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後日談.新婚旅行?編 お礼

「うぉぉおおっ! 宴だぁぁ!」


「ありったけの酒を持ってこい! 三日三晩は飲むぞぉ!」


「食料もだ! あっという間に無くなっちまうから、街にいる全ての料理人を使え!」


 ジャパウォーネ王国の王都。街の中は、場所関係無くたくさんの人で溢れかえっていた。外壁部や中心部関係無く、そこにいる人々は皆が笑顔、もしくは涙を流しながら。


 影の神シェイドとの戦いから2日が経った。シェイドを倒したのは良いが、まだコクシが残っていないとも限らないので、1日使い俺とアステルが調査したが、もうどの大陸にも存在しないという結果になった。


 その結果、今、ジャパウォーネ王国の王都では祭が行われる事になった。ジャパウォーネだけで無く他の大陸の国でもだ。


 しかし、さっきの歓声は凄かった。アルベリーが国民に対して、コクシがいなくなった事を伝えた瞬間、大地が揺れるほどの歓声をあげるのだから。


 まあ、これからどうなるかわからない絶望から、先を考える事の出来る希望へと変わったのだから、喜ぶのも当たり前か。


「うわぁ〜、アレン、これ美味しいよ〜! ほら、あーん!」


「あーん……うん、美味しい!」


 エレネとアレンも楽しそうだ。2人はずっと屋敷に閉じ込めてしまったからな。帰ったら沢山遊んで上げないと。


 でも、ようやく明日帰れるな。昨日、力を取り戻したクリーナが明日返してくれる約束をしてくれたし。


「楽しんでいますか? レイ様」


 俺が1人で考えていると、アルベリーが俺の隣へとやって来た。隣にはこちらに来ていたのか、カレンディーナもいた。女王同士仲良くなったのかな?


 ちなみに、俺とアステルの合作で4大陸を繋ぐ転移魔法陣は作成済みだ。各国にある1つの魔法陣で、行きたいところを思い浮かべれば移動出来る仕組みになっている。


 その上、その魔法陣がある部屋には、権限を持つ代表が許可した人しか入れないようにしているので、侵入される心配も無い。これに関しては、俺たちが元の世界に戻った後は、クリーナが引き継いでくれるので、安心だ。


「ああ、楽しませてもらっているよ。俺たちの世界には無い料理ばかりだしな」


 似たようなやつはあるのだが、味が違っていたりして中々新鮮だ。しかも大陸によってまた味付けが違ったりして面白い。


「ふふ、それは良かったです。ここは唯一各大陸の食べ物が集まった会場となっております……明日には帰られるというレイ様たちをもてなしたくて、皆で話し合いそうしました」


 だから国それぞれの食べ物が並んでいるのか。それは有難いな。


「有難うな、アルベリー、カレンディーナ。そのおかげでみんな美味しそうに食べている。俺も勿論満足しているよ」


 俺の言葉にニコニコとする2人。2人ともコクシがいる時は鎧を着ていたが、今はドレスを着ている。2人ともかなり似合っている。そんな2人を見ていたら


「ふふ、あなたも色々と気に入ってくれたわね」


 と、後ろから声が聞こえてきた。それと同時に口を開けて驚いた表情を浮かべるアルベリーとカレンディーナ。


 どうしたのだろうかと、振り向いてみると、俺も驚いて喉に食べ物を詰まらせてしまった。胸を叩いていると、初めに正気に戻ったアルベリーが水を持ってきてくれたので、それを飲む。ふぅ、危なかった。


「全く何をしているのよ」


 そんな俺を見て呆れた声が聞こえてくる。それはこっちのセリフだよ。


「そっちこそ、なんでこんなところにいるんだよ、女神クリーナ」


 そう、俺たちに話しかけてきたのは、真っ黒なドレスを着た女神クリーナだったのだ。その隣には少し困った表情をするアステルが立っていた。


「何って、世界を救ってくれた恩人に会いに来たのよ」


「それなら、俺たちが昨日行っただろ? 何でわざわざ」


「こういうのは誠意を表さないと伝わらないものなのよ。今日1日だけ、アステルに力を借りてあなたにお礼を言いに来たのよ」


 そう言い頭を下げるクリーナ。


「あなたのおかげでこの世界は助かったわ。本当なら神である私がシェイドを止めないといけなかったのに、別の世界の住人であるあなたにお願いしてしまった。本当に有難う」


 そんなかしこまって頭を下げられると、照れてしまうな。


「頭を上げてくれクリーナ。初めは確かに驚いたけど、クリーナやアルベリーたちにも出会えて、他の世界の事を知る事も出来た。まあ、気にするなとは言わないが、俺もこの世界を救えて良かったよ」


 俺の言葉に頭を上げて微笑むクリーナ。そして両手を合わせて神力を流す。周りに影響しない程度ではあるが、近くにいるアルベリーとカレンディーナの顔が少し強張っている。


 クリーナの手に神力が集まり、形を作っていく。何が出来るのだろうか? じっくりと見ていたら出来たのは5つの水晶のようなものだった。


「何だそれは?」


「ふふ、さっきアステルと話をしていたのだけど、レイは各大陸を繋ぐ転移魔法陣を作ってくれたのよね。だから、私もお礼はそれにしようと思ったの。規模は違うけどね」


 規模は違う転移魔法陣。まさかそれって……


「レイは気がついたかもしれないけど、私とアステルで作ったこの水晶には、私の世界とアステルの世界を繋ぐ鍵となっているわ。そして私たちが認めた人のみ世界を移動出来るようにしたの」


 ……それはまたとんでもないものを作って。クリーナは驚く俺たちに満足そうに頷き、俺、アルベリー、カレンディーナへと渡していく。残りの水晶はミレスとクレアに渡すそうだ。


 でも、これで俺も気軽にこの世界へ来る事が出来るというわけか。アルベリーたちも嬉しそうだ。彼女たちが来たら色々と案内して上げないとな。


 クリーナは目的を果たしたのか、そのまま消えてしまった。本当にこれだけのために来たのか。全く律儀な奴だな。


 それから、屋敷でのパーティーは終わった。アルベリーカレンディーナにはお礼を言って、明日帰る時間帯を話す。みんなが起きて準備をしていれば昼頃にはなるだろう。


 アルベリーもカレンディーナも悲しそうな表情はするが、クリーナから貰った水晶を使えば、いつでも会える。1週間ぐらいは魔力を溜めないといけないらしいが。


 アルベリーから借りている屋敷に戻った俺たちは、明日の帰る準備をして、すぐに就寝についた。この世界ともおさらばか。まあ、もう来れないってわけではないので、そこまで悲しくはないが。


 隣ではアレンとエレネがぐっすりと眠って、その向こうでは今日は順番だった香奈とハクが眠っている。ふわぁ〜、家族の愛らしい寝顔を見ていたら、俺も眠くなって来た。お休み、みんな。

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