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184.帝都

「やっぱり賑やかだなぁ〜」


 俺は揺られる馬車の中から覗く景色に、そんな事を思う。そんな俺を見て、前に座るアレクシアはクスクスと笑ってくる。……なんだよ?


「それはそうよ。大陸で一番人口が多い街と言われているのだから」


 大陸で一番多いねぇ。俺たちは現在、王領の屋敷を離れて、帝都グラハルムにやって来ている。帝都グラハルムは今アレクシアが言った通り、大陸で一番人が集まっている大都市だ。


 人口は50万人ほど。レガリア帝国の10分の1もの人数が、この帝都に住んでいる。


 そんなところに何故俺たちがいるかと言うと、2週間ほど前に王領まで、レガリア帝国の使者がやって来たからだ。


 以前に王様からレガリア帝国が友好のためのパーティーを開くと言う話を聞いていたが、実際に使者がやって来て案内状を手渡されたのだ。


 メリア将軍などは罠だと止めて来たが、もう行く事で話は決まっていたので、みんなは渋々ながら従ってくれた。


 帝都に来たのは、俺とアレクシア。俺とアレクシアの侍女としてクロナ。護衛としてメリア将軍にダグリス、バートン。アレクシアの護衛としてエレアとシズクが付いて来て、あとメリア将軍の部下であるナノール兵が2千ほどついて来てくれた。


 残りの婚約者たちは王領の屋敷でお留守番だ。友好のためだと言っても、俺たちを恨んでいる者がいないとは限らない。そんな危ない場所にみんなを連れて来るわけにはいかないからな。


 代官代理としてヘレンが残って、メリア将軍の副将が他の兵士たちをまとめて王領に残ってくれている。守りに関してはキャロがいるし、万が一戦闘になったら、フェリスとエアリスもいる。ケイトたちも残っているので大丈夫だろう。


「しかし、戦争の後とは思えないほど活気があるな。今まで通って来た村とは大違いだ」


 帝都に来る途中の村は、どの村も活気が無く、元気が無かった。その上、村にいるのは女子供に老人ばかり。若い男性が未だにいなかったのだ。


 話を聞けば、戦争が終わったのに徴兵に出た男の人たちは、まだ戻ってこないそうだ。手紙が送られて来るので亡くなってはないそうだが。


「まだ、何か企んでいるとか?」


「それはわからないけど、次に攻めて来ようとしたら、他の国が黙ってないわよ。そういう事で終戦に決着がついたんだから」


 いくら考えても、目的が思いつかないな。2人でうんうんと唸っていると、ピタッと隣に暖かいものが引っ付く感触がある。何かと思って見てみると、クロナが引っ付いていた。


「どうした、クロナ?」


 何故かぷくっと頰を膨らませているクロナの頰を突きながら、尋ねてみると


「……2人だけでお話しして寂しいです!」


 と言って来る。俺とアレクシアは顔を見合わせると、笑ってしまった。可愛いやつだなぁ。クロナを抱き上げて俺の膝の上に座らせる。クロナは慌てるが、これなら話しやすいだろう。


「悪かったなクロナ。これで話しやすいだろう。そうだクロナ。帝都でみんなのお土産を買おうと思っているんだが、何が良いと思う?」


 それから俺たちは皇城に着くまで、3人でみんなに良さそうなお土産を考えるのだった。


 ◇◇◇


 3人でお土産何が良いかと盛り上がっていると、外から扉が叩かれる。窓を開けると、メリア将軍が馬車に馬を寄せていた。


「どうしたの?」


「はい。今帝都の皇城に着きましたので、そろそろご準備をお願い致します」


「わかったわ」


 俺たちは馬車を降りる準備をする。準備と言っても特にする事は無いのだが。荷物はアイテムリングの中だし。


「クロナ。基本は俺たちから離れるなよ。謁見などで離れる事になればメリア将軍など、絶対誰かの側にいるんだ。絶対に1人になるなよ?」


「わかりました」


 クロナは神妙に頷いてくれる。一応帝国側も友好をうたっているので何もしてこないとは思うが、万が一が起こらないためだ。他のみんなにも同じ事は伝えてある。


 そして揺れていた馬車が止まる。外から扉が開けられ、アレクシアから順に降りていく。馬車を降りて周りを見るとレガリア兵に囲まれていた。その中から1人ひょろりとした老人が出て来る。


「よくぞ参られたな。私はこの国の宰相であるブルックリン・ジャンマッカーサーだ」


「ええ、私はアレクシア・ナノールよ。滞在の間よろしく頼むわね」


 大方、少しで帝国側が有利になるようにしたかったのだろう。だからこれだけの人数の兵士に俺たちを囲ませて、宰相が尊大に話して来る。だけど、残念ながらアレクシアもこの程度は慣れているからな。余裕を持って返していた。


「……小娘が。では参られよ」


 苦々しそうな顔をしながら皇城へと入っていく。思惑通りいかなくて腹立たしいと言ったところか。宰相がそんな簡単に感情を表に出して良いのかな? よくわからんが。


 しかし、これから俺たちは虎の口に入るわけだ。この中までは兵士は付いてこられない。何が起きるかわからないから心してかからないと。ただ、俺の仲間に手を出すようなら覚悟はしてもらうがな。


「3人とも頼んだぞ」


『了解なの、マスター!』


『任せてちょうだい、主様』


 何かあった時のために精霊2人を俺とアレクシア、護衛たちに付ける。精霊たちは遠くでも話し合えるらしいので何かあった時のための連絡役だ。ライトには王領に残ってもらっている。


 これで準備は完了。良し、行くか。

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