後日談.新婚旅行?編 転移した先の事情
「アレンとエレネは寝てしまったか」
「ええ。2人とも私たちの緊張感が伝わったみたいで、疲れちゃったみたい」
俺はプリシアとクロナに抱かれる2人の頭を撫でる。2人には可哀想な事をしてしまったな。2人とも結構楽しみにしていたし。戻れたらどこかに遊びに連れて行ってあげないと。
「……すみません。私が願ったばかりに」
そんな俺たちの光景を見ていた青髪の女性が、申し訳なさそうに謝ってくる。
「ああ、すまない。別にあなたのせいじゃ無いよ。この世界に俺たちを転移させたのは、女神クリーナなのだから」
俺がそう言っても、青髪の女性は顔を俯かせてしまう。どうしたものかと考えていると
「姫! ご無事ですか!!」
と、年齢は同じぐらいだろうか、鎧を纏った茶髪の男が教会へと入って来た。後ろには部下らしき兵士も数人連れて。
ただ、部下含めて、兵士たちは全てが傷まみれだった。あの化け物どもと戦ったのだろう。ところどころから血を流していて、痛々しい。
「レジルト、無事だったのね。良かったわ」
「姫もご無事で何よりです。それより、早く王城へ戻りましょう。国王陛下にも伝えなければ!」
「……あの人が話を聞くわけないじゃ無いの。もう諦めて、馬鹿みたいに浪費しているだけなのに」
……先ほどからの話を聞いていると、この青髪の女性はお偉いところの娘なのか? さっきから聞こえてくる中に聞き逃さない言葉がちらほらと。
「それに、彼らにも話をしなければいけないし」
青髪の女性はそう言って俺たちの方を見てくる。それにつられて兵士たちも。
「……彼らは住民……では無いですね。こんな狭い壁の中で住んでいると、ここに住む人の顔は全員知っています。だけど、彼らの顔は初めて見る……お前たちは一体何者だ!?」
レジルトと呼ばれた男は、俺たちを睨み剣に手をかける。それにつられて部下たちも直ぐにでも武器を抜けるようにする。
それを見たアレクシアたちは身構えるが、俺はそのままの状態で立つ。なぜなら
「やめなさい、レジルト。剣から手を離しなさい!」
青髪の女性が止めてくれるからだ。レジルトは俺たちと青髪の女性を交互に見るが、青髪の女性に押されて剣から手を離す。
その光景を見た青髪の女性は、俺たちの方を振り返り頭を下げてくる。
「危ないところを助けて頂き有難うございました。それから自己紹介が遅れて申し訳御座いません。私の名前は、アルベルティーヌ・ジャパウォーネと申します。私はこの国で第3王女になります。私の事はアルベリーとお呼び下さい、使徒様」
なんか懐かしい呼び方されたぞ今。昔は七魔将たちが俺の事を使徒なんか呼んでいたな。それにこの国の王女だったか。
「頭を上げて欲しい。俺も助けられると思ったから助けたまでだ。だから気にする事は無い。俺の名前は言ったかもしれないが、レイヴェルト・ランウォーカーと言う。気軽にレイと呼んでくれ。それから」
俺は自分の身内を紹介していく。彼女たちが全員嫁だと伝えると、物凄く普通の反応で、異世界から来た事を伝えると、物凄く驚かれた。
それから、この世界の事について教えてもらった。この世界の名前はアメリシアというらしい。そして、この世界の極東にある国がこのジャパウォーネ王国。今俺たちがいる壁に囲まれた街だ。
他の大陸にも国があるらしいが、行った事は無いという。理由は外で暴れる異形の化け物たちのせいだ。奴らの名前は、コクシと言うらしい。安易だが黒い化物で、死をもたらすからだそうだ。
奴らには様々な種類がいて、基本は今までいた動物をベースとしているが、偶に突然変異で色々と混ざった奴もいたりするらしい。そいつらは普通の奴らに比べて、段違いに強いのだと。
こいつらは、ほんの110年ほど前に突然現れたそうだ。理由はわかっていないらしい。突然、街中に現れて人々を襲い始めたようだ。
当然抵抗するが、普通の魔法や武器では弾かれるほどの硬さに、何より圧倒的な数。多い時では万ぐらいいるらしい。そのせいで、人は減る一方で今確認できるのは、この壁の中にいる人数のみだと言う。
海を渡れば、いるらしいのだが、渡れる船を作る技術もなく、人1人が空を飛んでいける距離も限られている。この世界に元々いた生き物たちも数を減らしているそうだ。
……前世のゲームに似たような話があったな。確か、神を喰らうゲームだっけ。もうかなり昔だからうろ覚えだが。あれは確かヘリとかがあったから行き来できたんだっけ。本当に忘れた。
「だから、私たちは極東で最後の人族となります。人数は50万人ほど。外周に30万人ほど、中間に15万人ほど、そして真奥に5万ほどの人が住んでいます。昔はもっと多かったそうですが、私の知る限りでこの辺りで減り続けています」
それに対して、コクシたちは20万ぐらいはいると思われるらしい。実際にはそれ以上、その上、突然変異もいるだろうから、この国はかなり危険らしい。
「……そのおかげで私の家族は父と馬鹿な兄を除いてみんな死んでしまいました」
アルベリーは、それだけ言うと黙ってしまう。悲しい事を話させてしまったな。だけど、この国の事を知れたのは良かった。さて、これからどうするか。
◇◇◇
「失敗しただと? ちっ、役立たずめ。せっかく話せるほどの知能を与えてやったというのに。まあ良い。あの国ももう風前の灯火だろう。
各大陸に俺と同じようにシェイド様に転生してもらった奴らがいるらしいが、どこかが終われば知らせが来るはずだ。来ないという事はまだどこも絶滅させていないのか。
クックック、次こそは落としてやる!」




