表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

162/350

150.創造せし者

「がはっ!」


 俺は背中を地面に打ちつけた勢いで、肺から息を吐く。ゲホッ、口の中が鉄臭い。2階から落ちただけなので特に怪我はない。あるとすれば、ティグリスに切られたところだけだろう。


 しかし何なんだあいつの能力は。キャロの頑丈な障壁を紙を切り裂くみたいに簡単に破って、俺のロウガもあんな簡単に切られるなんて。……ジークに謝らなければな。


 それに俺の攻撃も簡単に弾かれた。あれはティグリスの盾の使い方が上手いんじゃなくて、そう言う効果がある盾なのか、何か能力を使ったのだろう。


 考えられるとすれば、発動前にティグリスが発した言葉だ。何か喋った後に、剣と盾がそれぞれ光りだしたからな。あれが何かのスイッチになっているのだろう。


「マキシマムヒーリング」


 俺はレベル7の回復魔法マキシマムヒーリングを発動する。昔腕をくっつける時にマリリンに使って貰ったやつだな。これで斜めに切られた傷は塞がった。


「あの野郎。あのイケメンフェイス殴り飛ばしてやる!」


 なぜグルタスについているかは知らないが、落とし前はしっかりとしなければ。取り敢えず腫れるまで顔面殴ってやる。


 俺はそう思い、落ちて来たテラスへと跳んで戻る。するとそこで見たのは


「しっ!」


「くっ!」


 ティグリスと切り合っているハクの姿だった。ハクは『深影の暗殺者シャドウ・ザ・リッパー』を使ってティグリスを翻弄する。


 しかし、ティグリスはハクがどの影から出てくるのがわかっているようで、ハクが出てくる前に剣で切りかかっている。しかし、ハクがナイフで剣を防いでも切断されない。何でだ?


 って、そんな事よりハクが危険だ。今はまだハクが翻弄しているが、ティグリスも少しずつタイミングが合ってきている。


「ライトニングアロー」


 ティグリスに向かって雷の矢を射つ。ティグリスは簡単に盾で防ぐが、こんなものは牽制でしかない。周りを見れば、王様たちはまだ大丈夫だな。他の貴族たちもキャロの障壁内にいる。


 兵士たちはかなりやられてしまったな。敵の数も減ってきてはいるが。


「ティグリス、何をしている! さっさとそいつらを殺せ!」


 魔兵士の向こうではグルタスが叫んでいる。側では、他の魔兵士たちとは比べものにならない程の威圧感を放っている男が2人いる。


「僕を前にして考え事か?」


 グルタスたちを見ていたらティグリスが話しかけてくる。剣先を俺に向けながら。ハクもいつの間にか俺の側に来ていた。


「おにぃ……大丈夫?」


「ああ、大丈夫だよ。ハクがあいつを止めてくれたんだな。ありがとな」


 俺がそう言うと、ハクは嬉しそうに頷く。しかし、キャロの障壁や俺のロウガを紙のように切ったあの剣の能力に、俺の攻撃を簡単に弾き返した盾の能力。後はハクが何処から出てくるのかがわかったのもある。一体どういう能力なんだ?


 そう思っていたら


「っ! レイ! その男、私たちと同じよ!」


 と、後ろでキャロがそう叫ぶ。俺たちと一緒ってどういう事なのだろうか。よく見ればキャロの左目が金色に光り輝いていている。あれは『神眼』を使ったのか? 使っているところ初めて見るな。


「……なぜか聖女にはバレたようだね。しかし、君も一緒とはどういう事なのだろうか。レイヴェルト・ランウォーカー?」


「知らねえよ。こっちこそ聞きたいくらいだ」


 俺がティグリスに尋ねると、剣を構えながらも器用に肩をすくめる仕草をする。なんか腹が立つけど今は我慢だ。取り敢えずあいつの話を聞かなければ。


「……仕方ないね。聖女にはバレたようだし。このまま隠しても話されるだろう。僕はね聖女と同じで女神の加護を持っているんだよ」


「……は?」


 俺の聞き間違いでは無いのだろうか。俺がキャロの方を見ると、キャロも頷く。……そういう事かよ。だからキャロが「私たちと同じ」って言ったのか。確かに同じだな。


 そう考えている中で女神アステルの言葉を思い出す。この大陸には、女神の加護を持つものが全員で5人いる事を。


 1人は俺で、もう1人はキャロ。それにレガリア帝国の勇者に2人。後1人は俺の身近にいると言っていたが……。確かに身近といえば身近? になるのかな? 同じ王都にいて同じ学園に通っている。微妙な感じがしない事も無いが。


「僕は称号で『創造せし者』という称号を女神アステルからもらってね。僕の魔力を消費して僕が考えた物を創造する事が出来る。さっき聖女の障壁や君の槍を切ったのも、僕の剣を全てを切り裂く剣に創造したからだ」


 ……チート過ぎるだろその称号は。魔力次第では最強じゃ無いか。なんてもの与えたんだ女神アステルは。


「ただ、魔力の消費量が半端なくてね。1日に使える回数は最大5回しか使えない。僕はもう3回使っているからあと2回だね。そして今再び『全てを切り裂く最強の剣』を発動したから後1回」


 そう言うと、ティグリスの剣が再び白く輝き出す。右手には白く輝く剣に左手には黒く輝く盾。さっきと同じ状態だな。


「良いのかよ。1日の回数とかそんな重要な事をペラペラと話して」


 俺が尋ねると、ティグリスは一度顔を俯かせるが、再び顔を上げ決意の満ちた目で俺を見てくる。


「構わないよ。僕の目的のために君はここで僕に倒されるのだから」


 そして剣を構えるティグリス。どう言う理由があってグルタスについているかはわからない。アレクシアが驚く程不自然な事なのだろう。さっきの表情からしても、何か事情があるのかもしれない。だけど


「俺は俺の大切な人たちを守るためにティグリス、お前を倒す。雷装天衣! 雷帝の武器庫(グロムアームズ)!」


 俺が魔法を発動すると、周りに雷の武器が出現する。俺は両手に剣を持ち


「行くぞ、ティグリス・ランバート!」


 ティグリスへと迫る。絶対ぶん殴ってやる。

この設定は結構前から考えていました。


評価等よろしくお願いします!

「黒髪の王」もよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ