157.まさかの事態
「全く、予想外のところから来るとはな」
俺は、目の前にいる二刀の剣を持つ男に話しかける。何かしらの策はあるのだろうと考えていたが、まさか空から降って来るとは思わなかった。
しかし、そんな事も言ってられない。目の前で兵士たちが次々とやられて行くのだから。マルスもやられてしまった。
もう1人の方はマルコとギルに頼み、総指揮はメリア殿に任せた。俺は目の前の男を止めるために。
「悪いがこれ以上はやらせんぞ」
俺は油断なく構える。この男をこれ以上好きにはさせられない。
「申し訳ないけど、俺にもやる事があるんでね!」
二刀を構えた男は、剣を構えて俺に向かって来る。俺は直様、風竜槍トルメンタで突きを放つ。この槍は昔討伐した上級竜の風竜から取った牙で作った槍だ。
常時風属性の魔法が付与され、槍の重さを軽減、速度を上昇してくれる。俺の相棒だ。
俺の速度の速い突きに、男は防戦一方となった。何とか剣で防いで俺の懐に入ろうとするが、そう簡単には入れさせない。
それに、この男の動きがおかしい。確かに力は強く、速度は速いが、反応が少し遅い。それに左手に持つ剣がほとんど役に立っていない。二刀流に慣れていないのか?
しかし、その隙を見逃す程俺は甘くない。俺は男の左側へ行き、左手に持つ剣を狙う。男は何とか防ぐが、先ほど以上に動きが悪くなった。
槍を回し足払いをする。男は跳んで避けるが、俺はそのまま槍を振り上げる。男は咄嗟に剣を交差させ受けるが、槍に剣が振り上げられ、手を上げた状態になった。
そして、俺は回転し、再び突きを放つ。男は空中で無理矢理体を捻り避けるが、脇腹をトルメンタが掠る。痛みに男は表情を歪めるが、直ぐに手元に槍を戻し何度も突く。
両手の剣で防いではいるが、このまま押し切るのも時間の問題だろう。槍の薙払いが男の脇腹へと減り込む。ベキベキと骨の折れる感触が、トルメンタを伝って来るが、そのまま振り抜く。
男はそのまま吹き飛ぶが、気を失うまではいかなかった。血反吐を吐きながらも再び立ち上がる。そして右手に持っていた剣を腰に戻し、左手に持っていた剣を両手持ちに変える。
「何の真似だ?」
「俺は元々ただの剣士でね。やっぱり慣れない二刀流よりも、こっちの方がしっくりと来てね」
そう言い男は再び攻めて来る。確かにさっきの二刀流の時に比べたら、動きに迷いが無くなった。俺の突きを剣で何度も逸らす。
男が切りかかってくるのを槍で受ける。袈裟切りを槍で受け、横薙ぎを槍を縦に持ち受ける。男はお返しにと突きを放つが、体を逸らし避ける。
俺はそのまま、槍を回して石突きを振り下ろす。男は下がって避けるが、俺はその石突きを地面に刺し、しなる反発力を利用して空中に跳ねる。
空中でトルメンタを手元に戻し、体を回しながら、トルメンタを男に向かって振り下ろす。上から振り下ろされる槍を、男は剣で受けるが、両膝が地面につく威力だ。
俺は着地して直ぐに男に駆け寄り、蹴りを放つ。男は何度も地面にぶつかり転がって行く。そして周りにいた兵士たちも男へと群がる。
だが
「おらあっ!」
男はしぶとく立ち上がり、兵士たちを切って行く。あの野郎。俺は駆け出し、再び男へと攻撃する。
俺が突いて男が逸らす。横薙ぎを払っても剣で受け止める。少しずつではあるが俺の攻撃に反応できるようになっている。何かの能力か?
だが、考える暇はなかった。俺が突く再び突きを放つと、男が目の前から消えたからだ。いや、そう錯覚するほど男は体を倒し、俺の突きを避けた。
そして、槍の下を地面スレスレに走る。俺は直ぐに槍を手元に戻すが少し遅かった。男は剣で左切り上げをし、俺はそれを防ぎ切れずに、脇腹を切られた。
今度はその隙を突くように男は攻めてくる。1発1発が重たい。男は苛烈に攻めてくるので、何とか防ぐが。
◇◇◇
くそっ! この人強過ぎるだろ。本当にガルガンテぐらいの実力がある。槍が今まで戦った槍使いの中で一番強い。
初めは動きが読めずに防戦一方になってしまった。だけど、何とか耐えたおかげで『耐えし者』の力で、槍術が上がった。
これは本当に便利だ。このスキルを持っているだけで、少しは槍の動きがわかるのだから。そのおかげで何とか、男の人の動きも少しは読めるようになった。
しかし、このまま押し込めるか、と思った矢先に
ドォン!
と大きな音がする。この戦場ではなく、遠くから聞こえる音だ。何かが爆発した音。俺にはどこからかはわからなかったが、男の人はわかったようで、戦場とは反対の方を見ている。
あっちの方角は、確か辺境伯の領地がある場所。まさか、そこで爆発が?
だけど、これはチャンスだ。男の人が隙を見せている内に俺は攻める。男の人も気づいたのか、再び俺の方を見て槍を構える。
しかし、俺が攻撃しても先程までのキレがない。やはり気になるのだろう。こっちに集中しきれていない。少しずつ当たるようになって来た俺の剣。
多分さっきの爆発は、ガルガンテの作戦の内だろう。今は姿の見えない不良組を使って。だけど、ここを越えようとしたら、魔の大地を超えるか、この砦を通らないといけないから、たぶん、あのエインズという男の力を使ったのだろう。
あの人は、一度に運べる人数は少ないけど、運べる距離は長いと言っていたから。
「ちっ!」
良し! 男の動きが乱れた。俺は右切り上げで男の人の槍を弾く。そのまま返して袈裟切りで男の人を切る! そのまま男の体は剣が走る。男の人が傷口を抑えて膝をつく
俺はその隙に、雲梯のつく予定地に急ぐ。周りの兵士が集まるが、再び二刀流になって切り伏せる。切って切って切りまくる。そして
ドォォン!
と雲梯が砦にぶつかる音が響く。その間も雲梯を壊そうとする兵士たちを切る。そして
「突撃だぁ!」
とレガリア軍が登って来た。ふぅ、ようやく作戦が成功した。男の人は怨みのこもった目で俺を睨んでくるが、兵士に指示を出している。
俺も兵士の手伝いをしよう。
評価等よろしくお願いします!
「黒髪の王」もよろしくお願いします!




