33.誕生会(そろそろ開催する……かも?)
誕生会のドレスを見せに来たマリーナ王女と、フェリス王女に会いに来たアレックス王子が部屋に入ってきても俺とフェリス王女は言い合っていた。
「俺の身長はまだ成長期が来ていないだけだ! チビじゃねえよ!」
「フン! そのまま伸びないかもしれないじゃない! それに将来は伸びても今はチビだもん! チビ!」
「またチビって! この泣き虫! 怒られてビイビイと泣いてたくせに!」
「なっ! あれはお父様が恐くて! って違う! な、泣いてないもん!」
「いーや、泣いてたね! やーい! やーい! 泣き虫〜!」
「グルルゥ〜! もうアッタマきた! 絶対にゆる……」
フェリス王女がそう言おうとした瞬間
「やかましいわ!」
ゴツン!
と物凄い音がした。獣王がフェリス王女に拳骨をした音だ。
「!!!!!!」
フェリス王女は声にならない叫びを上げながら蹲る。あれは痛そう……
すると
「お前もだ」
ゴツン!
「痛っ!」
と俺もジークに拳骨をされる。うわっ、拳に魔力を通してるよ。
「申し訳ございません、獣王陛下。このバカが」
そう言い俺の頭をバシバシ叩いてくる。ちょっ、さっきの拳骨のところを叩かないで!
「いや、こちらこそ申し訳ない。ようやく収まったのにうちのバカ娘がまた」
「まあ、獣王よ。今は身内しか居らぬ。それほど気にせんでも良い。喧嘩するほど仲が良いと言うしな」
「「誰がですか!」」
王様がそう言うので俺とフェリス王女は声を揃えて反論してしまった。……あっ。俺とフェリス王女は顔をあわせる。
「なんかフェリスが羨ましい……。私もレイと一緒にゴニョゴニョ……」
しかもここでアレクシアが入ってくる。これ以上ややこしくなるのはちょっと。
「ねぇ、お父様どういう状況これ?」
そこにさっきまで空気になっていたマリーナ王女が入ってくる。た、助かった〜。でも後ろについているアレックス王子が物凄い形相で睨んでくる。何でだ?
「おお、マリーナか。それにアレックスも。何ほんのちょっとした夫婦喧嘩だ」
「な、誰と誰がですか! 陛下!」
「そうですよ! 誰がこの男と!」
グルルゥ、と睨み合う俺たち。そんな俺たちを微笑ましそうに見てくる周り。アレクシアだけソワソワしているな。ごめんよ。
「父上! それは一体どう「邪魔よ、アレックスお兄様!」ぐはっ!」
話出そうとしたアレックス王子の脇腹にボディブローを入れるマリーナ王女。慣れた感じなのが何か恐い。
「お父様! 今日着るドレスです! どうですか?」
「おお、マリーナ。お前は天使みたいに可愛いなあ! 何を着ても似合うな!」
「ちょっ! お父様! 私はもう12歳よ! 可愛いなんて! ち、ちっとも嬉しくないんだから!」
そう言いながらニマナマするマリーナ王女。嬉しそうだ。んっ? さっきの王様の言葉どっかで聞いたぞ。……あっ! ジークがフィーリアに言ったことと同じだ。やっぱり親は同じ事を思うのかね。
「フェリスよ。どうしてそこまでレイ殿を嫌う? 先ほどの動きを見た通りレイ殿はかなり強い。お前の望む男だぞ?」
「それはそうですけど! 私は嫌です! だってこの男はアレクシアお姉様と婚約をしているのに、体からメス猫の匂いがするじゃないですか! この歳でもう浮気しているんですよ! 私は確かに強い男と結婚したいとは言いましたが、浮気するような男は嫌です!」
そう言い切るフェリス王女。メス猫の匂いって何だ?
「あの一体何の話でしょうか?」
「ん? ああ、お主についている匂いのことだ。獣人族に限らず動物の中には、好きな物や好きな相手に自分の匂いを擦りつけるという事をする者もいてな。お主の体からこれは猫族かな? 女の匂いがするのだ。
俺的には強い男に女が集まるのは当たり前だと思っているから全く気にはしていなかったのだが……。お主の親しい者の中に獣人族はいるか?」
俺の親しい者の中といえば
「俺の侍女をしてくれている猫族の女の子がいます」
「ならその子に身体を擦り付けられたりはしなかったか?」
身体を擦り付けられる? ……あっ! マルコの事件があった夜にされたアレか! あの行為にそんな理由があったなんて。それでクロエが次の日に指を立ててきたのか。
「覚えがあるようだな」
「はい」
そこに
「レイ? その子には会わしてくれるわよね?」
とアレクシアが入ってくる。目つきが恐いけど何だ? そういえばうちの家族にもまだ会っていなかったな。
「もちろん会わせるよ。俺の大事な(将来はわからないが今は家族として)子だからね」
「そうなの。レイの大事な(将来を約束しているような)子なのね。会うのが楽しみだわ!(絶対に負けないんだから!)」
◇◇◇
「ニャア!」
「きゃあ! 急にどうしたのです? クロナ?」
「何か大切な戦いをしないといけない気がします!」
「意味がわからないのです。お母様どういう事ですか?」
「それは女のカンってやつよ。フィーリアにも早くわかるといいわね?」
「はいです!」
◇◇◇
そんな事を話していると肩に腕を回される。誰だ?
「お前も苦労してるなぁ」
「ええっと、ファーガス王子?」
「おおう! よろしくな未来の義弟!」
「何を言っているのよ! お兄様!」
ファーガス王子がそんな事言うので、また怒り出すフェリス王女。
「なあ、俺たちも1週間ぐらい滞在するからその間に勝負しようぜ! さっきの動き見てやりたくなったぜ!」
とてもワクワクしている。尻尾の動きが半端ない。
「お、お時間が合えばよろしくお願いします」
「よっし! 親父! 俺が一番だからな!」
「仕方ないな。レイ殿。次は俺だからな」
え? なんか獣王まで参加する事になってるんだけど。なぜ?
「ふふん! レイは強いんだからね! 甘く見ないほうがいいわよ、ファーガス!」
なぜそこでドヤ顔をする。アレクシア?
「アレクシア姉が認めるほどか! 楽しくなってきた!」
いやいや、テンション上がりすぎでしょ。俺は萎えてきたぞ。
「本気で勝負だぞ! 義弟!」
「いや、まあ、はい。頑張ります」
避けては通れぬようだ。
するとそこに
「陛下失礼致します」
文官みたいな人が入ってくる。
「ああ、何だ?」
「あと1時間ほどでお時間になります。ご準備の方よろしくお願い致します」
「おお、もうそんな時間か。わかった」
もうそんな時間か。
「なら俺たちは会場へ行こう、レイ」
「そうですね」
「ああ、早々に来てもらってすまなかったな。誕生会の中盤くらいで2人の事を発表するだろうからその時は頼む」
「じゃあ、フェリスのこともその時に言うか」
「なっ!」
フェリス王女はまさに絶句って感じだな。尻尾もへたり込んでしまって。なんか可哀想になってきた。
「わ、私は認めないんだからぁ!」
そう言いながら部屋を出て行ってしまった。いいのかこれ?
「ほら、レイ。追いかけろ」
ジークがそんな事を言ってくる。
「え? 俺が行っても喧嘩になるだけで……」
「いいから、行ってこい!」
そう言い俺の背中を叩いてくる。痛いって!
「頼むわ、レイ」
アレクシアまで。
「わかったよ。行ってくる」
そして俺も部屋を出て行った。はあ、何で俺が……
よろしくお願いします!




