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17.出発前に

 王様に会うのか〜とか、兄たちに会うのか〜とか色々な事を考えていたら王都に出発する日が来てしまった。


 王都はここから馬車で二週間ほどかかるらしい。さすがに遠いな。王都に行くと聞いた時のフィーリアとクロナはとても嬉しそうだったな。思わず頭を撫でてしまった。


 それとは反対にエアリスとは話せなかった。屋敷の中で出会っても避けられるし、先生との訓練中も見ているのだが、終わると去ってしまう。俺が何かしたかなと思い、先生に聞くと


「自分で判断できるようになるまで待っててあげてくれ」


 と言われてしまった。先生は事情を知っているみたいだが、俺には話してくれないようだ。本人が言いに来るまで待つしか無いか。


 俺は俺でこの一週間は訓練をしていた。理由は幾つかあるが、やっぱりレガリア帝国の話を聞いてしまったからには俺も他人事では済まないからな。というか、すでに巻き込まれているし。このところの訓練は、ヒカリンとの連携や雷魔法の練習に費やした。

 称号にあったように一つ上のレベルの魔法を使えた時はあまりの威力に驚いてしまった。ただ、魔力の消費が凄いのでそんなに連発して使うことが出来ないのだが。


 そして今。馬車が来るまで時間があったので、荷物の最終確認をしようと思い、部屋にこもっていた。部屋は俺が赤ちゃんの時から使っている部屋をそのまま俺の部屋にしてくれた。その部屋で準備していると部屋をノックする音が聞こえた。


 誰だろう? と思いながら返事をすると


「は、入るわよ」


 入ってきたのは、えらく緊張したエアリスだった。何処かそわそわした感じで落ち着きが無い。どうしたんだろうと思いながらエアリスを見ていると、


「この間は助けてくれてありがとう!」


 と、お礼を言ってきた。俺何かしたかなと思ったりもしたが、思いつくのは大行進の時しかないな。


「あの時は、レイがすぐに気を失っちゃうし、起きた後は街の復興とかで私もいなかったりしたし、長引けば長引くほどなんだか言いづらくなっちゃって今日まで来ちゃったんだけど、本当にありがとう!」


 そう言って頭を下げるエアリス。ふだんのクールなエアリスとは違ったエアリスの姿に俺は思わず頭を撫でてしまった。最近愛らしい姿を見ると頭を撫でてしまっているような気がする。今は身内でいいから問題は無いが、これからは注意しよう。でも可愛いから思わず撫でてしまう。


「気にすることは無いですよ、姉上。俺は俺のやりたい事をやっただけですし。それより怪我をさせてしまった方が申し訳ないですよ。俺が早く来ていればどうにかなったってわけじゃ無いけど、それでも間に合わなかったから」


「それこそ気にすること無いわよ。私の実力不足だった訳だし。それよりも命があっただけでもマシだわ」


 そう言って笑うエアリス。そのあとに急にソワソワしだした。どうしたんだろうか? お手洗いに行きたいんだろうか。


「そ、それで、まだレイにその、助けてもらったお、お礼とかしていないからしようと思うの!」


 なんだ、そんなことを考えていたのか。てっきりお手洗いに行きたいのかと思った。言わなくてよかった。


「そんな、別に大丈夫ですよ。先ほども言った通り俺のやりたいようにやっただけですから」


「それじゃあ私の気が済まないの! ダメ?」


 そんな潤んだ目で見られたら断れないじゃ無いか!


「いえ、ダメじゃ無いです!」


 思わず叫んでしまった。それを見たエアリスはクスクスと笑う。


「それは良かったわ。じゃあ目を瞑って」


 俺は言われた通り目を瞑った。そのあと待っていると俺の頬にとても柔らかいのが押し付けられた。なんだ? と思い目を開けると至近距離でエアリスの顔があった。そして俺は気づいた。エアリスに頬をキスされたのだと。


 俺から離れたエアリスは先ほど以上に顔を真っ赤にしていて、湯気が出そうなほど赤かった。


「そ、そ、それが、お、お礼だから! 別に深い意味は無いんだから!」


 そう言いながら猛ダッシュで部屋を出て行くエアリス。俺はその後ろ姿を見送ることしかできなかった。俺は先ほども感じた柔らかい余韻を感じていると気づいてしまった。頬とはいえキスされたのは前世を含めて初めてだと!


 そう思ってニヤニヤしていると、また扉をノックする音が聞こえた。それに返事をすると


「レイ様失礼します。あら、何かいいことがありましたか?」


 とクロエが入ってきて早々言われた。そんなに顔に出ていただろうか。


「まあ、色々とね。それよりクロエはどうしたんだい?」


「はい、出発前にジーク様がお話ししたいことがあるとレイ様をお呼びです」


 なら、すぐに行かないとな。


「わかった。今から行くよ。クロエはどうする?」


「私もそのままお供いたします」


 2人で部屋を出て書斎へ向かった。書斎の扉をノックし返事があったので中に入ると、ジークとエリスが座っていた。


「父上、お話ししたいことがあるとお聞きしたのですが」


「ああ、それはお前のステータスについてだ」


「俺のステータスですか?」


「ああ、今回の大行進の話をするにあたって、奇襲の話もしないといけない。その話をするには直接遭遇したレイに話してもらわないといけないが、誰が8歳の少年がBランクなオークジェネラルを倒したと考える? 認めてもらうためにはレイのステータスを王様に見てもらわないといけない。王様は聡明な方だか、他の貴族は違う。王様からステータスが漏れることは無いが、今回の奇襲で兵士たちや領民にはレイの戦う姿は見られているからな。そこから漏れると考えて間違い無いだろう」


 そう話すジーク。確かにあの時は周りの事を気にせず暴れてしまったからな。たくさんの人たちに見られてしまっているか。


「貴族の相手は俺たちがするから、レイは注意しておいてくれ」


「わかりました」


 これで話は終わりかと思ったら


「レイ、ここからが本題よ!」


 とエリスがものすごい笑顔で呼んできた。


「な、なんでしょう母上」


「今回の王都への用事の中に、第2王女の誕生会があるのよ。こういう王族の誕生会などは、辺境にいるということで参加できる時はジークも参加で、ほとんどはエリザたちに任せてるんだけど今回は、間に合いそうだから私たちも参加することになるわ。レイちゃんの社交界デビューね!」


 第2王女か。たしかエアリスとかと同い年だったか。


「そこでレイちゃんには好きな人を選んでもらいます!」


 ……何言っているんだこの人は。


「まあ、そこまで急な話じゃない。ただ気に入ったとか、いいなとか思った女の子に話しかければいいんだ。うちは辺境伯だから話しかけて無視されることは無いだろう」


 そう言い笑うジーク。えっ、無視されることもあるの? そんなの聞いたら話しかけづらいじゃ無いか。


「頑張ってね、レイちゃん」


 そのあとは、馬車が来るまでジークの男の社交界という話を延々と聞かされてしまった。

昨日投稿できず、昼になってしまいました。

よろしくお願いします!

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エリス(母親)、息子のハーレム街道を全然阻止する気なくて草
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