後日談.新婚旅行?編 哀しみの化け物
「……これで加護がついたのでしょうか?」
先ほど、クリーナから加護を受けたが、実感が無いため疑問形なカレンディーナ。まあ、加護にどのような能力があると言わなかったクリーナが悪いのだけどな。
アルベリーもカレンディーナも2人であーだこーだ言いながら色々と試して見るが成果は出ず。俺が観察眼で見てやろうかと、言ったのだが、恥ずかしいのでいいと断られてしまった。
……カレンディーナのは、門の時に見てしまったのだけど。俺の観察眼は、神眼のせいか、色々と見えてしまう。その中には女性特有のサイズとかも含まれている。カレンディーナは見かけによらずお……ゲフンゲフン! まあ、見てしまったのだ。黙っておこう。
「ま、まあ、そのうちわかるだろう。クリーナも危険な時に使えないようにはしていないだろうし」
「それもそうですね。クリーナ様ですし」
「うむ、そうだな。なんだってあのクリーナ様だし」
俺たち3人それぞれが頷く。どこからか「忘れてたっ!」という叫び声が聞こえてきた気がするが、気のせいだよな。
とりあえず、騎士王の件は終了した。次を探しにいかないとな。次は誰にしようか。レイブン王国の孤児の方にするか、アルフレイド帝国の傭兵団の団長にふるか。まあ、どちらにせよ一度はみんなの元に戻らないといけないのだが。
そう思った時に、突然大地が揺れ始めた。部屋にいた全員が、しゃがみこみ、地面に手をつけるが、かなりの揺れだ。
「ちっ、奴が来たかっ!」
カレンディーナはどうやらこの自身の正体を知っているようだ。揺れが落ち着くのを待ってから部屋を出て行った。俺たちもその後を追いかける。部屋を出るとそこには
「……何ですか、あれは?」
隣に立つアルベリーが声を震わせる。これはなかなか凄いな。騎士王カレンディーナが治るペロソネス王国の外壁は10メートルほどの高さはある。だけど、それ以上に現れた敵は大きい。
「何を言っているのだアルベリー殿。これがコクシではないか。私たちが何十年も戦っている敵。こいつ一体で数多くの国、生物か殺された世界の敵だ!」
……どうやら大陸にいるシェイドに召喚された敵によって、コクシの姿形は違うようだ。アルベリーのいたジャパウォーネのコクシは、大きくても5メートルほど、ほとんどが2メートル近いコクシで、その分数は多かった。
だけど、この国のコクシは、ただただでかい。現れたコクシは体長が50メートル近くまだ距離はあるというのに小山のようにでかい。
「あんなのと戦ってよくこの国残っているな」
「あ、ありがとうございます! それはですね、この国に残っていたアーティファクトのおかげなのです。今私が装備しているアーティファクトがあるからこそ太刀打ちできるのです!」
そう言うカレンディーナの身には鎧を纏っており、手には白銀の槍が握られている。そして、カレンディーナが何か呪文を唱えると、身に纏う鎧と槍が輝き出す。
「とにかく奴を止めなければ! レイヴェルト様、ここで見ていてください!」
カレンディーナは再び飛び出してしまった。その後ろに続く兵士たち。よく訓練されている。あの巨大なコクシが現れても、誰も慌てる事なく準備をしていたのだろう。
「しかし、デケェなー」
俺は巨大なコクシを見上げる。俺たちの世界でも中々いないぞ、こんなでかいの。腕は6本生えており、背には巨大な翼が4翼付いてある。頭には3本の角が生えている。そして顔は、ジャパウォーネに現れるコクシとは違って、表情が物凄く哀しそうだ。
そういえば、クリーナはこの世界は4つの大陸で出来ているって言っていたな。そこにそれぞれ顔の表情が違うコクシたち。喜怒哀楽でわかれているのかもな。
そんなコクシを見ていたら、どうやら戦闘が始まったようだ。拳だけでも5メートルほどの大きさがある。その拳が振り下ろされた。あんな巨大な岩のような拳で殴られたら、タダでは済まないぞ。
「第1部隊、壁を作れ!」
だが、カレンディーナの指示により、20人ぐらいの部隊が、一斉に魔力を萌出、擬似的な魔法障壁を作り出した。なるほど、一人一人では小さいが、人数を揃えて重ねる事で障壁を大きくしているのか。
しかも、巨大な拳を真正面から受け止めるのではなく、障壁を斜めにして、拳を逸らしている。そして、あの複数に分かれた部隊は、全部が障壁を発動する部隊のようだ。
複数の部隊が、あの巨大なコクシを囲うように展開している。そして、その部隊の中で一際輝く人物が。この世界ではアーティファクトと呼ばれる魔道具を持つカレンディーナだ。
「行くぞっ!」
カレンディーナの纏う武器たちの輝きが増した瞬間、カレンディーナの姿が消える。そして気が付けば、コクシの顔へと迫り、そして
「はぁぁあっ!」
コクシの横面へ槍が放たれる。ズドォン! ととんでもない音が鳴り響き、コクシが仰け反る。これは凄いな。
だが、コクシもやられたばかりではない。コクシの体から触手のようなものが大量に出てきて、その全てがカレンディーナへと向かう。
カレンディーナは、巨大な振るわれる拳と、大量の触手に迫られ防戦一方だ。時折攻撃するが、コクシに大きな傷はない。周りの兵士たちも、防御に専念するだけだ。こんな戦いをずっと続けてきたのか、彼女は。
「レイ様! 私たちも手伝いましょう! コクシを目の前にして見ている事など出来ません!」
そこに、アルベリーがそう言ってくる。だけど
「だが、アルベリーはあの巨大なコクシと戦えるのか? カレンディーナたちは、戦い方を知っているからこそ、あんな風にできるわけで、アルベリーはあんな巨大な敵と戦った事は無いだろ?」
普通のサイズの敵と戦うのと訳が違う。体が大きい、それだけで1つの武器なのだ。そんな敵と戦ったことが無いアルベリーには、あの中に入るのは中々厳しいだろう。
だけど、確かにこのまま見ている事は出来ないのは確かだ。彼女ももう知らない仲では無い。彼女を助けに行くか。




