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106,援軍

「ギギィ!」


「ふぅ、これで20体目か」


 俺は今、男爵領から少し離れた森へと来ていた。離れたと言っても5キロほどにはなるが。


「例の大群から逸れたんっスかね?」


 ケイトも狩り終えたのか俺の側へとやってくる。前にアレクシアと話してから3日が経った。俺たちが領内の手伝いをしていたところ、門外で時折ゴブリンの姿が見られると、アレクシアのところに報告があった。


 みんなで話し合った結果、置いていたらまたこの前の二の舞になるから討伐する事になったのだが、兵士たちを領地から離れさすわけにはいかないので、俺とケイト、エアリスが出る事になったのだ。


 そして近くの森へやってくれば、出るわ出るわと切って行っているのだが。


「はぁっ!」


「ギィィィ!」


 おっ、エアリスがゴブリンソルジャーを倒したところ。俺だけで20体。他の2人の分も合わせると結構な数になるんじゃないか?


「ご苦労様エアリス」


 俺はカゲロウを納刀するエアリスに話しかける。


「ええ。それにしても思ったよりいるわね。やっぱり逸れかしらね?」


 エアリスもケイトと同じ事を言う。やっぱりそうなのだろうな。この数がボコボコと現れるわけもないからな。


「最悪の場合、マングス男爵が複数放置していたって事もあり得るっスね」


 ケイトはケラケラと笑いながらそう言う。俺とエアリスはその発言に顔を見合わせる。……ありえそうだから否定が出来ない。そうなったらかなりまずいのではないか? 一箇所放置しただけで3千程の数になった。それが複数になると……。


「急いで戻ろう。そうだよ。どうして思いつかなかったんだ! あの男爵が1つだけしか放置していないなんてありえないじゃないか!」


 俺はそう言い駆け出す。俺の後ろにエアリスとケイトも着いて来る。それから10分ほどで領地に戻り、アレクシアの下へと向かう。


「アレクシア、いるか!?」


 アレクシアが仕事場に使っている部屋を蹴破るように開ける。中にはアレクシアと家令のベントンさんが話し合っていたようだ。今は驚きでこっちを見ているが。


「ど、どうしたのよレイ。何かあったの?」


「いきなりですまない。だけど聞いてほしい話があるんだ」


 そしてさっきの話をアレクシアたちにも話す。その事にベントンさんは驚きの表情を浮かべ、アレクシアは頭を抱える。


「……確かにありえない話じゃ無いわね。はぁ、どうして今まで考えなかったのかしら。確かにあれだけ放置した男爵が他にも放置していないわけ無いわよね」


「確かにそうですな。私が知っているだけでは1つだけだったのですが、他にももしあれば、同じ様に放っているでしょうな」


 みんなでどうするか話し合おうとした時に、再び扉が開かれる。入ってきたのはエレアだった。


「アレクシアさん……みんなもいたんだ。ヘレンさんが帰ってきたよ」


 おっ! ヘレンが帰ってきたのか! 俺たちはみんな急いで外へ出る。するとそこには500人程にはなるだろう兵士たちと、ヘレンさんと、その隣には60歳近くにはなるだろう老人が立っていた。


「レイ〜!」


 すると横から誰かが飛び出してきて俺に抱きつく。頭にはピコピコと動く耳にお尻にはブンブンと振られる尻尾が付いている。


「大丈夫だったか、フェリス?」


 俺がそう聞くと、フェリスは顔を上げ


「もちろんよ! えへへ〜、久し振りのレイの匂いだあ〜!」


 と、俺の胸元に擦り寄ってくる。ちょっ、擽ったいって。


「もう、フェリスったら。それよりも、まさかケンヌス子爵自ら来てくださるとは思わなかったわ」


 アレクシアがヘレンの横にいる老人へと話しかける。あの人がケンヌス子爵か。なんだか優しそうなお爺さんだな。


「ホッホッホ。何、アレクシア殿下の頼みとあれば、すぐにでも参りますぞ。それにマングスの小僧をこのままにはしておけませんからのう」


 そして殺気を放つケンヌス子爵。なんだこの爺さんは。俺がケンヌス子爵を見ているとそばにヘレンが来ていた。


「ヘレン、無事で良かったよ」


「もちろんですよ。私が帰ってくる場所は、その、レイ君の隣だけですから」


 そう言い、そっと俺の右手を握るヘレン。顔も真っ赤にしている。……めっちゃ可愛いんですけど。左側は擦り寄ってくるフェリスに右側にはそっと寄りかかってくるヘレン。2人とも可愛すぎる。


「ほら、いつまでも外でイチャついてないで中に入るわよ」


 アレクシアは苦笑いのまま屋敷へと戻っていき、エアリスはジトっと俺を睨んでからアレクシアについていく。ケイトは俺に呪詛を呟きながら帰って行き、俺たちはその後に続く。フェリスとヘレンが俺の腕にしがみ付き、それを周りの人たちはヒソヒソと話している。少し恥ずかしいぞ。


 少し恥ずかしい思いをしながらも屋敷に戻り、前に集まった部屋へとみんなが集まる。


「まずは、わしの挨拶からしておこうかの。わしの名前はエルマー・ケンヌス子爵じゃ。前王の時は第二軍団長をしておった。今でも程々には動けるはずじゃ。よろしくのう」


 そう言いにっこりと笑うケンヌス子爵。見た目は好々爺なのだが、纏う雰囲気が歴戦の戦士だ。さっきの殺気の正体はこれか。


「初めまして、私の名前はレイヴェルト・ランウォーカーと申します。よろしくお願いしますケンヌス子爵」


「うぬ、よろしくのうレイ殿。ふむ。お主は底が見えぬのう。周りの仲間たちもなかなかの実力者ばかりじゃ。これも新しい世代が育っているということか」


 ケンヌス子爵が俺たちを順番に見て、しみじみと呟く。俺たちは苦笑いのしかできなかった。


 それから、俺たちはそれぞれ起きたことを話した。ヘレンとフェリスたちは、あの後、少し魔物に出会っただけで、他には問題はなかったそうだ。順調にケンヌス子爵領まで辿り着き、ヘレンが代表でケンヌス子爵へ会いに行き、今起きている事を説明したとの事。


 ケンヌス子爵は快く了承してくれて、兵も準備してくれたが、少し時間がかかってしまい今日になった様だ。兵500をケンヌス子爵自ら率いてくれたらしい。それで治安は大丈夫かと尋ねたら、領地にはまだ500人ほどいて、息子がいるから大丈夫との事。さすがは元軍団長だな。抜かりがない。


 女性たちはケンヌス子爵のところで保護してくれたそうだ。ダグリスたちも一緒にいるとの事だ。何から何までやって頂いて有り難い。この恩は返さないとな。


 その次は、俺たちに起きた事と、さっきの話していた事をケンヌス子爵たちに話す。その事を話すと、一様に表情を暗くした。


「……ふむ、あり得ん話ではないな。あの馬鹿者が。昔に滅びた領地があるというのに、同じ事を繰り返しよって」


 ケンヌス子爵は苦々しそうに呟く。隣の領地だったから、前マングス男爵とも縁があったそうだ。その時から今のマングス男爵を知っていたが、我儘な少年だったらしい。


 前男爵が何度言っても治らずに、前男爵は、後悔しながら亡くなっていったと言う。その後も、ケンヌス子爵が何度も言ったが、治らず今日に至った。そしてこの結果だ。これなら恨まれても仕方がないと思う。


「このままゴブリンが出てくるのを待っていても仕方あるまい。わしの兵士を幾つかに分け、男爵領内の村を確認させよう。それと同時に冒険者ギルドへ依頼し協力をしてもらうしか、今は手が無いじゃろう。どうかの、アレクシア殿下?」


「そうね。その間私たちは、領地の復興を手伝おうか思うわ。それでいいかしらみんな?」


 俺たちはアレクシアの言葉に一様に頷く。


 その後色々と話をし、今後どうするかが決まり、今日は兵士を休ませるそうだ。昨日の昼間に出て、強行軍で来たらしいから兵士も疲れているだろうとの事だ。こちらとしても異存はなかったので、俺たちも休む事にした。


 明日からまた忙しくなるから、俺もゆっくりと休むか。久し振りにステータスも確認してしておかないとな。

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