28.更衣室で☆
俺は今更衣室にいる。理由は正午から行われる試合のためだ。試合と言っても100人ほどの兵士対8歳の子供という普通ではあり得ない構図なんだけど。
「はあ〜」
俺は今自己嫌悪に陥っている。理由はジークを殴ったことだ。ジークを殴ってから少しの間はスッキリとしていたが、我に帰ると少しやり過ぎたと思ってしまう。
確かに俺の意見を聞かずに勝手に決めていったジークが悪いと思う部分もあるが、普通に考えれば俺はまだ8歳の子供だ。その年で親から将来についてあれこれ相談されても確かに困ってしまう。それなら親に決めて貰った方が良いのだろう。そう考えるとジークの方が正しいと思ってしまう。
ジークはあの後気を失って医務室に運ばれていった。食堂の雰囲気は変な感じになってしまいそのまま解散となった。
……学園長は終始爆笑していたが。
俺はそのまま準備のために更衣室に案内され今に至る。
「やっぱり謝らなきゃな」
俺が1人で考えているとドアをノックする音が聞こえる。
「私、アレクシアだけど。レイ入っても良い?」
なんと、アレクシア様が来てくださった。
「あ、はい! 大丈夫です!」
そう答えると、アレクシア様が中に入ってくる。ヘレンさんも一緒のようだ。
「あ、レイ。気分はどう?」
「まあ、ぼちぼちといったところですね。取り敢えずやれるだけやるまでです」
「そう。まあレイだからそんなに心配はしてないんだけどね。あとさっき辺境伯が目を覚ましたわ。今治療を受けているところよ」
「そうですか。少しやり過ぎたと思ってたんですよ。これで少し安心しました」
そう言ったあとにアレクシア様が何か言いづらそうにしている。どうしたのだろう?
「レイ。あの辺境伯が言っていた称号ってなんなの? 大陸の争いに巻き込まれるって」
ああ、そのことか。そういえばアレクシア様とヘレンさんには話していないって言っていたな。
「なら俺のステータスを見てください」
そう言いステータスを見せる。
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レイヴェルト・ランウォーカー 8歳 男 レベルー
職業:生徒(卒業)
体力:1740
魔力:2470
筋力:1560
敏捷:2040
物耐:1020
魔耐:910
称号:女神アステルの観察対象 限界なき者 困難に見舞われし者 天才魔法師 雷精霊に愛されし者 守り手 大行進を乗り越えし者 ハーレム製造機(予備軍)
スキル:槍術レベル5 剣術レベル3 雷魔法レベル6 風魔法レベル5 水魔法レベル3 火魔法レベル2 土魔法レベル2 光魔法レベル3 闇魔法レベル2 生活魔法レベル3 頑強レベル5 身体強化レベル5 気配察知レベル4 魔力探知レベル3 礼儀作法レベル4 言語(大陸語)レベルー
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前の大行進ほどではないがステータスもスキルレベルも上がっているな。
……あってはいけないものがあるぞ、おい。
このステータスを見たアレクシア様とヘレンさんは口をあんぐりとして驚いていた。2人とも、綺麗な顔が台無しですよ。
「あ、ありえません。まだこの歳でこの数値とスキルの数は。数値だけでも既に隊長クラスです。しかも限界がないなんて……」
「それで辺境伯が言っていたのはこの『困難に見舞われし者』ね……確かにこの称号たちを見ると、辺境伯がそう考えるのは不思議ではないわね。まさに今後のために備えなさいって女神アステルが言っているようなものよ」
「すみません、隠していて。称号のこととかがあるので易々と他人に話すことができなくて。アレクシア様」
この事は確認しておかないと
「ん? 何よ?」
「この称号を見た上で確認します。本当に俺と一緒になるおつもりですか? 父上が言った通りこれから俺は、沢山のことに巻き込まれるでしょう。死ぬ思いや痛い思いもするでしょう。それでも一緒になりますか? 今ならまだ間に合います」
俺はアレクシア様をジッと見る。するとアレクシア様はニヤッと笑い
「ふん、見くびられたものね! 私がこの程度で怖気付くとでも思っているの。私はもうあなたと生きていくことを決めたの! この程度の困難で諦めてなるものですか! レイ。あなたが嫌と言っても付いていきますからね! 私の旦那様」
そう言いチュ! と額にキスをしてくれるアレクシア様。
はは。甘く見ていたのは俺の方か。これは俺も腹をくくらないとな。
「わかりました。これからよろしくお願いします、アレクシア」
そう言うとアレクシアはみるみると顔が赤くなっていく。
「ちょ、ちょっと、急に呼び捨てにされると恥ずかしいじゃない。まだ心の準備というものが……」
照れた顔も可愛い。とその隣で
「れ、レイ君私のことも頼って下さいね。戦う事は出来ませんが調べ物などをするのは得意ですから!」
「はい! ありがとうございます、ヘレンさん!」
俺がお礼を言うとヘレンさんは顔を赤くしてそっぽを向いてしまった。どうしたのだろう。
「ヘレン。あなたやっぱり……」
「な、何でしょうか、アレクシア様」
2人にしかわからないものがあるのだろう。
そんなことを考えていたらドアのノックする音が聞こえた。
「レイヴェルト様。準備が出来ましたのでお越し下さい」
おっと、もうそんな時間か。
「わかりました。すぐ向かいます」
「レイ」
「レイ君」
「それじゃあ、アレクシア、ヘレンさん。行ってきます」
それじゃあ行きますか!
よろしくお願いします!




