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大陸激突編 本当の世界

 エクラに手を引かれる中、俺たちはアステルの元へと向かう。案内されたのは皆で食事を取る場所であり、家族皆で集まる事の出来る憩いの場であった。


 そこには帰って来ているアステルに公務の途中に抜け出して来たのかアレクシアとヘレン、フェリスにキャロ、それから師匠がいた。そこに俺とエアリスと香奈が入って行く。


「あっ、レイさん、ただいまです!」


「ああ、おかえりアステル。急に神域に呼ばれた時は驚いたけど、無事に帰って来てくれてよかった」


 部屋に入って来た俺たちを見て、椅子に座っていたアステルは立ち上がり俺に抱きついて来た。そんなアステルを抱き締めてあげると、えへへ〜と笑みを浮かべるアステル。Mっ気が無ければ可愛らしいのだがな。


「ったく、見せつけてくれるねぇ」


 そして、抱き合う俺たちを見て呆れ顔で師匠が見てくる。


「師匠もお久しぶりです。師匠もアステルに呼ばれたのですか?」


「ああ、ギルドでのんびりとしているところにライトがやって来てねぇ。本当、人使いの荒い神様だ」


 師匠の言葉に苦笑いをするアステル。師匠はアステルの正体をしている数少ない人物だ。アステルの正体を知っているのは俺の妻たちに、師匠、両親と竜王たちだろう。各国の王には話していない。


 話しても構わないといえば構わないのだが、あまり大ごとにはしたくないというのが、アステルの意思だったからな。取り敢えず、内だけに済ませていたのだ。竜王たちは神竜の事で知っているから、問題ないと思い話している。


「まあ、取り敢えず座ったらレイ。アステルとエアリスも」


 じゃれ合う俺たちを見て、席を進めるアレクシア。おっと、忙しい中来てくれているアレクシアたちに悪いな。俺たちは直ぐに空いている席に座る。エクラはまた竜へと変わり俺の頭の上に乗る。皆が座ったのを見たアステルは、1枚の紙を机の上に広げた。


 それは、俺たちが普段使っているような紙ではなく、魔法、それも神の魔法で作られたとんでもない紙だった。


「まず、私が神域に呼ばれた理由を話す前に、皆様には話しておかないといけない事があります。それはこの世界の事についてです」


 アステルはそんな事を言いながら広げた紙を見せてくる。その紙はよく見ると地図のようで、地図には7つの大陸が書かれていた。


「これは何の地図だい? 初めて見るが……」


「これは、この世界の地図です」


 初めて見る地図に皆が疑問に思っていると、アステルがそう言う。しかし、俺以外の皆は誰も信じれなさそうな表情を浮かべている。師匠ですらそうだ。


 ただ、俺は前世の記憶がある。そのため、海の向こう側には大陸がある事も、惑星が丸い事も知っている。まあ、この世界が丸いかどうかはわからないが、朝が来て夜になるのだから、自転公転はしているのだろう。


「この世界にはこの地図の通り、大陸が7つあります。皆様が習ったような今私たちがいる大陸だけの地図などは、嘘ではないのですが、間違いでもあります」


「それはどう言うことかしら?」


「どうして地図には私たちが住む大陸しかないのか。理由は簡単です。他の大陸に行く技術が無いからです。なので、昔からこの世界は私たちが住む大陸のみだと教えられているのです。

 理由としては、7つの大陸同士はかなりの距離離れており、その上、海にはとてつもない魔物が住み着いています。それらを乗り越えて海を渡れる船を作る技術をどの大陸も持っていないため、誰も知らないため、この状況が続いているのです」


 アステルの言葉に黙ってしまう皆。まあ、それは仕方ない。俺は前世での歴史の事があるから納得出来るが、他の皆は初めて聞いた驚きの事実ばかりに、追いついていけてないのだろう。


 前世でさえ、海に出るのは大冒険なのだ。それが、魔物なんて前世にはいなかった化け物がいるこの世界で、率先して海に出ようなんていう酔狂な人物はいないのだろう。


「……ふむ、わずかに信じ難い話だが、このような地図を見せられたら、信じないわけにはいかないね。それで、この7つの大陸の話をしたって事は、アステルが呼ばれた事に関係するんだね?」


「はい、関係します。私たちのいるこの世界には7柱の神が管理を任されています。数から分かるように、1柱1つの大陸を任されており、この大陸は勿論私になります。そして、今回神域に私たちを呼び出したのは、1番西にある大陸を管理するギーラです。

 彼が私たちを呼び出したのは……自分の大陸に住む者が他の大陸に住む人たちより優れている事を証明したいとの事でした」


「……それって、つまりどう言うことかしら?」


 今の話だけではよくわからなかったのだろう、エアリスがアステルに尋ねる。俺もいまいちわからない。一体何が目的でそんな事を言うのか。


「まあ、彼の暇潰しもあるのでしょうけど、彼は各大陸毎に優れた者をそれぞれ選び、戦わせようとしているのです。自分の管理する大陸が1番だと証明するために」


 ……はぁ、厄介な事を始めようとするもんだ。話の流れからして、神たちの中で、自分が管理の仕方に優れているから、それを証明するために大陸毎にチームを作って戦いましょうって事だろ? 


 良い言い方をすれば、神に選ばれた者たちによる聖戦だが、悪い言い方をすれば、神の暇潰しの遊びの駒って事だろ。ふざけてやがるぜ、そのギーラって奴。


「……何とか降りようとしたのですが、他の皆はよほど暇だったのでしょう、私以外賛同してしまい、私も……この大陸も参加する事になってしまいました」


 本当に申し訳なさそうな表情を浮かべて、頭を下げるアステル。そして


「皆様にバロンの事から続けて迷惑をかけていますが、どうか私に力を貸してもらえないでしょうか!?」


 と、アステルは言う。周りを困惑とした表情を浮かべているが……まあ、俺の答えは当然決まっている。


「勿論、任せろ」


 愛しの妻からの願いだ。必ず叶えてやるのが、旦那の仕事って者だろう。 

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