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後日談.新婚旅行?編 終戦

「貴様ら、殺す!」


 6本の腕を広げながら、俺たちの方へと向かってくるシェイド。ちっ、この姿に変わってから急に速度が早くなりやがった。


「ぐらぁっ!」


 シェイドが初めに狙ったのは、アステルの方だった。アステルに向かって、左側の3本の腕で振るう。アステルは、シェイドの腕を飛んで避け、切りかかろうとするが、背から出る触手に阻まれる。


 その上、触手の先端は鋭く尖っており、大量の触手が、アステルを突き刺そうと迫る。アステルは神剣と神盾を使い、逸らして避けるが、少しずつ追い込まれて行く。


 少しでもあの触手を減らさなければ。俺は暴れるシェイドの真上にめがけて跳び、左手には、真紅の槍を創造する。そして、シェイドに向けて一気に放つ。


「穿て、ゲイ・ボルク!」


 俺の手から放たれ、真紅の一閃となったゲイ・ボルクは、途中で幾重にも分かれ、数えるのも億劫になる程の数が、シェイドへと降り注ぐ。


 シェイドは途中で気が付いて、触手を重ねてゲイ・ボルクを防ぐが、降り注ぐゲイ・ボルクが少しずつ削っていき、触手を根元から穿つ。


 シェイドの体中にも突き刺さり、体中から黒い泥のような物が流れ出る。血のようなものか? わからないが、このまま攻める。


 俺は片手に剣を創造し、シェイドへと切りかかる。シェイドは自分に刺さっているゲイ・ボルクを無理矢理抜き、俺の剣を爪で防ぐ。


 腕は穿たれて、右が1本、左が2本まで減ったが、俺の速度に反応してくる。やっぱり神は神か。


「ちっ、どうして私の邪魔をする! お前はこの世界の人間では無いだろう!」


「確かに俺はこの世界の人間じゃねえよ。だがな、俺の大切な妻と、その親友が助けを求めてんだ。それを黙って助けるのが、夫の仕事だろうが!」


 俺の剣を防ぎながら空いている腕の爪で切り裂こうと、腕を振るうシェイド。一撃一撃で地面に爪痕を残す程の切れ味だが、当たらなければどうって事は無い。


 残った触手で攻撃してくるが、俺は触手の雨を掻い潜り、空いている左で、シェイドの腹を殴る。シェイドの口からは空気の漏れる音がし、痛みに悶えるが、更に蹴りを放つ。


 顔面へと回し蹴りし、吹き飛ぶシェイド。地面を何度も跳ね、吹き飛ぶが、体勢を立て直し、再び触手を伸ばしてくる。


 俺は空いている左手にも剣を創造し、迫る触手を切り落とす。その間、シェイドは魔法を準備していたようで、シェイドの周りにドロっとした魔力が巻き起こる。


「これで、死ねぇ! 神域魔法、影神ノ滅波!」


 全てを飲み込むような漆黒の波が押し寄せる。俺は光り輝く剣を創造し、両手で握る。この剣に俺の神力を全て注ぐ。それぐらいしなければ、あの漆黒の波は防げない。天にまで登るほどの光の輝き。


 俺は光の柱を漆黒の波へと振り下ろす。


「切り開け! エクスカリバー!」


 俺の光の斬撃とシェイドの漆黒の波がぶつかり合う。ぶつかった瞬間、神力同士が触れ合ったため、その衝撃で大地が割れ、嵐が吹き荒れたが、俺はそれどころではなかった。


 俺の持てる全力を放ったのだが、シェイドの漆黒の波に押し負けていたのだ。俺は歯を食いしばって踏ん張るが、少しずつ、漆黒の波に押されていく。


 俺が創造したエクスカリバーも震えて悲鳴を上げていた。このままじゃやばい。そう思った時


「私の力を使ってください! レイ様!」


 俺の背を支えるようにアルベリーが、俺の背後に立っていた。しかもアルベリーだけじゃ無い。


「もちろん私の力もです! レイヴェルト様!」


 カレンディーナもアルベリーの右側で俺の背を支えてくれる。


「わ、私はエアリス様に褒めてもらうために来たんだ! べ、別にお前のためじゃ無いからな!」


 変なツンデレを見せるミレスが、アルベリーの左側で俺の左肩を支えてくれる。


「わ、私は私とシルアを助けてくれたお兄さんを助けたいです!」


 震えながらも、カレンディーナの右側で俺の腰へと抱き付いて支えてくれるクレア。


 そして、そんな彼女たちから、温かいものが俺の体へと流れてくる。これは……神力か?


『ええ、彼女たちの加護を経由して、私の力をあなたに送っているわ。さあ、あのナルシストをぶった切って頂戴!』


 頭の中にクリーナの声が聞こえて来た。どれだけシェイドの事が嫌いなんだよ。だけど、助かった。俺はクリーナから貰った神力をエクスカリバーへと流す。


 先ほどまでは黄金に光り輝いていたエクスカリバーだが、クリーナの神力のせいか、そこに蒼く輝く神力も流れていく。黄金と蒼色が渦を巻き、一筋の閃光へと変わり、そして


 ーー波が割れた。


 漆黒の波はエクスカリバーに切り裂かれ、エクスカリバーの光の奔流に巻き込まれ消えていった。俺は神格化が解除され、全身に力が入らずその場に座り込む。


 後ろから慌ててアルベリーたちが支えてくれるが、全く力が入らない。気を失わないだけまだマシか。


 光も収まり、吹き荒れていた砂煙もようやく収まると、煙の中から、左半身が吹き飛んだシェイドが現れた。しかも、左半身は再生していっている。


 やっぱり地力が違うか。元から神のあいつと、成り上がりの俺とは。


「っ! まだ、倒れないの!? レイ様は後ろに、私が倒します!」


 アルベリーがそう言いながら、神器の細剣を握るが、俺が腕を掴んで止める。アルベリーは怪訝そうな顔をして、俺の方を見るが、そう焦らなくてもいい。もう決着は付いたからな。


 俺がアルベリーを止めたその瞬間、シェイドの上空に幾重にも重なる光り輝く巨大な魔法陣が現れた。


「影の神シェイドよ。あなたは他の神が治る世界で暴れ過ぎです。私がクリーナの代わりにお仕置きしましょう。レイさんにはされたいですけどね! 神域魔法、女神ノ裁(ジャッジメント)!」


 アステルはそんな事を言いながら、空高く掲げた剣を振り下ろす。最後に変な事を言わなければカッコいいのに。


 冗談を言うアステルだが、魔法の威力は半端なかった。上空から光が落ちて来て、魔法陣を通る度にどんどん小さく圧縮されていく。


 そして、最後は人1人照らすほどの大きさの光がシェイドへと降り注いだ。その瞬間、シェイドは声を上げる暇もなく消し飛んでしまった。


 俺たちはあまりの威力に口を開けてみているしか無かった。


「レイさん、ご褒美にお仕置きしてください!」


 ……うるさいよ。

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