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32.誕生会(やっぱりまだ開催されません)

 これは一体どういう状況だ?


 先ほどまで怒っていたフェリス王女が涙を流しながら謝ってくる。


 この部屋にいるのは、ナノール王国側は王様と模擬戦の時にいたおっとりとした王妃に宰相がおり、ワーベスト側は獣王と思われる男性とフェリス王女をそのまま大きくしたような綺麗な女性。多分王妃だろう。そして俺を見て歯を剥き出して笑ってくる男の子がいる。男の子と言っても俺より年上だろう。


「アレクシア戻ってきたか。辺境伯もレイも早々に呼び出して悪かったな。席に座ってくれ」


 王様にそう言われたので俺たちも席に座る。


 すると目の前に座っていた獣王らしき男性が立ち上がる。おおう、立つと2メートル近くあるからでけぇ。筋骨隆々だから普通よりでかく見える。


「お主がアレクシア嬢の相手になるレイヴェルト・ランウォーカーか」


「は、はいレイヴェルト・ランウォーカーと申します。獣王陛下」


 そう俺が挨拶をすると、獣王は


「すまなかった!」


 と頭を下げてきた。えっ? 何だ一体?


「お父様! どうして頭を下げるのよ!」


「お前は黙っていろ! フェリス! レイ殿よ。うちのバカ娘がお主に手を出したと聞いた。これはそれに対する謝罪だ。本来なら娘の命で償うべきなのだろうが、こんなバカ娘でも俺の可愛い娘だ。どうにか俺の利き腕である右手と、バカ娘の王家追放で許してくれないだろうか?」


 そう言い獣王は左手を手刀にし、右腕を……やばい! この人マジだ!


 俺は即座に身体強化にライトニングの身体付与を3重でかけ、即座に獣王の懐に入り、左手を殴る!


 ドガァン!


 と人を殴ったように聞こえない音が鳴り響いた。俺は何とか左手を上にカチ上げることが出来た。


「はあ〜、危なかった〜」


「えっ? えっ?」


 フェリス王女は訳も分からず俺のいた席と獣王を交互に見ている。


「ほう。その歳でそれ程の能力とは、アレクシア嬢が惚れるのもわかる。だがケジメをつけなければいけないのに何故止める? レイ殿」


「まだ何も話し合っていないのに急に腕を差し出すやら、王女の追放など言われても困ります。一旦落ち着きましょう」


 俺はそう言い元の席に戻る。獣王もわかってくれたのか席に着いてくれた。


「そうだな。確かにお主の意見も聞かずに進めて悪かった。そういえば自己紹介がまだだったな。俺は獣人国ワーベストの王をしているファルシウス・ワーベストだ。こちらが私の妻でアシュレイ・ワーベストで、こっちが俺の愚息になるファーガス・ワーベストだ。よろしく頼む。ランウォーカー辺境伯殿とレイ殿」


「こちらこそ挨拶が遅れました。ランウォーカー辺境伯領主のジークハルト・ランウォーカーと申します。今後ともよろしくお願いいたします。獣王陛下」


 そうして握手をする獣王とジーク。


「ようやく落ち着いて話ができるな。獣王よ。フェリス嬢も座らせて話に参加させてはどうかな?」


「ご配慮感謝する、ナノール国王よ。フェリス、座れ」


 そう言いフェリス王女を睨み付ける獣王。


「は、はい」


 プルプルと震えるフェリス王女。あっ、子犬が震えているみたいでなんか可愛い。


「まずはフェリス。お前に確認する。何故このようなことになっているのかわかっているのか?」


「も、申し訳ございません、お父様。私にはわかりません」


 それを聞いて溜息をつく獣王。


「お前がしでかしたことは同盟破棄に近い事なのだぞ。市民同士の喧嘩なら捕まえれば済むが、お前は同盟国の貴族の子息を殴った。しかもその同盟国の王女の婚約者をだ。平民が貴族を殴ったらどうなる、フェリス?」


「即刻捕縛し重罰に処せられます。ひどい場合は死刑……」


 そう言いまたプルプルしだしたフェリス王女。自分のしでかした事を気付いたらしい。俺も言われるまで思いつかなかった。


「それは自国の民同士の場合だ。今回は同盟国の話になる。軽い場合でも高額な賠償問題になり、最悪の場合は宣戦布告とみなされ戦争になる事だってある。お前はそれを行ったのだ」


「わ、私はそんな事になるとは思わなくて……」


「馬鹿者! お前は王族の一員だろうが! そんな事もわからなくてどうする!」


 やばい。獣王の毛が逆立っている。顔がワイルドな顔なだけに怒るとかなり恐い……


「ヒィィィ!」


「今回はナノール国王が被害を受けた本人に決めさせれば、国としては問題にはしないと言ってくれている。そこでレイ殿よ。先ほどの条件で許しては貰えないだろうか? 金銭が望みなら持ってこさせるし、他の条件も飲もう。この子の命だけは助けてやってくれ」


 そう言いまた頭を下げる獣王。子供思いの良い父親だな。


「あ〜そういえば私もさっき獣王陛下を殴ってしまった。レイモンド陛下、どうしましょう?」


 そう言い俺は王様を見る。王様も俺の意図に気付いたのだろう。うなづいて発言する。


「な! それはまずい! この事が世間にバレれば戦争になってしまうぞ! 獣王よ、どうにか穏便に済ませる事は出来ぬか?」


 獣王もわかったのだろう。


「俺的にはそんなに痛くもなかったので気にはしていない。まあ、俺の言う条件を飲んでくれるなら穏便に済まそう」


 痛くなかったのかよ……どんな体してるんだ?


「それは何かな?」


「我が娘を許して貰えればそれでいい。どうかな?」


「もちろんだとも。それで良いか、レイ?」


「私はそれで許してもらえるなら十分でございます。私も利き腕を出しましょうか?」


 演技下手だな俺。そんな事を考えていると


「ハッハッハ! いや〜ありがたい! 恩にきるぞ、レイ殿」


「こちらこそご配慮感謝します、獣王陛下」


 2人で笑いあっていると


「ねぇキミ。アレクシアのお嬢ちゃんのところじゃなくてウチに来ない?」


 とアシュレイ王妃がそんな事を言い出した。


「な! アシュレイ様! レイは私とこれから一生を共にするのです! そんな事許しません!」


とアレクシアが怒る。そんなはっきりと言われると照れるな。


「だってこんなに強くて良い子滅多にいないもの。うちのバカ息子に見習わせたいわ。それでどうかしらランウォーカー辺境伯?」


「いや〜うちは息子に決めさせている部分もありますので本人に確認頂ければと」


 そんなの初めて聞いたぞ親父殿。


「そうなの? じゃあ、レイ君どう?」


「……俺は、この国を出る気はありません。この国の一員として強くなると決めましたから」


 そう言うとアレクシアがキラキラした目で俺を見てくる。王妃様もうんうんと頷く。……そういえば名前聞いていないな。今更聞きづらいぞこれ。


「それは残念。こんな良い子が、ウチに来ればと思ったけど」


「それは仕方ないぞアシュレイ。レイ殿は辺境伯の子息。家を置いて出るわけにはいかぬからな。だが確かにこの歳であの強さ。縁を結んでおきたいのはわかるな」


 そう言い獣王とアシュレイ王妃がフェリス王女を見る。うわ〜嫌な予感。


「な、何でしょうか、お父様、お母様?」


 そしてニヤリと笑う獣王。獣王がそれをすると恐いな。


「レイ殿よ。さっきの話は終わったのだが、これは俺の気持ちだと思って受けてくれないだろうか? 私の娘との婚約を」


「「「……えええっ!」」」


 俺とアレクシアとフェリス王女は同時に叫んでしまった。


「ど、どういう事でしょうか、獣王陛下」


「なに。うちの娘をお主に嫁がせようと思っているだけだ。レイ殿。レイモンド陛下よ。どうかな?」


「はっは。息子のアレックスがそれを望んでいたのだが、レイもアレクシアと結婚すればうちの家族と同然だからな。それもよろしいのではないかの」


 全然よろしくないですよ! ほらまた、フェリス王女がプルプルと震えていますよ。


「私は絶対に嫌です! 誰がこの男と!」


「お前は俺みたいに強い男と結婚したいと言っていたではないか」


「そ、それはそうですが、こいつは絶対に嫌です! お姉様を誑かすような男です! チビです! 絶対に嫌です!」


 ……この女ぶっ飛ばしてやろうか。またチビって言いやがって。成長期がきていないだけだ!


「チービ、チービ、チービ、チビチビチビチビ!」


 ブチッ!


「チビチビうるせえな! ぶっ飛ばすぞ!」


 ……あっ、言っちゃった……


「やってみなさいよ! 返り討ちにしてやる!」


「お父様! 今日の誕生会のドレスな着替え、ってなにこの雰囲気?」


「父上! フェリスが来ていると聞いて参りました! って何だこれ?」


 俺がフェリス王女と言い合っているところに、今日の誕生会のドレスを見せに来たマリーナ王女と、フェリス王女に会いに来た第2王子のアレックス王子が部屋に入ってきた。


 ……何でこうなるんだ。

よろしくお願いします!

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