27.今後について
「こ、これはお久しぶりです。シックザール学園長」
ジークは汗を滝のように流しブルブルと震えている。こんな綺麗な人がそんなにも恐ろしいのか。確かに物凄い技量を持っているのはわかるが。
見た目は耳がとんがっており、金髪のストレートロングに翡翠色の目。エルフのようだがかなり珍しい。エルフは基本魔法を得意とする種族だ。その中で剣を使うとは。
「久しぶりだねぇ。ジークの坊や。私があなたを怒らなければいけなかったのは、あなたが馬鹿みたいなことをするからじゃなかったかしらねぇ。違うかい?」
「い、いえ。おっしゃる通りで」
「なのに私のこと鬼ババアとは。いい度胸しているじゃないか!」
ジークはますますブルブルとしている。凄いなこの人。
「まあ、そのことは後で話そうか。それよりレイモンド。昨日送られてきた手紙に書いてあった子というのはこの子かい?」
「ええ、その子が辺境伯の息子でアレクシアを倒したレイヴェルト・ランウォーカーです」
えっ? 学園長が王様を呼び捨てにしている?
「私は王族の剣術指南役もやっているのさ。だからレイモンドのことは赤ん坊でおねしょをしていたときから知っているのさ。まあ、最近はアレクシアしか教えてないけどね」
そう言いカラカラと笑う学園長。エルフは長寿と聞くけど。
「初めまして。ランウォーカー辺境伯の息子でレイヴェルト・ランウォーカーと申します。シックザール学園長」
「ジークよりは礼儀正しいようだね。私の名前はシルフィード・シックザールよ。好きなように呼んでちょうだい」
手を差し出してくる学園長。俺も立ち上がり手を差し出して握手をすると
「えっ?」
上下が逆になった。このままじゃあ、頭から落ちる。俺は即座に身体強化を発動。なんとか体をひねり地面で受け身を取る。
「ぐぅ」
「ほう。見所はあるようだね。流石はアレクシアを倒しただけあるよ」
「一体何を?」
「なに。私なりの挨拶さ。今度こそよろしく」
そう言い立たせてくれる。今度は大丈夫のようだ。
「では、学園長も来たことだし昨日のことについて話そう。宰相」
「はい。昨日のアレクシア王女に決闘を申し込んだ学生たちは全員伯爵家の子息たちでした。今は気を失って自宅で謹慎ということにしています。魔剣について伯爵たちに聞いても、伯爵たちはわからないとのことでした。目が覚めたら子息たちには、話を聞かないといけないでしょう。処罰については伯爵家を男爵家まで降家させ、子息たちは犯罪奴隷として扱われるでしょう」
……仕方ないな。どんな思いであの魔剣を使ったかわからないが、一歩間違えれば王女が死んでいたことを考えれば。生きているだけマシというものか。犯罪奴隷が死ぬよりマシなことであるなら……
「わかった。学園長。校内でそういった武器を持った生徒はいたりするのですか?」
「私も昨日知ったばかりだからわからないねぇ。ただ親が知らないなら、子供たちが何処からか入手しているということだから、手に入れれるとすれば校内か、登下校の途中か」
「そうですね。こちらでも商人の出入りを調べてみます。学園内の方はよろしくお願いします」
「わかったよ。それで手紙に書いてあった話だが?」
「はい。それについても今から本人に話そうと思います」
そう言い俺を見てくる王様。な、なんだ?
「辺境伯。例の話を」
「わかりました。レイ。お前に大事な話がある」
「大事な話ですか?」
「ああ、お前にはこれから学園を卒業するまで王都にいてもらうことになる」
「なっ! ……それはアレクシア様との話があるからでしょうか?」
「それもあるが、それだけじゃない。元々はこの話をお前にするつもりだったんだ。エリスともすでに話している」
「理由をお聞きしてもいいですか?」
「もちろんだ。理由はお前の称号にある。ここにいるアレクシア王女とヘレン嬢以外にはすでに話している。勝手に話して悪かったなレイ」
「いえ、それは良いのですが」
「俺もエリスもお前のステータスを見たときから、辺境伯という小さなところに収まるような器ではないと思っている。これから起きるであろう大陸の争いに、確実にお前も巻き込まれるだろう。そのときお前が生き残るためには王都で学園長に修行をしてもらったほうがいいと私とエリスは判断した。学園長も了承済みだ」
「ああ、私は槍は専門外だが相手にはなるだろう。よろしく頼むよ」
そう言い微笑んでくれる学園長。俺は
「……わかりました。その前に1つ良いでしょうか父上?」
「ああ、なんだ?」
「……歯を食いしばれ、クソ親父!」
「は?」
俺は身体強化を使い隣にいるジーク目掛けて拳を振り抜く。そして
ドゴッン!
「ぐはぁ!」
殴り飛ばされるジーク。
周りは唖然とし、学園長だけが大声で笑っている。
「はははははは! 子供に殴り飛ばされている!」
……流石に笑いすぎでしょう。
そして俺は……
「ふぅ! スッキリした!」
今まで溜まっていた鬱憤を晴らしてスッキリしていた。
いけそうだったのでもう1話投稿します!




