後日談.新婚旅行?編 最強妻たち
「さあ、どうぞおかけになって下さい!」
キラキラとした目で俺を見てくる騎士王、カレンディーナ。少し魅了眼の力がかかり過ぎているのかもしれない。魅了眼は、永続的なものではなくて、一時的なものだ。ただ、その間の記憶は残るけど。
なので、魅了眼を使っていない今なら少しずつ解けていくはずなのだが、その兆しは見えないな。まあ、ここに来た目的は、女神クリーナのところへ連れていくのが目的だから、別に構わないといえば、構わないのか。
「それで、ここに訪れた理由はなんなのでしょうか?」
「ええ、ここに来た理由は……」
俺たちがここに来た理由を騎士王へと話そうと思った時に、突然頭の中に声が響いた。この声はアステルだ。
『あー、マイクテスト、マイクテスト。あー、あー、レイさんの愛しのアステルですよー。あー、あー』
……アステルは何をしているんだ? 突然頭を抱える俺に、みんなは不思議そうに見てくる。周りにはアステルからの連絡は聞こえないからな。ただ、突然頭を抱えたようにしか見えないだろう。
『……どうしたんだよ、アステル。何かあったのか?』
『あっ、繋がりましたね、レイさん。ええっとですね。事後報告になるのですが、先ほどジャパウォーネ王国にコクシの大群が攻めて来たのですが、殲滅しましたので。だから安心して帰って来て下さい』
……あいつ、一方的に話すだけ話して切りやがった。コクシの大群がどれ程なのかはわからないが、アステルの慌てるような様子はなかった。まあ、あいつが慌てるところなんて見た事は無いのだけど。
「どうかしたの、レイ? さっきから頭を抱えて」
「ああ、今、アステルから連絡が来たのだけど、ジャパウォーネ王国にコクシの大群が攻めて来たようだ」
「えっ!? そ、それなら早く帰らないと!」
俺の言葉に驚き慌てるアルベリー。突然自国が襲われていると聞いたら、当然アルベリーのようになるだろう。俺もアステルからの連絡が無ければ、同じ様になる。
「アルベリー、落ち着け。話にはまだ続きがあって、既にコクシは倒した様だ。だから、安心してくれとの連絡だ。言葉が足りなくて悪かったよ」
俺が最後まで言うと、アルベリーはホッとした様子で、椅子に沈み込む。心なし、この数分ほどで顔色が悪くなっている様だ。
無理もない。普段ですらいつコクシが襲ってくるかわからないのに。今は、外に出ているためその報告する無い。アルベリーはここにいる間も不安なのだろう。
国を任せる事の出来る人もおらず、王たちは遊び呆けている様だし。アルベリーのためにもう少しアステルから聞いてみるか。今度は切らせないぞ。
◇◇◇
レイたちが転移した頃
「さてと、レイも行ってしまったし、私たちは私たちで出来る事をしましょう。ヘレンとプリシア、マリはアレンとエレネの事をお願いね」
「はい、わかっていますよ、アレクシア」
「はい、アレクシアさん」
「さあ、こっちに来ようね、アレン、エレネ」
「「はーい!」」
元気に手を挙げて返事をするアレンとエレネ。うん、今日もとても可愛い。いつまでも愛でたくなるわ。だけど、他にもしないといけない事があるから、泣く泣く離れる。
「それから、キャロはこの屋敷に結界をお願い。悪意のある人物を入れさせない様にして」
「任せて頂戴」
今はこんなものでいいでしょう。万が一戦闘になれば、エアリスにフィーリア、マーリンもいる。コクシだっけ。あれにもそう負ける事は無いでしょう。レイが言うにはBランクほどみたいだし。
そんな時に、突然地面が揺れ始めた。一瞬地震かな、と思ったけど地震みたいな揺れ方では無かった。その上、外から悲鳴が聞こえてくる。建物が崩れるほど強い揺れでは無い。それなのにだ。
私は、屋敷から出ると、そこには地面からそこら中に穴が空き、そしてその穴から、全身が黒い化け物が出て来たのだ。レイから聞いていた容姿からして、この化け物がコクシね。
確かに醜悪な見た目ね。これならまだ魔物の方が可愛げがあるわ。特にあの気味の悪い笑み。あれの顔がより背筋を震わせる。
「気持ち悪いわね、これは」
私の隣に立つエアリスがそう呟く。激しく同意するわ。エアリスの手には、すでにカゲロウが握られている。私もアイテムリングからツインテルを取り出す。
「アレクシアお姉様、空からの敵は私に任せてください!」
フィーリアはやる気十分といった風に、魔法を展開する。これほどのレベルはあまり見た事ないわね。フィーリアの展開した魔法は、空飛ぶコクシを次々と撃ち落としていく。私も負けていられないわね。
そう思い、下から出てくるコクシを迎え撃とうとしたら、
「はぁぁっ!」
「うふふ、この程度では私を燃え上がらせる事は出来ませんよ?」
カゲロウでコクシを次々と切り裂いていくエアリスに、微笑みながら手に持つ武器を次々と変えて、コクシをバラバラにしていく。
エアリスは私の中ではライバルであり、ヘレンに次ぐ親友だ。彼女が強いのは知っているけど、アステルも、神なだけあってレイに次ぐ強さね……悔しいわね。
「……私たちの出番無かったわね」
私の隣でマーリンがぽつりと呟く。本当にその通りだわ。気合を入れてツインテルを取り出したのに。気が付いたらコクシは全滅。倒したのは殆どがアステルとフィーリア。
エアリスも目の前に現れたコクシを倒せただけ。そして
「わーっ! フィーママもアステルママもすごぉーい! 凄い凄い!」
「……フィーママに魔法教えてもらおっ!」
……アレンとエレネは目を輝かせて、フィーリアとアステルを見ていた。私はともかく、同じ様に戦っていたエアリスも見向きされず。
今日一番悔しいわ! 後でレイに慰めてもらわないと!




