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115.将来

 アレクシアたちと俺との婚約の発表が終わってからは、王宮内の会議室へと案内された。ここに集まったのは、王様、獣王、教皇の各王様たちと、俺にアレクシア、フェリス、キャロ。それにエイリーン先生とエリザ夫人だ。2人はジークとエリスの代理らしい。それと俺頭の上から移動しないエクラだ。


 他のみんなは別室で待機しているらしい。まあ、王宮内を初めて見るメイちゃんたちははしゃいでいたので大丈夫だろう。ヘレンたちもいるし。


 そして王様が、みんなが座り終えたのを確認すると話し出す。


「まずは、ゴブリンの件だが本当に助かった。レイたちがいなければ男爵だけでなく、周辺の領地もメチャクチャになっていただろう」


 そう言い頭を下げる王様。俺は急な事に驚いてしまった。そんな簡単に頭を下げられては困る。


「レイモンド陛下、頭を上げてください! 私たちは偶々男爵領にいただけで偶然なのですから」


 俺が慌てて言うと一応は頭を上げてくれた。


「そうだな。これ以上言っても、問答が続くだけだ。それよりも今後の話をしようか」


「今後の話ですか?」


 俺が王様は聞き返すと王様は頷く。


「そうだ。まずはお主の事だが、ランウォーカー辺境伯とも話し合った結果、お主には学園卒業後ランウォーカー辺境伯家とは別のランウォーカー家を作ってもらう事になるだろう」


「それはまた…….」


 予想外の話が出て来た。ジークの後を継ぐのではなくて、新しく作らなければならないとなると色々としなければならないのではないのか。俺は目の前に置かれた紅茶を飲もうと手をつける。


「その後はお主には、国を作ってもらう事になる」


「ぶうぅぅぅっっ!」


「きゃあ!」


「キュイッ!」


 俺は余りの言葉に、口に含んだ紅茶を吹き出してしまった。隣に座っていたアレクシアが驚き、膝の上に移動していたエクラにかかってしまった。ごめんよエクラ。俺はアイテムリングからタオルを出しエクラを拭いてあげる。獣王と教皇は笑い過ぎだ。


「ゲホッ、ゲホッ。……それはどういう事でしょうか?」


「それは、お主には申し訳ないが息子たちのためだ」


 王様がゴブリンの話の時以上に申し訳なさそうな顔をする。


「お主も知っての通り、わしの後を継ぐのはアルバートとなっておる。だが、中にはアレックスを担ぎ上げようとする貴族もいるのだ。あいつらは仲は悪くは無いが良くも無い。

 そんな中にアレクシアと婚約したお主が現れた。アレクシアと婚約するだけなら貴族たちもなにも言わないだろうが、そこに同盟国のワーベストとアルカディアの王女とも婚約したとなるとどうなると思う?」


「……もしかして俺を担ぎ上げようとするものが?」


「いないとは言い切れないだろう。お主は武力に関しては文句無しの実力者だ。貴族たちはゴブリンの話は知っておるからの。

 政治に関しても、アルバートやアレックスが王位に継ぐよりも、お主がついた方がより良くなるのでは? と考える者も出てくるだろう。ワーベストとアルカディアとの友好関係が、より磐石なものになるからな」


 フェリスとキャロと婚約しているからか。確かにそう考えたら一貴族としてやっていくのは無理なのか。


「他にもアルバートより才があり政治にも詳しいヘレン嬢も側にいるし、シルフィード学園長の弟子でもある。その上、わしも話に聞いて驚いたが、その膝の上におる子などもある」


「キュイ?」


 エクラは自分の話をされたのがわかったのか、王様の方を見て首を傾げる。俺はそんなエクラの頭を撫でる。確かにそれだけ聞けば、俺の意思関係なく貴族たちは持ち上げるだろう。それに民も入れば内乱になるかもしれない。だけど……。


「お父様。話が性急過ぎるわよ。まだ学生のレイにそんな話をしても仕方ないじゃ無い。お兄様たちが心配なのはわかるけど、まだお父様も降りるつもりは無いのでしょ? 卒業してからでもその話をしても遅く無いと思うわ」


「……そうだな。確かに急ぎ過ぎたな。すまないレイ。今のは頭の片隅にでも置いておいてくれ」


 ……いやいやいや! 無理でしょ! そんな事言われたら意識してしまうって!


「あっ、もしそうなればランウォーカー辺境伯家はどうなるのですか?」


 これでも、一応はランウォーカー辺境伯家の後継だ。結構自由にさせてもらっていて忘れそうになるが。俺がそう言うと王様はエイリーン先生やエリザ夫人の方を見る。


「ジークはウォントを継がせるそうよ」


「あれ? マルコ兄上でなくてウォント兄上ですか?」


 俺に万が一のことがあれば次に継ぐのは長男のマルコの筈なのに、何故弟のウォントになるんだ? そう疑問に思い尋ねると、エリザ夫人が答える。


「マルコが辞退したからよ」


「えっ?」


「『私には領地を継ぐ権利も才能も無い。だから家督はウォントに譲る。私はこの筋肉で民を守る盾となろう!』って言うのよ。はぁ、性格が治ったのはいいけど、違う方に問題が出てきたわ」


 そんな事を言いながら頭を抱えるエリザ夫人だが、顔は心なし嬉しそうだ。まあ、あんな我儘だったマルコがそんな事を言うようになったんだからな。それにしても筋肉好き過ぎるだろ。学園でも密かに筋肉愛好会みたいなのを作ってるみたいだし。


「ジークも言いづらいけど才能ならマルコよりウォントの方があるだろうって認めたのよ。だから辺境伯領の事は気にしなくてもいいって。自分のやりたいようにやれって言うのがジークからの伝言」


 俺の方を見て言うエイリーン先生。俺のやりたいようにか。今は戦争の事とか、魔族の事で頭が一杯だけど、それらが落ち着いたら考えても良いかもしれない。卒業まで待ってくれるみたいだし。


「お前が独立するなら俺たちも力を貸してやろう」


「おっと、獣王殿だけ抜け駆けはズルいな。もちろんアルカディアもだ」


「わしのせいでお主に無理を背負わすことになる。もちろんわしもだ。義息子よ」


 それぞれが俺の方を見て微笑んでくれる。


「もちろん私たちも手伝うわよ」


 とアレクシアたちも微笑んでくれる。みんながいたら心強いな。


「キュッキュル!」


 私もいるわよ! って感じでエクラが羽をバッサバッサする。もちろん忘れてないさ。


 王様たちが助けてくれると言っても、国を建てるなど言葉で表すほど簡単な事では無い。だけど、せっかくのチャンスだ。みんなの力を借りる事にはなるけど、目指してみるか。


「キュルッ! キュルル!」


 ……何を興奮してるんだエクラは。ほらうりうりしてあげるから落ち着きなさい。

日常の話って何がありますかね?


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