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149.最後の1人

グルタスはレイモンド陛下の弟で、アレクシアたちの叔父になります。

思ったより誰だ! という質問があったので、ここで書かせてもらいます(笑)

「……グルタスか。毎年出席しないから今年もしないと思っていたぞ。しかし、その後ろの兵士たちは何だ? どうやって入って来た?」


 ドシドシと遠慮無しに兵士を引き連れ、会場に入って来るグルタスに王様は尋ねる。後ろには武装した兵士が100人ほどいる。王様の背後についていたゲインさんも、その事を不審に思い腰の剣に手をかける。


 しかし、なんで王宮に入れたんだ? そんな事を不思議に思っていると、その中の1人に見覚えがあった。あれは確か……


「ティグリス・ランバート!? どうして叔父上と一緒に?」


 隣でアレクシアが驚きの声を上げる。そうだ。ティグリス・ランバート。ランバート公爵家の長男だったはず。それが何故グルタスと一緒に?


「くくく。この兵士は私の忠実なしもべたちだ。そして今、この王都に向かって我が兵士2万の軍隊が迫っている。お前を玉座から引きづり落とす為にな!」


 グルタスがそう叫んだ瞬間、後ろについていた兵士たちは何かを飲み込む。そして


「ガァアアアアア!」


 と姿を変えていった。あれは……


「アルカディアで見たガルレイクと同じ姿だ」


 確か魔丸薬だったか? 見た目は筋肉が膨張し2メートルちょっとの巨体になり、肌が紫色に変わっている。


「はっはっは! ここに来る途中の兵士は皆殺させてもらった。騒がれては困るからな。だが、ここではレイモンド、お前の言葉一つで貴族どもは助けてやろう。今後国を統治するのに一応は必要だからな」


 そう言い醜く笑うグルタス。周りには貴族たちにその子息に令嬢たちもいる。彼らを人質に取られれば、中々厳しいものになってしまう。


「……こんな時に何を馬鹿な事を言っている! 今はレガリア帝国と戦争中なんだぞ! それなのに国内で争ってどうする!」


「こんな時だからだレイモンド。この年末のパーティーは、唯一王族が集まる日。そして、この国最強のシルフィードは、この時期は王都にいないからな」


 そう、今学園長は亜人国フォレストファリア王国へ帰っているのだ。この時期には父親の命日らしくて、帰ってしまうのだ。グルタスはその時を狙っていたのだろう。


「そして今日、ランウォーカー辺境伯領へ、レガリア帝国の進軍が始まった。今日は魔法の撃ち合いで終わったみたいだが、明日からは本格的な戦争が始まるだろう」


 なっ! なんでそんな事を知っているんだ!? しかも、予定より始まるのが早い。前の予想だったらあるとすれば年明けだったはず。それなのに、年内になるなんて。


「……なぜ、グルタスがそんな事を知っている?」


「くくくっ! 私の部下には優秀な者がいるのでな」


 空間魔法の転移か。でもかなりの実力者だなそいつ。ランウォーカー辺境伯領から王都まではかなりの距離がある。それを簡単に転移できるなんて。


「この空間魔法の使い手は、レガリア帝国とのパイプ役でな。この意味がわかるかな?」


「グルタス貴様! レガリア帝国と内通していたのか!?」


「内通では無い。私が王になった時の為の外交だ。レガリア帝国は、ランウォーカー辺境伯領をレガリア帝国へ割譲する事で、戦争の時期を合わせてくれてな。それからこの兵士たちが飲んだ魔丸薬に魔剣たちも譲ってくれた」


 グルタスの余りな発言に王様は席を立つ。奴は本当にそれだけで終わると思っているのか? レガリア帝国の目的は大陸統一だろ? ランウォーカー辺境伯領だけで、収まるとは到底思えない。


「グルタス、何を馬鹿な事を! 奴らのそんな言葉を信じたのか! 奴らがその程度で満足するわけなかろう!」


「その時は、レガリア帝国を追い払うまでだ。私の力でな」


 こいつのこの自信。他にもまだ何か隠しているのか?


「話はここまでだ。あとはお前の返答次第で、この場所がこのまま終わるか、血の海で沈むかだ。さあ、どうする?」


 王様は何と答えるのだろうか? ……いや、考えるまでも無いな。王様がこの国をどれだけ大事に思っているかはわかっている。だからこんな男に渡すわけはない!


「グルタス、国を裏切った貴様に渡す席など無いわ! ゲイン! 反逆者グルタスを捕らえろ!」


「はっ!」


 そう叫ぶと兵士たちが抜刀する。俺たちも準備をするか。


「そうか。それが貴様の答えがレイモンド! なら仕方あるまい。ここにいる奴らを皆殺しにしろ!」


「ガァアアアアア!」


 グルタスが指示を出すと、先程まで待機していた魔丸薬を飲んだ兵士たちが雄叫びを上げ、近くにいる貴族たちへ攻撃を開始する。だけど


「障壁! この程度なら通さないわよ!」


 キャロが張った障壁により魔族化した兵士……長いから魔兵士たちの攻撃が阻まれる。アレクシアたちも戦闘の準備をし……って、ああ勿体無い。こんな時にあれなんだけど、アレクシアは動きやすいようにドレスのスカートを裂いてしまった。


 エアリスは元々スリットの入ったドレスだったので問題はなかったし、フェリスはワンピース型のドレスだったので裂かなくても良かったのだが、それぞれヒールを脱ぎ捨てて、いつも履いている機能性重視の靴へと履き替える。


 みんなアレクシアがエアリスのアイテムボックスに入れていたんだな。そして脱ぎ捨てられた靴をプリシアが集める。何だかみんなのお母さんみたいだ。


 ヘレンやプリシアたちは障壁を張っているキャロの後ろに避難する。王様たちや他の貴族たちも、安全なキャロの後ろへと避難していく。これなら安全に……


 くいくい


 ん? 俺の右袖が引っ張られる感触があったので顔を下げると、ハクが俺の袖を引っ張っていた。


「どうしたハク。お前もキャロの後ろに」


「……私……戦う」


 そう言いちょうだいという風に手のひらを俺に向けてくる。これは、前に使っていたナイフを渡せと言っているのか。しかし……。


「おにぃの……考えている事……わかる。でも、私も……家族……守りたい」


 そんな決意の満ちた目で見られたら何も言えないじゃ無いか。


「……わかった。だけど無茶だけはするなよ」


「ん!」


 俺はアイテムリングから二刀のナイフを取り出しハクヘと渡す。ハクは久し振りに握るナイフの感触を確かめながら、魔兵士たちを見る。そして


「ん!」


 自分の影へと入り、影の中を移動していく。単発だったらレベル9を発動していなくても使えるのか。そのまま、影の中を移動し、一体の魔兵士の後ろに出て


「しっ!」


 背後から首を切る。だけど薬のせいで筋肉が膨張して、首も太くなっているので半分ほどしか切れていない。奴らはその程度では回復してしまう。


 そう叫ぼうとした時、ハクはそのことに気がついたのか、魔兵士の肩から魔兵士の前へと移動し、今度は前から魔兵士の首を搔き切る。魔兵士の首は胴体から離れて、ドサっと前に倒れる。流石だな。


「こいつら攻撃しても回復するぞ!」


「攻撃を受けるな! まともに当たれば吹き飛ばされるぞ!」


 ハクを見ている間に兵士たちの方も、魔兵士たちの戦闘が始まっていた。兵士の数は今いるだけだと魔兵士の変わらないぐらいしかいない。


 でも、ゲインさんに鍛えられた近衛兵たちなのだろう。魔兵士相手に真正面から相手はせずに、2対1で魔兵士たちを翻弄している。


 魔兵士たちはガルレイクと同じで、筋力など力は強くなるけど、思考力は極端に落ちるようだ。その隙を上手いことついている。だけど、このままだとジリ貧だ。


 向こうの魔兵士はいくら攻撃を受けても回復するが、こっちは一発食らったら終わりだ。かなりの威力の攻撃を逸らすのにも体力を使うだろう。でもまあ


「今回はガルレイクの時みたいに助ける義理は無い。俺も遠慮はしない。ゲイルストーム身体付与、武器付与」


 俺もロウガをアイテムリングから取り出し、魔兵士へと攻撃する。魔兵士の殴りかかってくる巨大な腕を飛んで避け、そのまま顔目掛けてロウガを突き刺す。流石に顔を貫通しては、回復は出来ないだろう。


 アレクシアやフェリスにエアリスも、顔を狙って攻撃する。スパンスパンと首が飛んだり、顔が縦に割れたり、逆にこちらの兵が魔兵士に殴り潰される光景は中々エグいがそんな事も言ってられない。


 貴族の文官肌の人たちや、子息や令嬢たちが下半身を濡らしているのは見なかった事にしよう。俺も慣れていなかったら泣き叫ぶレベルだ。


「ちっ! ティグリス、殺れ!」


「……はい」


 そんな魔兵士たちの姿に痺れを切らしたのか、グルタスが側にいたティグリスへと命令する。ティグリスはその指示に従うように、腰の剣を抜き盾を構える。そして王様に向かって走り出す。


 いつもなら慌てるところだけど、王様の側にはキャロがいるし、障壁も張っている。そう簡単には通させないだろう……そう思っていたのだが


『全てを切り裂く最強の剣』


 ティグリスが何かをブツブツと言った瞬間、手に持っていた剣が白く光り出し、そして


「っ!」


 キャロの障壁が切り破られた。……嘘だろ。古竜のブレスすら防いだキャロの障壁があんな簡単に破られるなんて……って不味い!


 俺は直様駆け出しティグリスの元へと向かう。王様へ剣を振り下ろそうとするティグリスへ突きを放つ。しかし


『全てを弾きし魔の盾』


 ティグリスが再び呟くと、白く輝く剣とは対極的に盾が黒く輝き出し、俺の突きを防ごうとする。俺はその盾ごと貫く勢いで突きを放つが、


「くっ!」


 俺の突きはいとも簡単に弾かれてしまった。くそっ、何なんだ、ティグリスの能力は? そう考える暇もなくティグリスは白く輝く剣で切りかかってくる。


 キャロが障壁、俺もロウガで防ごうとするが、まるではじめからそこには無かったかのように、障壁を切り裂き、ロウガすら切られ、俺は左肩から斜めに切られてしまった。


「レイ!」


 みんなが叫ぶが、それどころでは無い。切られた傷はかなり深い。血が止めどなく溢れてくる。しかし、魔法を使う暇もなく目の前にはティグリスが立っており、俺を蹴り飛ばす。


「がっ!」


 蹴り飛ばされた俺は、窓を突き破りテラスから庭に落ちてしまった。

評価等よろしくお願いします!

「黒髪の王」もよろしくお願いします!

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[良い点] 主人公調子乗ってやられんのかよ なんで最初に動き出さなかったのか謎すぎ これはハクに無双してもらうしかないですね
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