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182.見回り

「お待ちしておりましたアレクシア様。それからここまでの送迎ありがとうございました、ファーガス王子殿下」


 俺たちが入った街の全領主が使っていた屋敷に辿り着くと、屋敷の中でメリア将軍が先頭で、後ろに兵士たちを並ばせて敬礼していた。なかなか壮観だな。


「ええ、ありがとうねメリア将軍。私たちの代わりに治安維持を担ってくれて」


「い、いえ! 自分でよければいくらでもお手伝いいたします!」


 ……なんか顔を赤くしてハァハァ言い出したぞこの人。戦争の時に一度話した事はあるけど、あの時はこんな感じではなかったのだが。しばらく様子見だな。


「おう。俺たちは今日1日ここで休んで、明日には帰るわ。どこか泊まれる場所はあるか?」


「はい、もちろんご用意いたしています。おい、ファーガス王子殿下をご案内しろ」


「はっ!」


 メリア将軍に呼ばれた兵士たちにファーガス義兄上たちは屋敷の中へ案内される。兵士たちは別館みたいなところへ。しかし、この屋敷でかいな。辺境伯の屋敷よりでかいぞ。前領主が早々に逃げたせいか争った形跡も無いし。


「それではアレクシア様たちもご案内いたします」


 そう言いメリア将軍は屋敷へと向かって行くのでその後を付いて行く。それぞれ部屋に案内されてそこに荷物を置く。荷物はアイテムリングを持っている俺かアレクシアの中に入っている。男と女で分けている。


 その後は、代官であるアレクシアと俺がメリア将軍と話し合いをするために会議室に集まっている。他のみんなは屋敷内を確認しに行った。


 ラビさんはこの領地にある冒険者ギルドに行き、ローズさんはそれの付き添い兼空き地を探しに行った。


「とりあえずは領地の現状を教えてくれる?」


「はい。まずは元レガリア帝国貴族なのですが、殆どの者が降伏したのですが、レガリアとの国境付近の貴族は未だ抵抗をしています」


 ファーガス義兄上の話にあったやつだな。レガリアが助けに来てくれると考えているのだろうかってやつだ。


「人数はどのくらいなのですか?」


「あっ、レイ様、私に敬語は必要ありません。普通に話して下さい」


 普通の顔をしてそんな事を言ってくるメリア将軍。年上の人にタメ口って苦手だから敬語で話したけど、即却下されてしまった。まあ、仕方ない。


「わかった。それでどのくらいなんだ?」


「はい。貴族は領地を持っている者持っていない者が集まり含めて30人ほど。兵士は5千程になります」


 そんなにいるのか。でもメリア将軍が連れて来ているナノール兵は確か3万だったよな。それでも抑えられないのか?


「現在3万の軍を5つに分けておりまして、それぞれが東西南北分かれているので、集まるのにはどうしても時間がかかってしまうのです」


 それは仕方がないか。王領は結構な広さを持つからな。その全地域を回ろうと思ったらどうしても分けないといけないか。


「わかったわ。その貴族たちに使者を出しておいて。今ならまだ間に合うと」


 最後通告ってやつかな。確かに余り長引くと今落ち着いている貴族も反乱を犯しかねないし、これ以上抵抗するようなら早めに鎮圧しないとな。反乱を起こした貴族たちには痛い目を見てもらわなければならないが。


「そうだな。それから余裕が出来たら他の領地も見て周らないとな。人手が足りないから降伏した貴族は今はそのままにしているが、信用出来るかどうかは実際に会って見ないとわからないし、兵士を連れていけば抑止力になるだろう」


 俺の言葉にアレクシアもメリア将軍も頷いてくれる。まあ、それも全部レガリア帝国から帰って来てからになるんだよな。


 それからも色々と話はしたが、結局はレガリア帝国から帰って来なければ進められない話ばかりだったので、ある程度の確認が取れたのでそこで解散となった。


「レイ、この後はどうするの?」


「ん? この後か」


 余り考えてなかったな。時間的にはまだ昼過ぎといったところだろう。屋敷に篭っていても仕方がないし。


「ちょっと、街を見てくるよ」


「街を?」


「ああ。ここがどんなところかはわからないからな。見て見ないと」


 俺が笑顔でそう言うと、アレクシアはしょうがないわねと笑いながらも承諾してくれる。メリア将軍は1人では危ないので護衛をと言うが、お忍びで見て来たいので断った。それに1人じゃないしな。


『私たちがいるから大丈夫なの!」


 ああ、頼りにしてるよ。アレクシアが説得してくれた事でメリア将軍も下がってくれたので、俺は1人で屋敷を出る。


 しかし、本当に人が少ないよな。全くいないわけじゃないのだが、外を歩いている人を殆ど見かけない。


「とりあえず見て回るか」


「ガウッ!」


 ……ガウッ? 俺は声のした方を見ると背中にエクラを乗せたクロンディーネが俺の方に歩いて来た。……お前、エクラの足にされているのか?


「エクラたちも付いてくるか?」


「キュウ!」


「ガウッ!」


 一応聞いてみると、行く気満々な声を出すエクラとクロンディーネ。エクラを乗せても余裕なほどクロンディーネは大きくなったな。体長60センチぐらいか。そのクロンディーネの背中の上でエクラはぐてぇ〜としている。


 そんな2体を連れて、街の中を歩き出す。全ての店が閉まっているわけじゃ無いんだな。屋台とかはやっていたりする。人は入っていないが。


「キュルル」


「ガウ? ガウガルル」


「キュキュ、キュルルン」


「ガウウッガウル!」


 ……エクラとクロンディーネにしかわからない会話をして何故か屋台の方へ向かう2体。屋台の商品は串焼きか。


「食べたいのか?」


「キュル!」


「ガルゥ!」


 2体は物欲しそうに俺を見てくる。仕方ないな。


「おっちゃん。串焼き3本くれ」


「おっ! 久しぶりの客じゃねえか。おう、待ってろ!」


 屋台のおっちゃんは嬉しそうに串焼きを焼いていく。エクラもクロンディーネも良い匂いがして来て、うずうずしている。


「ほれ出来たぞ!」


 屋台のおっちゃんから串焼きを貰って、エクラたちに渡そうとすると、どこからか視線を感じる。その視線の方を見ると、家と家の間の路地から少し汚れている子供たちが、じっと俺の方を見ていた。

何とかFG○は7章の7節までいけました。今日の夜に頑張れば何とか……

明日も休まず投稿出来ると思います。


それから気がつけばこの作品を投稿し始めて12月19日で半年が経ちました。

今後とも投稿していきますのでよろしくお願いします!

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