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後日談.新婚旅行?編 エアリス怒る

「ここがそうか」


 俺は、同じ領地内にあるのに、別の世界のように区分けされた区画へとやって来た。アルフレイド帝国の傭兵団の野営地になる。


 もう、野営地というか町のようなものだけどな。出入りしているのは全員女性。男が1人もいない。男子禁制というのは本当らしい。


 昨日は、そのまま祝勝会という事で、傭兵団はここには夜遅くまで戻って来なかったので帰って、今日再び来たのだ。


 今日来たのはエアリスとフィーリアだ。さすがに毎日国の代表であるカレンディーナを連れ回すわけにはいかないからな。目的の人物は見つかったし。


「ふーん、ここが女だけの傭兵団の野営地ね。私が行って来てあげようか?」


 その野営地を見ていたら、エアリスがそんな事を言ってくる。隣のフィーリアもこくこくと頷く。


 うーん、そっちの方が良いかもしれないな。彼女たちは男性は誰も入れないようだし。俺が行くよりかは、エアリスたちに任せた方が良いかもしれない。


「それじゃあ、任せても大丈夫か? 目的の人物は、この傭兵団の団長でミレス・レイディアーノ。茶髪の女性だ」


「了解です! 私たちに任せて下さい、お兄様!」


 エアリスとフィーリアの姉妹は意気揚々と野営地へと向かう。少し不安な部分もあるが、大丈夫だろう。


 エアリスとフィーリアは、入り口のところに立っている、女性の門番へと声をかける。ここからでは聞こえないが、何か話をして中へと案内された。やっぱり女性だと簡単に入れるのかな?


 俺はその様子をじっと見ていることしか出来なかったが、その行動が怪しかったのか、野営地の方から女性の兵士が2人やって来た。


「ちょっと、あなた。そこで何をしているのです? 先ほどから野営地の方をジロジロと見て」


「そうだ。汚らわしい男め。ここに近づかないように言われてないのか?」


 おおぅっ、初対面でこの対応。中々手厳しい。右側の金髪の女性は眉間にしわを寄せるだけだが、左側の黒髪の女性は腰にある剣を今にも抜きそうな程殺気を放ってくる。怖えなおい。


「あー、俺はここで人を待っていてな。直ぐに戻ってくると思うから少しここで……」


「ダメです。あそこにいる女性は、男性にひどい事をされた人もいます。その人たちは、男性を見るだけで取り乱してしまうほど、心に大きな傷を持った人もいます。それなのにこんな見えるところにいられては困ります」


 ……そう言われたら、この場所に止まるのは申し訳ないな。万が一俺を見て取り乱されても困る。ここは従ってここから離れるか。エアリスたちが出て来たらわかるし。そう思い立ち上がろうとした時


 ズドドドォン!


 と、何かが連続して爆発する音が、野営地の中から鳴り響く。一体何が? と思い見て見ると、野営地の方に空高く登る火柱が見える。


「これは……お姉様が!」


「なんで姉御がこんなところでアーティファクトを!?」


 兵士の2人は、これが誰がしたのかわかるらしい。そのまま野営地へと走って行ってしまった。俺は認識阻害のマントを羽織る。隠れて街中を歩く時用に作ったやつだ。これで俺がいる事がわかりづらくなるだろう。


 それに、この魔力は……エアリスが暴れている。一体何があったんだ?


 ◇◇◇


 私とフィーリアは、この野営地の門番をしていた女性兵士の後について行く。へぇ〜、レイから話に聞いていたけど、本当に女性しかいないわね。


 年は小さい子で赤ん坊くらいから、上は50ぐらいまで。全員が女だわ。確かにここにレイは入りづらいわね。


「本当に女の人しかいませんね。男の人が1人もいないです」


 フィーリアもこんな光景は初めて見るからか、キョロキョロとしているわ。


「それは当然だ。私たちは男が嫌いだからね。男なんて見ただけで寒気がするよ。昨日だってどれだけ我慢したか」


 私たちの呟きを聞いていた門番の女性は、本当に嫌そうに二の腕をさする。心から男が嫌なのね。まあ、私も知り合い以外は嫌ね。


 だけど、女性に対してはこんな親切に案内してくれるなんて。私たちは団長さんに一目会いたいと言っただけなのだけど、快く受けてくれて。


 それから町の中を歩いていると、他の建物に比べて一際大きな建物へと辿り着いた。


「ついてきな」


 私たちは言われるがまま中へとついて行く。中にも女性が沢山いる。ただ、外にいる女性に比べて、みんな武装していたり、雰囲気が違っていたりするから、傭兵団の中でも上の方の人たちなのだろう。


 そして、とある部屋に案内されると、中から


「ああっ! おねえさまぁぁぁっ!」


 とても卑猥な叫び声が聞こえて来た。私とフィーリアはビクッと構えるけど、門番の女性はやれやれ、と慣れたような感じだ。日常茶飯事なのだろう。


「姉御ー、お客さんだぞー」


「ん? 少し待ってな!」


 門番の女性が扉を叩きながら言うと、中から声が帰ってくる。そして数分後には下着しか着けていない女性が出てきた。この人が傭兵団の団長のミレス・レイディアーノね。


 茶髪の髪に自己主張の激しい大きな胸。身長は170ほどかしら。両腕には腕輪を付けている。


「なんだい、この子たちは? 見かけない子たちだねぇ?」


「彼女たちが姉御に会いたいとさ」


 門番の女性はそれだけ言って戻ってしまった。ここにはミレスと私たちだけ。そして部屋の中からは素っ裸の女性がベッドの上で気を失っていた。時折うわ言で「お姉様〜、お姉様〜」と言っている。


「それで私に何の用だい? 私とヤりたいなら、あんたたちのような可愛い子は大歓迎だよ。さあ、脱いで!」


「ぬ、脱がないわよ! 私には大切な人がいるのだから!」


「そ、そうですよ!」


 私たちが、ミレスから数は下がりながらそう言うと、ミレスは


「あん? なんだ、あんたら旦那持ちか?」


 急に態度が変わった。先程までの明るい雰囲気は無く、剣呑な雰囲気へと。私たちは急に変わった雰囲気に困惑しながらも頷くと、ミレスにため息を吐かれる。そして、手で追い払うように振る。


「帰りな。ここは貧弱な男とイチャつくような情けない女が来るようなところじゃないよ」


 ミレスはそれだけ言うと、さっさと扉を閉めて戻ってしまった。色々と言いたい事はあるけど、私の大好きな人を侮辱するのは許せないわね。何も知らないくせに。


 私はアイテムリングからカゲロウを取り出し、扉を切り裂く。殺気を放っていたからか、中にいたミレスも臨戦態勢を取っていた。


「……これは想像以上の殺気じゃないかい」


「私の大切な人を侮辱した事を取り消しなさい。今なら土下座で許してあげるわよ」


「はっ! 私の頭を地面につけたかったら、力づくでやるんだね! レグルスアームズ!」


 ミレスは、両腕の腕輪に魔力を流した瞬間、元の大きさから想像が出来ないほど、大きな腕が現れ、ミレスの両手に装備された。拳だけで人の頭2つ分ぐらいの大きさね。


 その拳で殴りかかって来るのを避けると、驚く事に拳が触れたところが爆発した。フィーリアは上手い事避けているわね。私はそのまま屋敷から飛び出す。その後を追いかけて来るミレス。


 レイを侮辱した事、絶対に謝らせてやるんだから!

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