145.王家の家族
「ようやっと着いたな」
自宅から馬車に揺られる事10分程。俺たちは王宮に辿り着いた。俺たちが乗った馬車は馬車停に止まり、俺から順番に降りる。すると
「お待ちしておりました、レイヴェルト様。レイモンド陛下がお待ちです」
といつも通りの付き人の人が、俺たちが来るのを待っていてくれた。こんな寒い中申し訳ないな。
「寒い中お待ち頂いて申し訳ございません。大丈夫ですか?」
俺が心配すると、付き人の人は笑い出す。この人の笑っている姿初めて見たな。
「なんのこれしきの事。なんの問題もございません。それより、私にはその様な敬語は必要ありません。レイヴェルト様は、私などより遥かに位が高いのですから」
それはアレクシアたちと婚約しているからだろうか? そう言う意味なら確かに高いかもしれないけど。なんだか年上にタメ口で話すのは慣れないんだよな。でも、この人もこう言っているし従うか。
「わかった。レイモンド陛下の下まで案内を頼む」
「はい、こちらになります」
そして、付き人の後ろをついて行く。王宮の中は侍女たちが忙しなく動いている。兵士の人たちも緊張な面持ちで見回っている。
……なんか4年前を思い出すな。あの時も今日みたいに張り詰めた空気だった様な。まあ、毎年やっているわけだし、例年こんな感じなんだろう。4年前の誕生会が特殊だったわけで。
そんな事を考えていたら、王室へ辿り着いた。いつもは政務室なのにこことは珍しい。ここは名前の通り王様の私室になる。ここに入れるのは身内だけ。
「……ここに俺たちも入っても良いのか?」
「はい、中で皆様がお待ちです」
そう言い付き人は扉をノックする。すると中から近衛団長のゲインさんが顔を出す。
「お待ちしておりましたレイヴェルト様。中で陛下たちがお待ちです」
なんかこの人にも下手に出られると調子が狂うな。昔からたまに出会う事があったし、ジークの親友みたいだから、俺の中では知り合いのおっちゃんみたいな感じなのに。
そんなゲインさんの後に続き部屋に入ると、中には王様、第1王妃ヴィクトリア様、第2王妃ケアリー様、第3王妃アーシェリア様にアルバート王太子、アレックス王子、マリーナ会長に、アルバート王太子の妻で未来の王妃のベアトリーチェ様にアレックス王子の妻でユスティーナ様がいた。
なんでみんな勢揃いしているんだ?
「よく来たなレイ。アレクシアたちも、さあ席に座ってくれ」
俺たちは王様に促され席に座る。すると
「はぁ〜い、レイ君久しぶり〜」
とケアリー様が俺の方を見てふりふりと手を振る。なんて緊張感が無いんだこの人は。
「はぁ〜。ケアリー、あなたもう少し気品というものをね」
「もうヴィクトリア、今はそんな話はいいでしょ? せっかくの義息子とお話しているんだから。ねー、レイ君」
ケアリー様のこの調子にヴィクトリア様は再び溜息を吐く。この人たち本当に40後半なのか? みんな30代じゃないのか? と思うくらい綺麗だ。そこに
「2人とも煩いぞ。少しは落ち着いたらどうだ?」
とアーシェリア様が言う。この人は確か侯爵家の令嬢でありながら、実力で近衛団に入った人だったな。武闘派のアレックス王子の母親だけあって、今でも鍛えているのだろう。身体中に魔力が巡っている。
「何よ1人だけ落ち着いてますみたいな顔をして」
「そうよ〜。さっきまではまだ来ないのかとウロウロしていた癖に〜」
「なっ! そ、そんな事はしていないぞ! ただ、少し着くのが遅いのではと、何かあったのかと心配していただけだ!」
……凄い仲良さそう。こういう王家の夫人ってもう少しギクシャクしているもんだと勝手に思っていた。
「はは。母上たちも少しは落ち着いて下さい。レイヴェルトが驚いていますよ」
そう言いこの場の雰囲気をとりなそうとするアルバート王太子。この人とはあまり接点がないんだよなあ。だってこの人、王太子の今じゃないと他の領地は見に行けないとか言って、各領地に視察に行っているから殆ど王都にいないんだよ。
「……(じー)」
なんか物凄く視線を感じる。その方を見るとベアトリーチェ様がじーと俺を見てくる。な、なんだ? 見た目は10歳なんだが、かなり賢いと聞いた事がある。
元は庶民の出らしいのだが、学園で歴代トップの成績を出し、王様からベアトリーチェ様だけの称号を貰ったとか。
そして同級生だったアルバート王太子がアタックして王太子妃なったらしい。もちろん貴族たちは猛反発。庶民が未来の王妃になるなんてありえないと王様たちに抗議したらしい。未来の王を支えられるのかと。
しかし、そこでベアトリーチェ様が反発した貴族一人一人と話をしていき、それぞれ論破したらしい。政治、経済、戦、商売。
それぞれの分野で貴族たちは言い負かされたそうだ。酷い場合だと貴族の方が泣かされる事もあったとか。見た目10代の女の子に泣かされるおっさんとか……。
実際にやらせても中々の結果を出したらしい。今でも政務の一部を任せてるとか。
それほどの才覚があるならと、他の貴族はどこかの養子になる事で認めたそうだ。本当の理由は論破されるのが怖かったとか何とか。
そんな逸話を残したのが今から10年近く前の事で俺は2歳だったから知らんけど。……ベアトリーチェ様はアルバート王太子と同じ25歳になるんだよな。ロリコン?
「……ん、アルバート、ロリコン」
「な、何を言っているんだい、ベアトリーチェ!」
「え? え?」
もしかして今心を読まれた?
「ごほんっ、ベアトリーチェは魔眼待ちでね。浅いところの考えなら読めるんだよ。まあ、そのおかげで辛い思いもしてきたから滅多に使わないけど」
はあ〜、魔眼持ちか。俺そういえばキャロしか知らないな。キャロ自身も余り神眼を使おうとしないし。魔力の消費が多いからって。
「そんなロリコン兄貴より、パーティーの話をしようぜ親父」
とそこにアレックス王子が入ってくる。ロリコンって家族公認なのね。アレックス王子とは2年前にフェリスが来た時に一波乱あったからな。
アレックス王子はフェリスの事が好きだったらしいのだが、そこで俺との婚約が決まったので、何故か俺に決闘を申し込んで来た。内容はフェリスをかけて殴り合いの勝負。まあ、俺が勝ったけど。
それからはフェリスの事を諦めて、前から決まっていた婚約者であるユスティーナ様と結婚した。この結婚式にはもちろん俺も出席した。
ユスティーナ様はベアトリーチェ様とは正反対で、ボッ、キュッ、ボンを地で行く人だ。俺の婚約者の中でも1番大きいアレクシアよりも大きい。ドレスがはち切れそうだ。
「うむ、そろそろ呼びに来るだろう。それまで待っておれ。レイには私たちと一緒に来てもらう。なんて言ったって今年1番の功労者だからのう」
そんな事は無いと思うのだけれど、まあ良いか。それからはみんなで少し話をして待っていた。王妃たちと俺の婚約者たちが何かを真剣に話し合っていたので、何の話だろうと思い少し聞き耳を立てていたら、夜の話だったのは焦った。
こうすれば喜んで貰えるとか、こうしたら気持ちいいとか生々しい実体験を婚約者たちに話していた。みんなはみんなで物凄く真剣に聞いていたし。あれには入れない。
そんな一幕もあり
コンコン
と扉がノックされ、扉のところで立っていたゲインさんが中へと入って来る。
「陛下、準備が整いました」
「わかった。すぐに向かう。さあ、行こうか」
パーティーの準備が出来たようだ。他の貴族も集まっているみたい。王家の人たちと一緒なのは少し緊張するが行くか。
ようやく王妃の名前が……(笑)
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