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148.それぞれのお願い

 王都


「レイヴェルト殿、お初にお目にかかる。それとこちらは私の娘で年が今年で17に……」


「レイヴェルト君。もしよければ今度屋敷に来ないか? 私の妹が会いたいと……」


「レイヴェルトしゃま! 私、レイヴェルトしゃまがだいしゅきです!」


「これこれ。すみませぬレイヴェルト殿。私の孫はレイヴェルト殿の武勇伝が好きでしてね。もしよければ屋敷で話してやっては……」


「はははは……」


 ……つ、疲れる。パーティーが始まって1時間ほど。王様の挨拶も終わり、貴族の人たちが爵位の順番に王様に挨拶をしに行く。


 その後に王妃様たち、王太子と王族に挨拶をしに行くのだが、それが終わったら戻るのではなく、俺たちにまで挨拶に来るのだ。


 アレクシアやフェリス、キャロはまだわかるのだが、俺たちのメンバーで1番最初に挨拶に来るのが俺のところなのだ。


 そしてする話とすれば、大抵が娘、または妹などの家族の紹介なのだ。しかも、ただの紹介ではなく、側室にどうかと言って来る始末。


 みんなの目の前で断ったら断ったで角が立つし、はいとでも返事をしてしまえば、認めた事になり、そく婚約者の仲間入りしてしまう。答え方一つでも考えなければいけないのでかなり肩がこる。


 女性陣のところにも挨拶は行くのだが、既に俺の婚約者と決まっているので、へんなちょっかいをかける奴はいなかった。まあ、いたらいたで許していないけど。


 貴族の子息がメイちゃんたちに挨拶をしているところを見た時は中々面白かった。メイちゃんもハクも身内びいき無しで可愛いのでかなりモテモテなのだ。


 ただメイちゃんにデレデレな子息相手に、後ろで威嚇しているロイを見るのは面白かった。誰かに取られる前に告白してしまえよ、と言いたいところだけれど、まだ子供。まだ考える歳ではないかな。


 ハクはハクで淡々と挨拶を返すだけ。もう少し笑ってあげても良いんじゃないかなとか思ったりもするのだが、まあハクらしいなと思いながら見ている。そんなみんなを見ていたら


「疲れているのね」


「……ヴィクトリア様! 挨拶はもうよろしいので?」


 俺のところに挨拶に来る貴族が減ってきたのを見計らってか、第1王妃のヴィクトリア様が俺のところへとやってきた。こうやって個別で話すのは初めてだな。


「ええ、少しあなたと話しておきたい事があってね」


「俺に話しておきたい事ですか?」


 ヴィクトリア様が俺に話しておきたい事って何だろうか? 何かあったか?


「ここだけの話なのだけれど、レイモンドは後数年内に王位を退いてウィリアムに継がせるつもりなの」


「はあっ! ……っ」


 危ない危ない。余りの話に大声を出すところだった。俺はすぐに口を押さえ叫ぶのをやめる。でも、急な話だな。


「これはレイモンドが私たち王妃に話した事だからそれぞれ知っているわ。理由はもう歳だからと言うのもあるけど、本当の理由はあなたなのよ」


「俺、ですか?」


 そう言われてもピンと来ない。何で俺が理由で王様が王位を退くんだ? 数年内ならまだ王様は50代。まだ現役でやっていけると思うのだが。


「理由は、あなたに色々と教えたいそうよ。ナノールの王位争いのせいで、あなたに重荷を背負わせてしまった事をレイモンドは申し訳なく思っているのよ。だからその重荷が少しでも楽になるようにと、自分の経験を生かし、それをあなたに教えたいのだって」


 ……そんな事を考えていたのか。確かに俺に国を作って欲しいと言われた時もかなり申し訳なさそうな表情を浮かべていた。


 自分は知っているからか。国を動かす事の難しさを。それよりも難しい国を建てると言う事を俺に任せた事に罪悪感を感じているのだろう。


「全く馬鹿な人よね。王位を退くのだから後は老後の生活を私たちと一緒に過ごしてくれたって良いのに」


 そう言いながらも、王様を見るヴィクトリア様の目には愛情がこもっている。しかしそう言われては俺も申し訳ない気持ちになってしまう。


「ふふ、別に気にしなくても良いわ。あの人も好きにやりたいのだろうし、私たちもそれを認めた。だからあなたはあの人から色々と教えて貰うと良いわ。……とそろそろ戻らないとね」


 そう言い元の場所へと戻って行くヴィクトリア様。確かに国について色々と教えてもらう事はありがたいな。俺は何も知らないぺーぺーだから。


「ヴィクトリアお母様と何を話していたの?」


 俺がヴィクトリア様の後ろ姿を見ながら考えていると、アレクシアが隣にやって来てそう尋ねてくる。


「アレクシアは知っていたのか? 陛下が退位する事」


「ああ、その事ね。もちろんよ。あ、でもまだお兄様たちは知らないから他の人には話しちゃダメよ。もちろん貴族にも」


 ……アルバート王太子たちも知らないのか。それを何でアレクシアは知っているんだ? 謎だ。


「ふふ、それは女の秘密というやつよ」


 すると、俺の考えが見透かされたのか、アレクシアは微笑みながらそう言う。その微笑みは見惚れるほど小悪魔的で愛らしい笑みだった。


「んんっ、なら聞かないでおこう。そろそろ貴族の挨拶も引いて来たところだし料理でも……」


 そう言い、料理が並ぶテーブルへアレクシアたちを伴っていこうとしたら


「やあ、レイヴェルト殿、ご機嫌はいかがかな?」


 とミストガルト王子が俺のところへとやって来た。その瞬間、婚約者たちの笑顔が消え、辺りを殺気で覆い尽くして行く。


 感じ的にせっかく俺と楽しく話をしていたのに邪魔するんじゃねえぞゴラァ! て感じか。そんな事を思っているのかはわからないけど。


「……あなたの顔を見たので最悪です」


「はは、歯に衣着せぬ物言いだな。なに、もう助けてくれとは言わんよ。あれは私が自分で解決するべきだからな」


 そう言い頭を下げるミストガルト王子。……誰だこれ? 別人がミストガルト王子になりすましているんじゃないのか? そう思うほど前とは違う。アレクシアたちも口に手を当て驚いていた。


「レイヴェルト殿がなにを言いたいかはわかるよ。私も必死だったのでね馬鹿なことをしてしまった。だが、気づいたのさ。自分でしなければねと。だから年が明けたら俺たちはシーリアに帰る事にする」


「それはまた急ですね」


「ああ、こう言う事は早く解決しておいた方がいいからな。それが終わったら俺は王位を棄てこの国来ようと思う。そこでお願いがある」


「……お願いですか?」


 前の事があるから少し警戒してしまう。だけどここでプツンといったら王様たちに迷惑をかけてしまうから、何を言われても怒りを抑えるようにしないとな。


「ああ、その時は俺を雇って欲しい」


「は?」


 これはまた予想外なお願いだな。ミストガルト王子を雇って欲しいと?


「俺は前にも話したように、シーリアでは何でも出来た方だ。その中にはもちろん政治や経済などの事も入っている。レイモンド陛下に聞いたのだ。レイヴェルト殿が国を作る事を。俺は罪滅ぼしでは無いが、その手伝いをしたいと思っている」


 確かこの人優秀だから命を狙われているんだっけ。前の事があったからすっかりと忘れていた。しかし、う〜ん。どうしようか。


「何、今すぐとは言わない。俺も生きて戻って来られるかはわからないからな。また戻って来た時にでも考えてくれ」


 そして元いた場所へ戻るミストガルト王子。う〜ん。何だかモヤモヤするな。


「レイ、どうするの?」


 1人でモヤモヤとしていたらエアリスが心配してくれる。一瞬とはいえ婚約の話が出た相手だ。心配なのだろう。


「……命の危険があったら俺のところへ来て欲しいとクラリエさんには話してある。何かあったらまた来るだろう。それより早く料理を……」


 俺が再び料理の元へ行こうとした時


 バァン!


 と会場の扉が開かれる。みんなの視線が釘付けになる中、部屋へと入って来たのは


「やあやあ、最後の晩餐はお楽しみですかな。レイモンド?」


 兵士を伴ったグルタスだった。

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