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26.王国最強

「……て、……い」


 誰かが俺を呼ぶ声が聞こえる。クロナか? もう少し寝かせてほしいな。


「おき……、レイ」


 うん? クロナじゃない? クロナより落ち着いた雰囲気のある声色だ。


「起きて、レイ。早く起きないと食べちゃうわよ?」


 食べる? 何をだ? 俺は気になって目を開けるとそこには


「うーーーーーん」


 俺にキスを迫るアレクシア王女の顔があった。


「き、きゃああああ!」


 俺は何とも情けない声をあげて勢いよく転がった。そして


「痛!」


 ベッドから落ちた。


「もう、そんなに逃げることないじゃない。朝のお目覚めのキスなのに」


 と拗ねた口調のアレクシア王女。


「な、なんで俺の部屋にアレクシア王女殿下がいるんですか!」


「何言っているのよ。ここは私の部屋よ。それより何よ! その呼び方は! アレクシアでいいって言ったでしょ! 次言ったらパイ息の刑だからね。孤児院の子たちに嫌われるくらい凄いんだから!」


 そう言い胸を持ち上げるアレクシア王女。すげ〜〜形がフニョンフニョンと変わる。


「わ、わかりました。ではアレクシア様と呼ばさせていただきます」


「まっ、初めはそれでいいわ。一緒に過ごしたら嫌でも慣れるでしょう」


 なんだ? 一緒に過ごすって?


「あの、それでお。私は何故アレクシア様の部屋で寝ていたのでしょうか?」


「なんかよそよそしいわね。一人称も「俺」で良いわよ。小さい子が背伸びしている感じがして可愛いし! レイは学生の男たちと決闘した後、魔力欠乏で気を失ったのよ。あの後は事態を聞きつけたお父様たちも来て、事情を話したりしていて、かなり遅くなったから辺境伯にも来賓室で休んでもらっているわ。今日も来る予定だったんでしょ? ちょうど良かったじゃない」


「……なんで俺はこの部屋なんでしょうか?」


「そんなの私が頼んだからに決まってるじゃない! レイが寝ている間にあーんな事や、こーんな事を……」


 されたのか! 齢8歳で大人の階段を登ってしまったのか!


「しようと思ったけど、ヘレンに止められて出来なかったわ」


 そう言い残念そうにするアレクシア王女。……なんだ? 助かった! と思う俺と、残念だ、と思う俺がいる……


「うん? ヘレンさんに止められたってことは」


「あの子はそっちのソファで寝ているわよ。一緒に寝よって言ったけど頑なに拒むのよね」


 俺はソファを見ると確かにヘレンさんが寝ていた。


「ふふふ、ねこたん可愛いです〜」


 ……物凄く幸せそうな顔をしている。猫好きなのかな?


「ヘレンもレイが気を失ったことにかなり焦っていてね。「私が止めなかったばかりに!」とか、「もし何あったら私が責任を取ります!」って辺境伯に迫るぐらい気が動転してたのよ。辺境伯も苦笑いしていたわ」


 そう言い笑うアレクシア王女。ヘレンさんは俺の実力を知らなかったから仕方がないか。


「ご迷惑おかけしてすみません」


「良いのよ。元々は私が蒔いた種だし。こちらこそごめんね。でも黒雷纏うレイもカッコ良かったなー!」


 物凄い笑顔で見てくる。物凄く綺麗なんだけど何だか怖く感じてしまうのは何故だろう?


 そんな事を話していると


「うぅ〜ん。騒々しいですね、アレクシア様」


 とヘレンさんが起きた。


「あら、おはようヘレン。よく眠れた?」


「おかげさまでよく寝れました。アレクシア様と一緒に寝ると抱きま、く、ら……」


 そう言う途中で俺を見ると固まってしまった。どうした?


「な、な、な、な、何故レイ君が部屋にいるのですか!」


「何言っているのよ、ヘレン。元々はレイを看病するために一緒に泊まったんじゃない」


「……あっ。そうでしたね。すみませんレイ君。顔を見て早々叫び声をあげて」


 顔を赤く染めるヘレンさん。こういう人が照れる顔ってなんか新鮮だな。もう少し見たくなったので近寄って覗き込む。


「大丈夫ですよヘレンさん。俺が女性の部屋にいるのが悪いんですから」


 ヘレンさんを見ようとすると、顔を逸らされる。何故? 見ようとすると、逸らされる。……目を合わせてくれない。チラチラとこちらを見ては顔を赤くはするのだが。何故だ?


「ははーん! さてはヘレンあなた」


「な、何ですかアレクシア様」


「後でお話をしないといけませんわね」


 2人にはわかる何かがあるのだろう。とそこに扉をノックする音が聞こえる。


「アレクシア様。朝食の用意が整いました」


「わかったわ。すぐに行く。さあ、レイもヘレンも着替えて行きましょう。辺境伯もいると思うわ」


 そう言い服を脱がそうとしてくるアレクシア様。俺はもう諦めた。


 着替え終えてようやく食堂に着く俺たち。何でも食事を終えて直ぐに会議をする為の部屋らしい。


 中にはすでに昨日のメンバーが揃っていた。一番奥に王様。その隣におっとりとした貴婦人が座る。王妃なのだろうか? そこから順に宰相、ゲイン近衛団長、マーリン魔法師団長など昨日の決闘を見ていたメンバーだ。俺はジークの隣へ行く。


「おお、おはようアレクシア。ヘレンもご苦労であった。そしてよく娘を守ってくれたレイ」


「いえ、私の為すべきことを為したまでです」


 おい、そこ吹くなジーク。俺からじゃあ丸見えだぞ。


「そのことについては食事の後にしよう。まずは座ってくれ」


 そう言われたので俺はジークの隣にかける。アレクシア王女は王様達の近くにかけ、ヘレンさんは宰相の近くにかける。


「おはようございます、お父様」


「ああ、おはようヘレン。何か嬉しそうだな。 何かあったのか?」


「いえ、大丈夫ですよ」


 そう言い微笑むヘレンさん。えっ? ヘレンさんって宰相の娘だったの?


 そんな新事実を聞きながらも食事は進んでいく。みんな食事が済みそうな段階で侍女が入ってくる。


「陛下失礼します。シックザール様がお見えになりました」


「おお、そうか。通してくれ」


 そう言われ下がる侍女。誰だろう? 俺は気になってジークの方を見る。すると


「な! 学園長が来られるのか!」


 と汗でびっしょりなジークがいた。そんなに慌ててどうしたんだ?


「どうしたのです、父上?」


「レイ。今から来る人に絶対逆らうなよ。この王都にある学園、カルディア学園の学園長にしてナノール王国で唯一の「剣聖」の称号を持つお方だ。王国最強と言われている。あの鬼ババア、何故今日きた!」


 と毒を吐くジーク。するととても綺麗な声が聞こえる。


「誰が鬼ババアだって! ジークの坊や。少し見ないうちに偉そうになって」


 と入ってきたのは背中に巨大な剣を背負った物凄く若い女性だった。

よろしくお願いします!

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