大陸激突編 火竜のシマ
「……おお、これは何というか」
連れて行くメンバーを決めた翌日。俺はファーガス義兄上、ティグリス、匠を連れてドモンさんに教えられた場所にやって来た。そこは、神島とかと同じように、大陸から少し離れた島で、大きな火山がある島だった。そんな島に俺の転移でやって来たのだが
『おい、おんどれら、わしらのシマに何の用じゃ?』
と、竜たちに絡まれてしまった。目の前には鱗の赤い見るからに火竜と思われる竜にメンチを切られ、周りには大小様々な竜に囲まれている。火竜は見るからに古竜種で、周りの竜たちは上級竜ばかり。下級竜も混ざっているが、思ったより少ない。
俺は話に聞いていたので多いなー、程度にしか思わないが、ファーガス義兄上たちは竜たちの多さに驚いていた。まあ、ファーガス義兄上は嬉しそうに、ティグリスは戦争の時を思い出して、匠は顔を引きつっていたという違いはあるが。
「急にやって来て悪いな。少しここにいる火竜王に用があって来たんだ。案内してもらえないだろうか?」
目の前の火竜に俺たちの目的を伝えると、俺たちを威圧するように膨れ上がる竜たちの魔力。おおっ、やっぱりこれだけの竜が集まると降り注ぐ圧も違うな。
『おんどれらぁ! 頭のタマ狙うとはええ度胸しとうやないかぁ! あぁん!? じゃが、わしら倒さんで頭のタマ狙えると思うなよ!』
そして、眼前で咆哮をあげる火竜。同時に火竜の体から炎が迸った。離れていても熱気だけで焼けそうなほどの熱さが、俺たちを襲う。
「光天ノ外套」
「部分獣化!」
「『全てを弾きし黄金の鎧』」
「炎帝剣アモン、水帝剣ディーネ発動!」
そして、周りの竜たちが手加減無しのブレスを一斉に放ってきたため、俺たちはそれぞれ散開する。俺たちがいた場所は様々なブレスがぶつかり合い爆発した。いきなり過ぎるだろ、おい。
『てめぇはわしが相手じゃ!』
そして俺の目の前には、古竜の火竜が炎を纏った右前足を振り下ろして来た。他の皆が気になるが、そう簡単にやられる人は連れて来ていない。俺は目の前の火竜に集中しよう。
俺は振り下ろされる右前足に向けて、外套を伸ばしぶつけて、火竜の右前足を弾き返す。その間にアイテムリングからガラドルグを取り出し、火竜の懐に入る。そして、下から火竜の腹に目掛けてガラドルグの石突きを振り上げる。
全身鱗に覆われている竜種にこの程度の攻撃は普通なら効かないが、石突きをぶつける前に石突きの先端に溜めた魔力をぶつけた瞬間、体内に浸透するように爆発させる。
魔力が爆発した瞬間、火竜の体を突き抜け火竜はその衝撃に体をくの字に曲げ呻き声を上げる。しかし、その程度では少し怯ませただけで、直ぐに態勢を立て直した。だが、もうお前には何もさせない。
ギロっと睨み火球を背にいくつも出現させた火竜は、それらを俺に向かって放ってくる。それを俺は避けること無く外套を動かし全て弾く。
『ぐぅぅ、て、てめぇ!!』
まさか全ての火球を避けるならまだしも、真正面から弾かれるとは思っていなかったのだろう。悪いが、竜王たちの攻撃に比べればなんて事は無い。
そして、余裕な俺を見て火竜はブレスを放とうとしてくる。普通なら慌てて避けようとするが、俺は放たせる事すらさせない。
ブレスの準備をする火竜に向かって外套を伸ばす。火竜は伸びて来た外套を見て、ブレスを放つ準備をしながら翼を動かし距離を取ろうとするが、外套の方が速い。
外套は2つに分かれて伸び、片方は火竜の胴体、もう片方は火竜の顔に巻き付き動かないようにする。火竜は巨体をジタバタと動かして逃れようとするが、しっかり拘束した外套を取り外す事が出来ない。
「おらっ!」
俺はそのまま外套を引き寄せ、魔力を纏わせた拳を火竜の顔へと叩きつける。殴った瞬間外套を解除し、殴られた火竜は殴られた衝撃に吹き飛び、俺たちが来た時から見えている火山の麓へと落ちていった。
吹き飛んでいった火竜の姿を見て周りの竜たちは少しは怯むかと思ったが、逆に火竜が吹き飛ばされた事に怒ったのか、咆哮を上げながら周りの竜たちが俺に向かって来た。ファーガス義兄上たちの元にいた竜たちもだ。
かなりの数が迫って来たな。負ける事は無いが、全員相手していたら時間がかかってしまう。どうしたものか。そう考えていると
「てめぇら、下がってろ」
と、島中に轟くような大声が響き渡る。思わず耳を塞いでしまうほどだ。俺たち竜たち皆が声のした方を見ると、そこには上半身裸の男が歩いて来た。
小麦色の肌に、真っ赤な赤髪。その中に一房だけ黒色が混ざった若い男が歩いて来たのだ。男の言葉に竜たちは左右に分かれて頭を下げる。
……って事は、こいつが今の火竜王か。
遂に明日「転生して成長チートを手に入れたら、最凶スキルもついたのですが!?」の1巻が発売になります!
様々なヒロインが出る中、特にフィーリアとクロナが可愛いので、良かったらお手に取って頂けたらと思います!




