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119.ダグリスの戦い

「もう私に構わないで!」


 そう言い教室を飛び出すレーネ。頰叩かれたダグリスは呆然とレーネが飛び出して行った扉を見ているだけだった。俺がどうしようかと思っていたら


「おはようっス、レイ」


 ケイトが隣にやって来た。その隣にはダグリスを心配そうに見るエマもいる。


「おはようケイト。それでこれは一体どう言う事なんだ? ……もしかしてあの子の事が関係しているのか?」


 俺がそう言うとケイトは頷く。やっぱりか。ケイトにこうなった原因を聞くと、教室に入って来た時から口論をしていたらしい。だから何故こうなったかはわからないけど、口論の感じからしてあの女の子が関係してるという。


 俺もこのままにはしておけないので、ダグリスの元へ向かう。そういえばエレアは……寝てる。あの騒ぎでも気にせずに寝れるのか。


 周りのクラスメイトは俺が入ってきた事に気がつくと、友達同士でコソコソと話し出す。多分昨日のことなんだろうけど、今はそれよりもダグリスの事だ。


「ようダグリス。派手に叩かれたな」


「……レイか。見てたのか」


「そりゃあ、教室の真ん中でやっていれば見るだろ。見てないのはエレアぐらいじゃないのか。寝てるしな。……追わないのか?」


「俺が追ったってさっきの繰り返しだ。それなら追わない方が……」


「はぁ、ここで追わないと後で絶対後悔するぞ。それでも良いのか?」


 俺がそう言うと、ダグリスは俯いてた顔を上げ俺に掴みかかる。ケイトたちが止めようとするが、俺はそれを止める。


「じゃあどうしろって言うんだよ! 追っかけてもさっきみたいに喧嘩になるだけだ! レーネは俺の話を聞いてくれないし、アルマの事も嫌っている! それなのにこれ以上話をしたって意味がないだろ!」


「それはレーネ本人から聞いたのか?」


「え?」


 俺が聞いた事に戸惑いの声を上げるダグリスの襟元を今度は俺が掴みかかる。


「お前はちゃんとレーネと話をしたのか? レーネが何でお前に怒っているか理由を聞いたのか? どうなんだ?」


「そ、それは……」


「お前がアルマの押しに負けて、なあなあにしているからこんな事になっているじゃないのか? お前はレーネが好きなんだろ? ならなんでちゃんと言ってあげない! 前から思っていたが、ダグリスもケイトも気持ちを伝えなさすぎだ。だからレーネもエマも心配するんだよ!」


 俺は両手でダグリスを掴みながらそう言う。なんか余計な事を言った気がするが今はそれどころではない。ケイトとエマが騒がしいがそれどころではない。


「お前がちゃんとレーネに気持ちを伝えるんだ。その上でしっかりと謝って、アルマの事も認めてもらえ。それしか方法はないだろう。レーネだって本心であんな事言ったわけじゃないだろ」


 俺がそう言い手を離すと、ダグリスは少し頷き小さい声で「ありがとう」と言って教室を出て行った。世話が焼けるぜ全く。……なんでケイトとエマは顔を真っ赤にしているんだ?


 ◇◇◇


「はぁ、はぁ、ぐすっ、ダグリスのバカ! ぐすっ」


 私は勢い余ってダグリスを叩いてから教室を飛び出してしまった。そして気がついたらここに……訓練場みたいね。いつのまにかこんなところまで来てたなんて。


 私は観客席に腰をかける。はぁ、本当は私もわかっている。悪いのは私なんだって。私がアルマの事を認めないで意固地になっているだけなんだって。それに別に私とダグリスは、恋人同士でも無かったし。


 ただ同じ村で同じ年に生まれた幼馴染。小さい村だったから、年の近い友達といえば私とダグリスと他に数人しかいなかった。その中で魔法や剣術に適正のあった私たちは、村にいた引退した団長さんに色々と教わった。


 それからはずっと2人きりだった。あの頃は行動力溢れるダグリスに引っ張られて、色んなところに行ってお母さんに怒られたりもしたっけな。


「いつからダグリスの事が好きだったんだろ……」


 気が付けば何時も2人でいたから、そう言う気持ちもすっ飛ばして2人でいるのが当たり前になっていた。でもアルマが来てからは、それが当たり前じゃない事にようやく気が付いた。私は、アルマにダグリスの隣が取られるのを嫌がっただけ。


「最低だわ、私は……」


 そんな風に観客席に座っていると


「お、女じゃねえか。何してるんだよ?」


「1人で寂しくしちゃってさ。どう? 俺たちと遊ばない?」


「気持ちよくさせちゃうよ?」


 と3人の男たちが私に近づいてくる。何こいつら? ネクタイの色が青色だから3年生なんだと思うけど。気持ち悪い笑みを浮かべて近づいてくる。


「結構です」


 そう言いこの場から立ち去ろうとすると、左腕に痛みが走る。何!? と思い見てみると男に左腕を掴まれていた。


「ちょっと、痛いです! 離してください!」


 私はなんとか振り解こうとするけど、やっぱり男の人の力には敵わない。そしていつの間にか右腕も別の男に掴まれている。


「見た目は田舎娘っぽいけど可愛い方だな」


「ああ、これなら楽しめそうだぜ」


 私は両腕を掴まれて引っ張られる。こうなったら魔法を発動してでも


「土魔法ロック「おっと」きゃあっ!」


 私が魔法を発動しようとしたら、3人目の男に頬を叩かれる。そして私の両頬を掴むようにして睨んでくる。


「もし魔法を使ったらてめぇの顔に消えない傷が付くぜ?」


 そして男は懐からナイフを出し私の頬にペチペチと当ててくる。……悔しい。こんな奴相手に手も足も出ないなんて。私は男をただ睨む事しか出来なかった。


「ここで脱がせてしまうか」


「誰か来るんじゃねえの?」


「大丈夫だって。今頃ホームルームの時間だから誰も来ねえって」


 そして男たちは私の制服を脱がせようと体に触れてくる。嫌! ダグリス以外に触られるなんて! 私はなんとか抜け出そうと暴れるけど、やっぱり力の差があり過ぎて抜けられない。


「ちっ、暴れんじゃねえよ!」


「ぐっ!」


 私があまりにも暴れるので、男はキレて私のお腹を思いっきり殴る。


「ゲホッ! ゲホッ!」


 私は余りの痛みに涙を流してしまう。こんな事になるなら、とっととダグリスに気持ちを伝えておけば良かった。今更後悔しても仕方ないわよね。……初めてはダグリスにあげられないわね。そう思い目を瞑ろうとした瞬間


「てめぇら! レーネに何してやがる!」


 私の今1番思っている人の声が聞こえた。目を開けて訓練場の入り口を見ると、走って来たのか、息を荒げているダグリスの姿があった。


 そして掴まれている私を見て、ダグリスは走り出す。


「ちっ、なんだあいつは? やっちまえ」


 1人の男が私を後ろから逃げられない様に掴み、残りの2人がダグリスをこっちに通さないようにナイフを構える。


「ダメッ! ダグリス逃げて!」


 それに比べて、ダグリスは素手で向かって来る。まずい! あれじゃあダグリスが危ない! そう思い私はダグリスに来ないように言うけどダグリスはそれを無視して走って来る。


「おらぁ!」


 ダグリスが1人の男を殴り、もう1人の男がナイフで切りかかって来るのを避ける。初めの方は勢いのまま優勢に戦ったダグリスだけど、私の事を気にしているのと、2人に囲まれているせいで、少しずつ追い込まれている。


「ダグリス! 私の事は良いからあなたは逃げて!」


 私がいくらそう叫んでも、ダグリスは無視したまま男たちと殴り合う。ダグリスは殴られた痕と、ナイフで切られた痕でボロボロになっている。


 私はダグリスのその姿を見るだけで涙がボロボロと溢れて来る。どうして私のためにそこまでするのよ。どうして逃げないのよ。ただの幼馴染なんでしょ? どうして? どうしてよ? そう何度も思ってしまう。


「やるじゃねえかお前。この女の彼氏か?」


 私を掴んでいる男は気持ちの悪い笑みを浮かべてダグリスに尋ねる。ダグリスは男たちと殴り合いながらも


「……そいつは、俺の女だ! 俺の大好きな女だ! だからてめぇらの汚ねぇ手で触るんじゃねぇ!」


 と言う。私の目からは涙が止めどなく溢れて来る。でもさっきみたいな悲しい涙じゃなくて、ダグリスの思いを聞けた嬉し涙。


 ダグリスはナイフを持った男2人を殴り飛ばし、私の方は向かって来る。私を捕まえていた男は、見るからに狼狽しナイフを私に突きつけて来る。


「て、てめぇ! 近づくんじゃねぇ! これ以上近づいたらこの女を刺すぞ! 良いのか!?」


 だけどダグリスはそんな事は御構い無しと、歩いて来る。


「もしレーネを1ミリでも傷つけてみろ。てめぇをぶっ殺すぞ」


 男はダグリスが放つ殺気に「ひっ!」と怯え出す。そして、その瞬間男の力が弱まった。私はその隙に男の手の中から抜け出す。


「あっ」


「歯食いしばれ!」


 私が抜け出した事に男は声を出すが、私と入れ替わるようにダグリスが男に迫り、そして男の顔を殴り飛ばす。ダグリスの魔力を纏った右手をモロに食らった男は、3メートル程吹き飛びそのまま気を失う。


「ダグリス! 大丈夫!?」


 だけど、そんな男たちよりダグリスの方が心配だ。私は直様ダグリスの元へ駆け寄る。すると


「きゃあっ!」


 ダグリスに思いっきり抱き締められた。


「レーネ。俺はお前の事が好きだ! お前には色々と心配かけたし、アルマの事もある。これから考える事は一杯あるかもしれない。だけど俺と一緒にいて欲しい。俺とこれからを歩んで欲しい! 好きだレーネ!」


 私は顔を上げる事が出来なかった。だってこんな顔を見られたら


「レーネ?」


 でもダグリスはそんなのを気にしないで私の顔を両手で挟んで上に向ける。ちょっ、だ、だめ!


「ぷっ、なんて顔してるんだよ」


 今の私の顔は嬉し涙が止めどなく溢れてびしょびしょな上に、嬉し過ぎてにやけているのに見られてしまった。


「……だって嬉し過ぎて。ダグリス。私もダグリスの事が好き! 私も一緒にダグリスと過ごしていきたい!」


 私は今思っている大切な気持ちをダグリスに伝える。少し心配そうな顔をしていたダグリスは私の言葉を聞いてフッ、と笑い、そしてダグリスはそのまま顔を近づけて来る。


「レーネ」


「ダグリス」


 私はそのまま目を閉じてダグリスと……。

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