14.精霊
ヒカリンは契約した俺と、精霊眼を持つフィーリアにしか見えないらしい。その事にクロナは残念がっていたが、こればかりは仕方が無い。
その代わりでは無いが、約束の時間まで、フィーリアとクロナと遊んであげることにした。何して遊びたいか聞いてみると、2人揃っておままごとがしたいと言うのでしてあげた。
配役は、俺がお父さん役、フィーリアとクロナが交代でお母さん役と子供役をやっていた。初めの方は、仲良く交代でやっていたのだが、途中から配役がお母さん役のフィーリアと愛人役クロナになっており
「あなた! 私とこの女どっちを選ぶのよ!」とか、「私を選ばないなら死んでやる!」など、前世の昼ドラマ顔負けの ドロドロとした内容になっていた。誰だよ、5歳児にこんなドロドロとした内容を教えたのは……
流石に見過ごすとは出来ずに、もうこのおままごとはしない様に約束させたが。
そんな事もあったが、2人と遊ぶのは心が安らぐ。この前の大行進のときは気にしない様にしていたが、あの時初めて生き物を殺した。前世も含めても初めてだったため、未だに手に感触が残っている。
この世界は前世に比べて命が軽い。少しでも油断すると命を落としてしまう。自分や大切なものを守るためには、これからも生き物を殺す事になるだろう。もしかしたら、人間も手にかけるかもしれない。そうなった時に迷わない様にしないとな。いつか決断しないといけない時が来るんだから……
そんな事を考えていたら、ヒカリンが頭をペシペシ叩いてきた。ヒカリンの特等席は俺の頭の上になっており、何でも髪の毛が良い絨毯になって、ここで寝るのが気持ちが良いらしい。
「マスター、何か難しいこと考えているの。私が解決してあげるの!」
「いや、大丈夫だよ。気にしないでくれ」
俺はそう苦笑いをするとヒカリンは、雷魔法のボルトを使ってきた。
「あばばばばば! な、何するんだ!」
「せっかく契約したのに隠し事は無しなの! マスターが赤ん坊の頃から見てきた私には悩んでいることくらいお見通しなの! さあ、ちゃっちゃっと白状するの!」
「ちょっと待て! 俺を、赤ん坊の頃から見ていたってどういう事だ?」
「精霊は、人間と契約するにはその精霊と人間の魔力の波長が合わないと契約できないの! だから一生契約できない精霊がいる中、マスターは称号のせいか全属性の精霊と波長が合うとても珍しい人間だったの。だからいろいろな精霊に大人気だったけど精霊のみんなでトーナメントをして私が勝ち抜いたの!」
まさか、ここで『限界なき者』の影響が出てくるとは……
「だから、マスターが母親の胸に顔を埋めて喜んでいた事や、父親の大事にしていた本を破ってしまった事も知っているの!」
な、なんと! 俺しか知らない情報を知っているだと!
「ちなみに、母親の胸に顔を埋めて喜んでいた事は母親にバレていたの」
まじか! だから偶に物凄く優しそうな目で俺を見る時があるのか……
「だから、なんでも話すと良いの! 任せるの!」
そうか、なら話してもいいか。そうして俺がさっき思った事をヒカリンに話した。
「そういう事なら簡単なの!」
簡単? どういう事だ?
「人を殺さなくていいくらい強くなるの! 人の生死を選べるくらい、戦う意志を失わせるくらいの強さを手に入れれば大丈夫なの!」
……なるほど。戦う意志を失わせるくらいの強さか。
「強くなれるかな、俺」
「強くなれるの! 雷の上位精霊の私がついているから大丈夫なの!」
「上位精霊ってそんなすごいのか、ヒカリン!?」
「今はマスターの魔力供給が少ないからこの姿だけど、マスターの魔力量が増えるにつれて本当の姿になるの! ナイスバディだから楽しみにしておくといいの!」
ナイスバディか。それは楽しみだな。
「そうか。これからよろしく頼むな、相棒!」
「よろしくお願いするの! マスター!」
ヒカリンと本当の意味で契約した気がした。
そんな事を話していると、先生がやってきた。
「あっ、先生。もう、後処理はいいのですか?」
「ああ、中央も大分片付いてきた。レイが手加減無しで魔物たちを焼いてくれたお陰だな。大行進のような争いや戦争で面倒なのは、終了後の後始末だからな。かなりの量の死体を腐る前に処理しないと、病気の元になるか、アンデッドになってしまうからな」
「そうなんですか。じゃあ門の外はその処理に追われているのですか?」
「いや、門の外は私とエリスで処理をしたから大丈夫だ。今回は元々魔物の数が少なかったしね」
そうなんだ。まあ、今までで一番早く終わったって言っていたし。
「さあ、そろそろ時間だ。ジークの書斎へ向かおうか」
「はい! 行きましょう」
俺たちはジークの書斎へ向かった。
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