表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

176/350

162.参戦者

 ランウォーカー辺境伯領国境砦

 ラーシル砦


 俺は夢でも見ているのだろうか。


 先程までは、槍を持ったナイスミドルな男の人と戦っていた。男の人は街の方で爆発音が聞こえた事と、俺の動きが少しずつ良くなっていく事で、戸惑いを見せていた。


 俺はその隙を突いて、少しずつ男の人を押していたけど、体の方も結構限界にきていた。理由は、この人と戦う前に比べてステータスが上がったせいだろう。速度を上げる度、体が少しずつ付いて行けなくなったのだ。


 だから、体が動くうちに、この男の人を仕留めようとしたその時


「薙ぎ払え、暴風女帝(ボレアスエンプレス)


 と声が聞こえたのだ。その声はとても綺麗な声だった。剣戟や魔法の爆発音がなるこの戦場でも、透き通るように聞こえる声。しかし、その声にはとんでもない威圧感が含まれていた。そして


「全員、伏せろぉぉぉぉ!」


 目の前の男が顔を青くして叫ぶ。あれ程強かった男の人が、なりふり構わずに叫ぶその姿を見て、周りは嘲笑するが、俺のカンが従うべきだと言っていた。


 男の人が体を地面に伏せるのを見て、俺も遅れて伏せた瞬間


 ドゥン!


 と空から風が渦巻いている塊が降ってきた。その塊は俺たちレガリア軍の頭の上に落ちて、落ちた瞬間爆発。渦巻いていた風が爆発した事によって一気に放出さる。その風はとんでもない風力で、大人が簡単に飛んでいくほどだった。


 俺は地面に伏せて、剣を地面に突き刺し何とか耐えたが、これをしなかったら俺も宙を舞っていただろう。その後にも同じものが3発放たれた。これだけで、砦に乗り込んでいたレガリア軍は機能しなくなった。


 そして砦に降り立ったのは


「あらまあ、やり過ぎたかね?」


 クスクスと笑う絶世の美女だった。これが味方なら女神や天使に見えただろう。だけど、俺からすれば、死神にしか見えなかった。


 ◇◇◇


「こ、これは学園長。お、お久しぶりです」


 俺は目の前に微笑んでいる学園長にそう言う。こ、こえぇ。本来ならいないはずの人が何故ここにいるのか。そう思ったが、この人なら何でも出来るだろうという考えが浮かんでしまう。


「ああ、久し振りだねぇ、ジーク。押されているようだから助けに来たよ。ほら上にも」


「え?」


 俺が空を見上げた瞬間、スタタッ、と砦に降り立つ人影が見えた。丁度太陽と被って見えなかったが、


「大丈夫、お父様!」


 この声だけで誰かわかった。この子も本当なら王都にいるはずなんだがな。


「ああ、大丈夫だ、エアリス」


 俺は手を差し伸べてくれた娘、エアリスにそう言い、引っ張られながらも立つ。その後ろには見覚えの無い少年がいる。首には制約の首輪か奴隷の首輪らしき物を付けている。誰だ?


「初めましてランウォーカー辺境伯。僕の名前はティグリス・ランバートと申します。母の命の恩人であるレイヴェルトに恩を返しに来ました」


 ティグリス・ランバートと言えば、ランバート公爵家の長男じゃ無いか。何でそんな少年がここに。それにレイに恩を返すって、何したんだあいつ。


 マルコの方にはアレクシア様にフェリス様、後仮面を付けた少女がいる。って事は


「ああ、よく来てくれました。助かります。しかし、エアリスたちがいるって事は、レイも来ているのか?」


「もちろんよ。ただ、ここに来る途中、屋敷の方に行ったら、屋敷が何者かに襲われていたから、レイがそっちに行ったわ」


 ……やはり、さっきの爆発音は屋敷の方だったか。多分、屋敷に張ってある魔法障壁を壊すのに魔法を使ったのだろう。


 しかし、レイが行ってくれたなら安心だ。自分1人でそっちは大丈夫だと思ったから、こっちに学園長たちを寄越してくれたのだろう。


「それよりも、今日の戦いを早く終わらせるよ」


 そこに学園長がそう言う。そして砦から降りてしまった。体中に吹き荒れる風を使って宙を飛ぶ。そして先程の風の塊をいくつも放つ。


 レガリア軍も魔法障壁を張って何とか防ぐが、1発で10人近くの魔法障壁が吹き飛ばされる。それが何発もなると、レガリア軍も防ぎ切れない。……人ってあんな簡単に飛ぶんだな。


「では、僕たちも『全てを切り裂く最強の剣』『全てを弾きし魔の盾』」


 ティグリス殿は魔法か何か使ったのだろう。剣と盾、それぞれが光出す。そして砦に残っているレガリア軍へと向かう。


 レガリア兵は、剣や槍で防ごうとするが、ティグリスの剣は、それらが初めから無かったかの様に、容易に切り裂いていく。


 レガリア兵も、やられっぱなしではなく、ティグリスへと斬りかかるのだが、ティグリスの盾に防がれると、当たっただけで弾かれるのだ。そしてその隙にティグリスが兵士に切りかかる。何かの能力なのだろうか。


「良し、私も自分の故郷を守るため頑張るわ。フレル! 蛇炎ノ大太刀!」


 隣にいたエアリスがそんな事を言う。そして、魔法を発動すると、俺がお祝いにあげたカゲロウが、姿形を変えて、2メートルはあるであろう大きな剣に姿を変えた。


「はぁっ!」


 エアリスの身長を優に越す剣を、エアリスは軽々と振る。その事にレガリア兵は驚きながらも、対処しようとするが、エアリスの長い剣には近づく前に切られてしまう。槍でも届かない程の長さだ。


 魔法を放とうとも、放つ前に接近され切られる。レガリア兵には手も足も出ない状態だ。その上


「せやっ!」


 エアリスの剣は分裂して鞭の様に伸びたのだ。魔力で伸びている様で、かなりの距離伸び、レガリア兵をまとめて串刺しにしていった。


 ……全く。マルコもそうだが、エアリスも俺の知らない間に強くなって。子供の成長の速さには驚かされるな。レイもかなり強くなっているんだろうな。


「た、退却っ! 退却〜!!」


 先程まで有利に進めていたレガリア軍だが、学園長の参戦により、前線は崩れて、撤退を余儀なくされた。それを行なった本人は


「何だい、つまらないねぇ。これならレイを教えている方が手応えあるよ」


 と、怒っていた。……レイ、お前良く耐えたな。学園長に頼んだのは俺だが、申し訳なかった。

評価等よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 日本語の言い回しが変です。特に助詞の使い方。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ