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後日談.新婚旅行?編 貧富の差

「それでは、昨日お話しした通り、内側へ向かいましょう」


 俺たちに向かって話す青髪の女性。このジャパウォーネ王国の王女、アルベリーが武装した格好でそう言う。


 この世界に飛ばされてから1日が経過した。昨日はあの後は特にコクシが現れる事なく1日を終える事が出来た。


 昨日は全員が休める家へと案内してもらい、あの後は特にする事なく休ませて貰った。ただ、お風呂も無く食べ物もなんと言うか、アレだったからアレンとエレネが駄々をこねたのは困ったな。


 仕方がないといえば仕方がないのだが、今まで無い生活をしてこなかったからな。


 まあ、2人にはなるべく辛い思いはして欲しく無いので、アイテムリングに入っている食材と、水魔法と火魔法を使って簡易なお風呂を作ったりしたけど。アルベリーにも申し訳なさそうにされてしまった。


 そして、一夜明けた今日は、これから内側へ向かう事になっている。理由はアルベリーがこの国の王へと、今回の事を報告するのと、中枢にある女神クリーナの本神殿に行くためだ。


 アステルが言うには、本神殿だと神の力を使ってクリーナと話をする事が出来るそうだ。だから、そこで俺たちをこの世界に呼んだ理由と、帰る手伝いをしてもらうためにお願いしに行くのだ。


 神格化して帰ろうと思ったが、どうやらクリーナに阻害されているようで、ランウォーカー王国への扉が開かないのだ。クリーナは俺たちに何かをさせたいのだろう。おおよその予想はついているが。


 ただ、せめてアレンたちやプリシアたちのように戦えないみんなを帰してあげたい。ここに呼ぶなら俺1人にして欲しかった。


「おにぃ、考え事?」


 そんな事を考えていたら、ハクが下から心配そうに見上げてくる。だから俺は何でも無いよ、と頭を撫でてあげると、気持ちよさそうに目を細める。


 それから、それぞれが用意された馬車に乗り込む。馬車は計3台あり、その内2台が俺の嫁たちとロイたち夫婦だ。残り1台が、アルベリーと俺、フィーリア、ハク、ミルア、香奈、アステルになる。


 ここから王都までは馬車で4時間ほど乗るらしい。まあ、この時間は検閲なども含めての時間だそうだが。


 馬車に乗っている間は特にする事が無いので、俺は最近はまっている土魔法と付与魔法によるアクセサリー作りに勤しむ。


 土魔法の中で、鉱物変化をさせる魔法があり、それで原石の形を変える。そして、そこに付与魔法の魔法陣を書き加えれば、魔道具の完成だ。


 アレンとエレネには、簡易魔法障壁のネックレスを渡している。魔力を流すだけで発動するが、危険が迫ると内蔵されている魔力で自動発動するようになっている。発動しないほうが良いのだけどな。


「……す、凄いですね。形が変わって」


 アルベリーは珍しいのか、俺の手の中で形を変える鉱物を見て、驚きの声を上げる。彼女にも何か作って上げるか。何が良いだろうか。


 彼女の髪の毛に合うように、青い宝石であるサファイヤを使用してひし形に加工する。その周りをミスリルで覆っていき、ネックレスにする。付与する能力は自動回復でいいか。それから緊急時の障壁も発動するように。


「ほら、アルベリー、これを付けておいて。自動回復が付いていて、万が一の時は障壁が発動するようになっているから」


 じっーと、俺の手元を見ていたアルベリーだが、まさか自分にもらえると思わなかったのか、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしている。そして、首を横にぶんぶんと振る。


「そ、そんな、私には貰えません! 勿体無さ過ぎます!」


「いやいや、貰ってくれないと困るんだが。俺たちはこの世界ではアルベリーだけが頼りだ。そんなアルベリーに万が一の事があったら困るからな。俺たちのためにも貰ってほしい。それに、アルベリーの綺麗な肌が傷つくのは見たく無いしね」


 俺が正直に言うと、アルベリーは頰を赤く染めて、おずおずと俺の手にあるネックレスを受け取る。そして自分の首に付けると、それを見て嬉しそうに微笑んでくれた。喜んで貰って何よりだ。すると


 ゲシゲシッ! ドスドスッ!


 と、俺の足を遠慮無く蹴ってくる嫁たち。地味に痛いからやめい! 俺の向かいに座るフィーリアと香奈がずっと蹴ってくるのだ。


 アステルは痛みはないが鬱陶しい風魔法を放ってくるし。隣に座るハクは地味に脇腹をつねってくる。ミルアはあたふたとしているが、急にフィーリアたちと同じように蹴ってきた。ミルカに入れ替わったな?


「や、やめなさい、みんな。みんなにもちゃんと作るから、な?」


 俺がそう言うと、ようやく蹴るのを止めてくれる嫁たち。全く。それから、俺は黙々とアクセサリーを作っていると、外を見ていた香奈たちが声を上げる。気が付けば、最後の壁を超えていたようだ。最後の壁を超えた先にあったのは


「……なんだこれ」


 今までの光景からは予想が出来ないほどの、煌びやかな世界だった。これは貧富の差が酷すぎるだろ。なんだよこれは。


 俺たちが転移した1番外側は、とても酷かった。壁に近い方は、侵入が時折あるせいか廃墟しか無く、内側の壁に近づくにつれてようやく住んでいる人がいたぐらいだ。


 中間のところは、外側に比べれば、まだ活気があったが、それでも、家族全員が働かなければ、食べていくのもやっとといったところだろう。


 それなのに、この中央はなんだ。この中央だけまるで切り離された別の世界のようだ。明らかに食べ過ぎで太った恰幅のいい男性に、煌びやかなドレスを着てこれでもかと宝石をつけている貴婦人。


 全員がそうな訳ではないが、殆どのものが、かなり良い格好をしている。俺たちは訳もわからずにアルベリーを見ると、アルベリーも悔しそうに顔を歪める。


「……コクシたちは突然、壁の中に現れる事はないんです」


「それは昨日聞いたが、それがこの光景に何か関係あるのか?」


「別の言い方をしたら、この最後の壁から出なければ、一生見ないでいる人もいるそうです。それにこの中央に住めるのは、この国の貴族たちです。彼らは基本壁から出ようとしません。だから、外で起きている事は自分たちには関係無いと思っているのです」


 ……そんなふざけた話があるかよ。自分たちの民が犠牲になっているのに、自分たちは関係無いだと? ふざけやがって。


「もちろん、全員が全員ではありません。私のように兵士たちと戦ってくれる貴族もいます。少数ながらそういう人たちがいるおかげで、予算の中に軍費があるのですから」


 逆に言えば、アルベリーも含めて、そういう人たちが消えれば、少ないお金を軍費に回さなくても良いという考えを持つ馬鹿もいるはずだ。この国はもう駄目だろ。今の王のままじゃあ。


 ……最悪、国事情に首を突っ込むかもしれないな。はぁ、そこまで関わる気は無かったけど、こんなにも酷いと、そうも言ってられないな。

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