから皆が集まる部屋へと行く。部屋の中には姉上であるエアリスと真ん中の兄であるウォントに、クロエ、クロナ、フィーリアがいた。ジークたちはもう出たようで、マルコはいない。前にあんな事があったからここには来られないのだろう。


「おはようございます、レイ様。朝食のご用意が出来ております」


「おはよう、レイ。早くこっちに来てご飯を食べなさい。今日はフィーリアたちと買い物に行くのでしょ? レディを待たせちゃダメよ」


「おはようクロエ。いつもありがとうな。姉上もおはよう。そうならないようにフィーリアに起こされたから大丈夫だよ」


 俺は皆に挨拶しながら自分がいつも座る席に行く。席に座ると、クロナが準備をしてくれる。するとふわりと匂ってくる良い香り。


 いつも猫耳をもふもふしている時も良い匂いなのだが、今日はそれに合わさってフローラルな花の香りがする。香水でもつけているのだろうか?


 そして、ほんの少しだけだが、化粧がなされた顔。クロエがしたのだろうか、とても可愛い。そんなクロナをじっと見ていたからか、俺の視線に気が付いたクロナが、顔を赤らめながらニコッと微笑んでくれる。うん、可愛い。思わず頭を撫でてしまう。俺に頭を撫でられてあうあう言うクロナを撫で続けていると


「レイ、その辺にしておけ。これから遊びに行くのだろう? 早く食べて用意してあげろ」


 と、ウォントに怒られてしまった。そんなウォントは、今は朝食を食べ終えて、優雅に紅茶を飲みながら本を読んでいた。


 ジーク譲りの顔なのに、母親のエリザの知的な雰囲気もあり、侍女たちからは人気らしい。長男のマルコがまあ、あれだから余計に良く見えるのだろう。マルコのフォローもしているようだし。


 俺はウォントの言われた通り、早く朝食を食べてしまい、着替える。エアリスにも言われたが待たせたらダメだからな。


 支度を終えて玄関に向かうと、既にフィーリアとクロナが待っていた。今日は3人で買い物に行く。本当は誰かついて来てもらった方が良いのだが、ジークが俺がいるから大丈夫だろうと言うので、俺たち3人だけでの買い物となった。まあ、俺たちの見えないところで護衛はついて来ているのだろうけど。


 歩いて行っても良いのだが、絶対に途中でフィーリアとクロナが疲れてしまうので、馬車を用意してもらう。馬車があるのに無理して歩いて行く必要はないしな。俺1人ならともかく。


 馬車で商店街まで行ってからは歩いて散策。やはり、フィーリアもクロナも女の子だからなのか、服や装飾品系に目がないようで、そう言う店を見て回る。


 他には部屋に置く小物系が売っている店などにも入って見て回る。あまり多くはないがジークからお小遣いを渡されているので、それでフィーリアとクロナに1つずつ買ってあげる。


 クロナはしきりに恐縮していたが、俺が買ってあげたいとお願いすると、髪飾りを選んでいた。フィーリアには部屋で花を飾るための可愛らしい花瓶を。部屋に花を飾ると精霊たちが喜ぶそうだ。俺としては2人の嬉しそうに微笑む可愛らしい笑顔が見られただけで満足だ。


 それからも色々な店をぶらぶらすると、昼を少し過ぎた辺りから2人ともうつらうつらとし始めた。やっぱり、朝早くから起きていたから疲れてしまったんだな。それだけ、今日の買い物を楽しみにしてくれていたと言う事だろう。


 2人を連れて家に帰って来た俺はフィーリアたちをベッドに寝かせる。2人とも明日でしばらくのお別れになってしまうが、元気でいて欲しいものだ。


 ちなみに、朝からウォントが読んでいた本について尋ねてみると「転生少年の成長記」という小説らしい。新しく出たばかりの本を読んでいたそうだ。終わり次第、俺にも読まさせてくれるそうだ。楽しみだ。

少し遅れましたが、5月25日にこの作品の書籍が販売されました!

表紙にいるエアリスとアレクシアが可愛いのはもちろんのこと、挿絵にあるフィーリアとクロナが並ぶシーンもとても可愛いですので、良かったらお手に取って頂ければと思います!

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