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177.へんな視線

「……なんだ、この視線は?」


 竜化したレビンさんの背に乗って王都に帰って来た俺たち。レビンさんは自分で飛ばずにレビンさんの背中に乗ったアニマさんに、若干怒りながらも飛んでくれて戻って来た。


 そして王都に入る際に門兵にギルドカードを見せて確認してもらっていたのだが、みんながみんなものすごく見て来るのだ。俺は理由がわからずに尋ねても答えてくれない。


 王都の中に入ってもみんなが俺を見て来る。前にパレードしたせいかな? とも思ったが、みんなの視線からしてどうやら違うようだ。


 なんというか、パレードの時は尊敬や羨望といった明るい眼差しだったのだが、今は憐れみというか可哀想といったような雰囲気がある。俺が不思議に思っているのが不思議なのかアニマさんが


「お主わからぬのか?」


 と聞いて来る。俺は頷くとアニマさんは自分の右目を指差している。アニマさんの右目に何かあるのかと思い見てみると、アニマさんに頭を叩かれた。


「馬鹿者。わしじゃなくておぬしのじゃ。レビンとの戦いで怪我しておるじゃろ! それがみな気になるのじゃ」


 ……あっ! 俺は咄嗟に右目側を手で押さえる。すっかりと忘れていた。右半身レビンさんとの戦いで大怪我したけど、マキシマムヒーリング使ったからほとんど痛みが引いたため忘れていた。右目にも魔法をかけたが、魔力が少なかったので応急処置しか出来なかったのだ。


「アニマさん。右目のところどうなっています」


「傷は塞がっておるが、火傷の跡が残っておるの。それが痛々しいからみなが見るのじゃ」


 ……そういう事か。中途半端に治したからな。右目もほとんど見えてなかったから目を瞑っているし。しかしこれはまずい事になった。みんなに何言われるか。みんなも怪我する事はわかってはくれているが、したらしたで物凄く心配されるからなぁ。


 少し不安になりながらも家に帰って来た。中にはヒルデさんたちが帰って来るのを待っていてくれているはずだけど……は、入り辛い。後ろで首を傾けるアニマさん。レビンさんはそっぽを向いている。


 よし、俺は覚悟を決めて家へと入る。扉を勢い良く開けて大きい声でただいま〜と言う。すると中から歩いて来る音が聞こえて1番初めにやって来たのは


「お帰りなさい、レイ……さ……ん……」


 プリシアだった。初めはニコニコしながら出迎えてくれたのだが、俺の顔を見て少しずつ顔色を変えていく。赤みがかかった色から青を通り越して白くなった顔色へと。そして


「きゅー」


 気を失った!? 俺はすぐにプリシアの側によりプリシアを抱き締める。あ、危ねぇ。まさか気を失うなんて。そんなにこの傷が気持ち悪かったのか? それが口に出ていたのか再び頭をパシンとアニマさんに叩かれる。


「そやつはおぬしを好いている女子なのじゃろ? 愛しの人がそんな怪我すれば誰でもそうなるわい」


 ……それもそうか。俺が婚約者の誰かが大怪我したと聞いたら冷静にいられないだろうからな。そしてその後に


「プリシア、帰って来るのが遅いわよ。まさか玄関でレイとイチャイチャしてるんじゃないでしょうね?」


 と言いながらエアリスがやって来る。後ろにはキャロもいる。そして俺がいるのがわかると2人は笑顔を向けてくれるが、傷を見て気を失っているプリシアを見て


「レイ! どうしたのよその怪我!」


 2人は直ぐに側に寄って俺の顔を両手で掴んで見て来る。く、首が……。2人の慌てる声を聞きつけてみんながやって来る。そして俺の顔を見て阿鼻叫喚の渦。……どうしよ。


 ◇◇◇


「……」


「申し開きはあるかしら、あ・な・た?」


 笑顔だけど、物凄い威圧感を放っているヒルデさん。立って仁王立ちしている彼女の前では正座をするレビンさん。


 エクラは俺の右肩に乗って焼け爛れている右目の周りをペロペロと舐めて来る。「キュー……キュー……」と鳴きながら。エクラの舌がくすぐったい。


 右側ではアレクシアが水魔法で顔を治療してくれている。この家の中で俺以外で水魔法が使えるのはアレクシアだけだからな。


 今リビングにいるのは俺、エクラ、ヒルデさん、レビンさん、アニマさん、アレクシア、エアリス、フェリスとお茶の用意をしてくれている涙目のクロナだ。


 ヘレンとキャロは気を失ってしまったプリシアを2階の部屋に連れていってから看病してくれている。


 うーん、みんなに心配されるのは嬉しいのだが、少し過敏になり過ぎな気がする。レビンさんと戦えば怪我するのはわかっていた。俺もそれは覚悟していたのでレビンさんに対して恨むとかそう言う気持ちは全くない。


 逆にもっと強くならないと、と思ったくらいだ。その事をみんなに伝えるが、頭ではわかっているけど、気持ちはそうはなってくれないと言う。さっきアニマさんが言っていた好きな人が怪我したら〜って奴だな。


「そこまでにしておくのじゃ、ヒルデよ。レイもこう言うておるし、大事には至らなかったのじゃから」


「アニマ様。それはそうですが……」


「ううっ、ごめんなさいレイ。私のマキシマムヒーリングでも右目は……」


 それは仕方ないな。俺がかけてもほとんど視力は戻らなかったし。火傷の跡も残ってしまったようだ。その事を気にしてかアレクシアも涙目。


「気にするなよアレクシア。俺が防ぎきれなかっただけだからさ。ヒルデさんも。レビンさんには感謝はしていますが、憎むなんて事は無いんですから」


 俺がそう言うと、ヒルデさんは渋々ながらも下がってくれた。レビンさんは安堵した様子。


 俺はアイテムリングから手鏡を出して確認する。右側の火傷の爛れはどうしようもないな。眉の下あたりから頰まで火傷で黒くなっている。目は少し白くなっているな。目の中も火傷したのか。痛すぎてわからなかったよ。


 この目を見たらビビられてしまうな。閉じておこう。右腕も焼け爛れた跡が残っているが、治療したお陰かしっかりと動く。怪我前と変わらないほど。服を着ていればわからないので良いだろう。


「それよりレイよ。お主の槍を作ってくれる鍛冶屋はおるのか? 言っておくが属性王の牙なぞそこら辺の武器屋じゃ、削る事すら叶わんぞ?」


 俺が自分の怪我を確認していたらアニマさんがそんな事を言って来る。……それってかなりまずいのでは?


「なに、心配は要らん。シルフィーなら知っておるじゃろ。あやつの大剣はわしの牙で作ってあるからの」


 師匠の大剣ってアニマさんの牙で作っていたのか! 常に魔力を纏っていて、とんでもない切れ味の剣とは思っていたが。そこまで凄いものとは。


「ただ」


「ただ?」


「あれを作ったのは300年前の戦争の時じゃから、生きてはいないじゃろうが」


 ……まじっすか。

昨日ブックマークか1万超えました!

これもこの作品を読んで下さっているみなさんありがとうございます!

これからも投稿していきますのでよろしくお願いします!

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