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後日談.新婚旅行?編 国の危機

「……何だか呆気なく見つかったな」


 俺は机の上に並べられるとんでもない圧を放つ品々を眺めている。


 最後の1人であるクレアちゃんをクリーナの元に連れて行き加護を貰った翌日。俺はクリーナに教えて貰った洞窟へと神器とやらを取りにやってきたのだが、特に苦労する事なく奥まで辿り着いてしまったのだ。


 洞窟の奥には、ぽつんと真ん中に机が置かれていて、その上には無造作に神器が置かれていた。こんな扱いで良いのか、と思ったが、神器の力なのか、全く劣化する事も、埃をかぶっている事もなかった。


 この神器から放たれる圧が、この辺りに生き物を寄せ付けないのかも知れない。コクシすらいなかったからな。危険かもと思って1人で来たけど暇過ぎる。


 机の上に置かれているのは、透き通るような蒼さをしている細剣に、眩い光を放つ白銀の槍、緋色に染まる一対のガントレット、全てを塗りつぶすような漆黒の鞍が置かれていた……なんか、誰も見た事があるぞ?


 まさか……偶然だよな? みんなが必要な物にそのまま同じなんて。アルベリーは細剣を使っていたし、カレンデイーナは槍を、ミレスは全身武装だったが似たような物、クレアちゃんはシルアに乗るために必要だし。


 俺は不思議に思いながらも、全ての物をアイテムリングに仕舞う。その瞬間、辺りを先程まで神器が放っていた圧に覆われる。取った後に出てくるパターンだったか。クリーナめ。封印解かれて無いじゃないか。


「汝が、我らが守りし秘宝を奪ったのは! それが欲しくば、我を倒せい!」


 そして現れたのは、黒い影をした男のような物だ。実際には顔に表情なども無いのでわからないが、声からしてそうだ。


「これは女神クリーナから取ってくるように頼まれてな、悪いがここは通させてもらうぞ」


 俺がそう言いながら、アイテムリングからガラドルクを取り出そうとしたら


「あっ、クリーナ様からのお使いでしたか。これは失礼いたしました。どうぞお通りください」


 と、簡単に道を開けてくれた。


「……ええっと、通さないんじゃなかったのか?」


「それは、侵入者だったらです。あなた様からはクリーナ様の神気が感じられます。なので間違い無いと考えました」


 そう言って、恭しく頭を下げてくる黒い影。まあ、それで良いのなら良いのだが。後で返せ、って言っても返さないからな。


 俺は黒い影に手を振りながら見送られ、洞窟を出る。さて、一旦カレンディーナのところへ……この反応は!


 ◇◇◇


「……これは、世界の終わりでも見ているのでしょうか?」


 私は外壁から見える景色にポツリと呟きます。私が見ている景色は全てが黒一色。その全てがコクシだとわかるまで、そう時間はかかりませんでした。


 レジルト含めて周りの兵士たちは、顔を青くさせて何も言葉を発しません。それも当然でしょう。私もこの女王という立場でなければ、同じようにしたかったです。ですが、女王になったからには、みんなを導かなければ。


 あんな無理矢理ですが、私が王を引き継ぎ女王となって、ほんの数日ですが、私の代でこの国が消えてしまうのですね。


 そう考えていると、申し訳ない気持ちで一杯ですが、それ以上に、やるべき事をやらなければ。私は隣で呆然とするレジルトに向かって


「レジルト、今すぐ住民を避難させなさい」


「し、しかし、この数相手では逃げたとしても直ぐに追いつかれ、殺されてしまいます」


「そんな事はわかっています。だからといってこのまま、この中に残っていても殺されるだけです! 少しでも、1人でも助かるように動きなさい!」


 私の言葉に、ビシッと敬礼をして動き出すレジルト。コクシの数は数万ではききません。数十万はいるでしょう。


 でもどうして急にこんな数現れたのでしょうか? 今までは多くても数百だったのに。


 数十万対数百。戦力差は歴然としています。私たちは必ず死ぬでしょう……最後ぐらい謝りたかったですね。


 あの人がこの国を思ってしてくれた事はわかっています。それなのに私は、一時の感情で……今更後悔しても遅いですね。


「みなさん、ここが私たちの死地となるでしょう。逃げたい方は逃げても構いません。誰も文句は言いません。だけど、最後まで私と戦ってくれるという人がいるのであれば、私の背について来てください!」


 私はそのまま外壁を降りていきます、どれだけついて来てくれるかはわかりませんが、私はもう振り向く事はありません。この命が尽きるまで、突き進むだけです。


 門までたどり着くと、兵士たちが心配そうに私を見てきます。みんな1人1人に挨拶をしたいところですが、もう時間がありません。


「門を開けてください」

 

 私の言葉に一瞬戸惑う門兵ですが、少しずつ門を開けてくれます。私は腰に差してある王家代々伝わる細剣を抜きます。


 目の前には砂煙をあげながらこちらに向かって来るコクシたち。正直に言うとこの光景だけで、手足が震えてきます。


 私は首からかかっているあの方に貰ったネックレスを握ります。あの方に助けてほしい。そう願う気持ちもあります。ですが、あの方を拒絶した私に、会う資格などありません。


 手足が震える気持ちを抑えながら前を向こうとして、うつむかせていた顔を上げようとしたら、ポフっと頭の上に大きな手のひらが置かれました。


 私は驚いて顔を上げると、そこには


「1人で背追い込むなよ。言っただろ? 絶対に助けに来るって」


 銀髪のあの方が立っていました。

この前から新作

「異世界で彼女を探して何千里?」

というものを連載し始めました!

もしよろしければご覧ください!

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