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95.魔力の正体

 エアリスたちと別れた俺は、再び闇魔法を自分にかけ、暗闇の中を駆ける。当たり前だが、こういう隠密行動はしたことが無いので、素人に毛が生えた程度だ。ただ物陰に隠れて、ひっそりと進むだけ。


 時折聞こえる女性の鳴き声に、盗賊たちへの苛立ちを募らせながらも、この村の中心に辿り着いた。


「ここは派手に1発ぶちかますの!」


「そうね、注目を集めるなら雷魔法が良いかもね」


 頭の上にいる精霊たちの意見を取り入れるとするか。村の中央では中心に大きな焚き火をし、そこに盗賊たちが囲うように座って何かを食べている。焚き火の上には猪のような生き物が焼かれている。


「よし、ライトニングブラスト!」


 俺は焚き火目掛けて、雷魔法を放つ。雷の球が放たれると同時に俺も身体強化をし走り出す。盗賊たちはなんの音かと、こちらを見るが既に遅い。


 盗賊たちを通り過ぎライトニングブラストが焚き火へ着弾すると、雷鳴を轟かせ、周りに雷を放つ。この魔法は当たった場所から半径5メートル程に雷を放つ魔法だ。集団相手にはもってこいだな。


 それを食らった盗賊たちは声を出すことも出来ず、黒焦げとなって倒れる。そして、周りの家からは雷の音を聞きつけて次々と現れる。さあ来い。


 ◇◇◇


 今のはレイの魔法の音ね! 今の内に動かないと!


「さあ、みんな。他に囚われている女性たちの場所を教えて!」


 私は先ほど助けた女性たちに声をかける。女性たちも逃げられると分かってからは、私に色々と情報を教えてくれる。ただ、疲労が溜まっていてうまく動くことが出来ない女の子もいるので、周りで助けていかないと。


 私は女性たちに教えられるながら、他の家に入っていく。どこも女性たちがぐったりとしながら、先ほどの音に怯えていた。唯一の救いは私が助けた女性たちと他の女性たちが面識があったことだ。


 昼間は性の相手ではなく、この村で盗賊たちの衣食住の世話をさせられていたらしい。そのため、他の家に捕まっている女性たちとも面識があるそうだ。私が入った瞬間は怯えられたけど、助けた女性たちが説得してくれたおかげでみんな逃げてくれる。


 そして、その家が多分最後だろうと思われるところに行くと


「待ちやがれ!」


 と盗賊がやってきた。全員レイのところには行ってないのね。全員で10人ほどだけど女性たちを守りながらと少し厳しいわね。でも、ここで退くわけにはいかないわ。私は腰に下げているお父様から頂いた剣、炎剣カゲロウを抜こうとすると


「エアリス様、ここは私におまかせ下さい。エアリス様は予定通りここの女性たちを助けたら、皆様の元へ戻ってください」


 レイの精霊、ライトがそう言う。


「あなたはどうするの?」


「私はこいつらを倒した後に、レイ様に合流します。確認したい事もありますから」


 そう言い微笑んでくる。私の後ろで、ライトの微笑みを見た女性たちが「はぅ〜」と声を上げる。私にはレイがいるから気にならないけど、確かに見惚れる程の笑顔だわ。


「わかったわ。後は任せるわね」


 私はそう言い女性たちを伴い、最後の家に入っていく。後ろでは盗賊の叫び声と、ライトの笑い声が聞こえた気がするけど、今は気にしていられない。たとえ、ライトが笑いながら攻撃していたとしても。


 ◇◇◇


「ぐへぇっ!」


 これで50人ほどか? 数だけは多いな。全く敵わないのを見て、盗賊たちも及び腰になっているし。


「どうした。盗賊ってこの程度かよ?」


 俺が簡単に挑発すると、盗賊たちは怒り出して走り出す。チョロいな。


「死ねぇ、クソガキ!」


 そう言い剣を振り下ろす盗賊。遅過ぎるので俺は盗賊の懐に入り、左手で盗賊の剣を反らし、そのまま左手で盗賊を殴り飛ばす。


 後ろから斬りかかろうとする盗賊には、そのままロウガの石突きで突く。石突きをモロに腹に食らった盗賊は悶えるが、俺はロウガを縦に回し、石突きで顎を打ち上げる。そしてそのまま回すと穂先が盗賊に向き、そのままガラ空きの喉に突く。


「くそっ! こんな化け物敵わねえよ! 俺は降りるぜ!」


 もう俺には敵わないと思ったのか盗賊たちが次々と逃げ出す。だが逃がすわけないだろう。


「雷魔法エレクトリックプリズン!」


 俺が空に向かって雷魔法を放つ。そしてある程度上に飛ぶと、そこから四方八方に雷が放たれる。範囲は盗賊が住んでいた家までにしているからエアリスたちには影響が無いはずだ。そして放たれた雷から棘のように新たに雷が飛び出し、他の雷へと伸びていく。柵のように出来た雷の牢獄の完成だ。


「な、なんだよこれ! ギャアア!」


「これに触れると感電するぞ、って遅かったか」


 今、盗賊が雷の牢獄に触れたため感電した。それを見ていた周りの盗賊たちはもう少しで触れそうだったので慌てて下がる。慌て過ぎて尻餅をついている奴もいる。


「こうなったら、あのガキを殺すしか無いぞ! 野郎どもブッ殺せ!」


 多分この盗賊団の頭だろう。そいつが叫ぶと、盗賊たちも、もうそれしか残っていないとわかったのか武器を構え俺に向かってくる。


「ライトニングボルテックス身体付与」


 降伏するなら軍に突き出して終わりだったが、向かってくるなら容赦はしない。元々鬱憤は溜まっていたんだ。お前らで払させてもらう。


 ○○○


「これは、派手にやりましたねレイ様」


 俺が最後の1人を刺し殺したところでタイミング良くライトがやってくる。そして俺の周りを見てそう呟く。俺の周りには盗賊だった(・・・)ものの塊がそこらかしこに転がっている。全てが黒焦げになっているのは、雷魔法で消し炭にしたからだ。


「そっちはどうなった?」


「はい、こちらは全ての女性を助け出してエアリス様が皆様のところへ連れて行きました。私は途中で出くわした盗賊を倒した後にこちらへやってきましたので後はわかりませんが。気配だと合流できたようですが」


「そうか。火魔法フレイムウォール。風魔法ウィンド」


 俺は散らばっている死体を火魔法で燃やし、灰となったもの風で吹き飛ばす。これで少しはスッキリとしただろう。


「おや、1人だけ生きているようですが?」


 ライトが原型を留めている盗賊の頭を見る。


「ああ、こいつには聞きたいことがあるから生かしておいた。今は気絶しているので縛って置いておこう。それより、ライトが気になる魔力っていうのを先に確認しておこう」


 俺はそのまま盗賊の頭が使っていた屋敷へ入る。中には盗んだであろう金貨や、宝石が置かれていた。そしてその中を進むと


「……なあ、あれって」


「ようやく思い出しましたよ。道理で気になるわけですね」


 ライトは納得がいったようで頷いているが、なんでこんなところにいるんだ? 俺たちが近づくと向こうも俺たちに気が付いたようで、顔を上げ


「キュル?」


 と首を傾げる。目の前には1㎥程の檻があり、中には体長30センチほどで、体全体が全くくすみがなく白金に輝いている子竜が寝そべっていた。物凄く嫌な予感しかしない。

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[一言] 1.「ガラ空きの喉に突く」→「ガラ空きの喉を突く」 2.「灰となったもの風で吹き飛ばす」   →「灰となったものを風で吹き飛ばす」
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