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93.帰り道

 キャロたちと別れて、1週間が経とうとしていた。俺たちが乗る馬車は、何事も起こらずに無事にアルカディア教皇国とナノール王国との国境を越える事が出来た。


 唯一問題があったとすれば、キスの事を追及された事だ。あの後、私たちにもするべきと言われて、俺はつい頷いてしまった。しなかったらどうなる事やら。別にキスするのは良いんだよ。俺も嬉しいし。ただ、ギラギラした目で見られるのはちょっと。メイちゃんも「私もする!」っていうし、ロイは「さすが兄貴!」って褒めるし。


 それから、前にライトが話していた女神の加護もわかった。それは『結びし者たち』という称号だった、


 結びし者たち:この称号を持つ者と契約を結ぶ事によって、契約を結んだ者は経験値増加、各ステータスも上昇する。この称号を持ちし者は、契約した人数に応じてステータス上昇。但し、この契約は、称号を持ちし者が、心から信頼している者にしか発動しない


 というものだ。契約自体は何でも良いが、俺が信頼している人で、その上、相手も俺に対して悪感情を持っていない人に限るらしい。その上、両者が了承すれば、何時でも解約できるらしい。但しペナルティが発生するらしいが。


 夜、みんなが集まった時にこの事を話すと、婚約者組は全員が契約済みだった。多分、『婚約』という契約によって結ばれたのだろう。


 ロイとは『師弟』という契約で、ダグリスやレーネ、エレアやバードン、シズクまで『臣下』という契約で結んだ。本当に良いのかと言ったのだが、みんな構わないと言う。これで俺は彼らを雇わないといけなくなった。まあ、良いけど。


 ケイトとエマは『寄親・寄子』の契約をした。確かに2人は男爵家でうちより低いけど良いのかな。プリシアさんとメイちゃんは特に力を求めているわけではないから構わないと言うし。


 この契約には媒体となるものが必要らしく、俺と婚約者たちは婚約指輪、他のみんなはお揃いのブレスレットにした。これなら邪魔にはならないし。みんなも今以上に成長できると喜んでくれしな。


 そんな事がありながらも、俺たちは帰っていた。メイちゃんやロイは最初こそははしゃいでいたが、代わり映えのしない景色に飽きたのか、今は寝てしまっている。こんな2人を見ると、初めて王都に行った時のフィーリアとクロナを思い出す。2人は元気にしているだろうか。クロナにも指輪が届いていると良いのだが。


 そんなことを考えていたら


 ドドドドドドドドォン!


 と大地を揺らすような地響きが聞こえてくる。なんだ?


「ア、アレクシア様! た、大変です! と、盗賊が攻めてきました!」


「盗賊ですって!」


 アレクシアが驚きながらも、窓を開けると、そこには馬に跨った男たちが沢山いた。全員で20人ほどだ。ここは山と山との間の道になる。どこかで待ち伏せをしていたのだろうか。そして後ろばかりかと思えば、前からも30人ほど馬に跨った男たちが走ってくる。挟まれたか。


「アレクシア。迎え撃つぞ。俺が最初に出て魔法で攻撃するから、ダグリスたちの方の指示を頼む。フェリスとエアリスはヘレンたちを守ってくれ!」


「わかったわ!」


 アレクシアが返事をしてくれ、他のみんなは頷いてくれる。ロイは震えているが剣を持ってメイちゃんたちを守ろうとする。良い心構えだ。


「御者さん、馬車を止めてくれ!」


「で、でも」


「いいから!」


 俺が強く言うと、御者は渋々ながら馬車を止めてくれる。そして、俺は直様、馬車から降り魔法を放つ。


「風魔法ウィンドサイクロン!」


 盗賊たちは突然目の前に現れた竜巻に驚く。馬たちも驚き足を止める。俺はそのうちに身体強化をし、盗賊たちに攻める。


「ちっ! 野郎ども、迎え撃て!」


 俺が攻め入っても、怯まないな。なかなか訓練されている。盗賊たちは号令が聞こえると、みんなが剣や斧を構える。後ろでも剣戟の音が聞こえる。向こうも始めたか。


「ガキが1人だけだ。ビビんじゃねえぞぉ!」


「おおおぅ!」


 そう言い馬を走らせる盗賊たち。ただのガキだと思ってちゃあ痛い目見るぜ!


「ライトニングアロー」


 俺は盗賊目掛けて雷の矢を放つ。俺の放った矢が刺さった盗賊は、感電し馬から落ちていく。俺は走りながらも次々と矢を放ち、盗賊への牽制をする。


「ぎゃあああ!」


「くそっ、腕が!」


「矢に当たるんじゃねえ! 避けるんだ!」


 矢が刺さった者は落馬し、運が悪ければ馬に踏まれて死ぬ者もいるし、剣で防いでも、魔力を纏わせていないと感電するため、剣を落とす者もいた。俺はその隙を見逃さない。


 俺は刺しては払い、殴っては切り裂くを繰り返す。それを少し繰り返したが、まだ半分近く残っており、今は馬から降りているが俺を囲う様に立っている。


「くそっ! 豪華な馬車に護衛もいねえから油断したぜ。だが、女子供は貰っていくぜ!」


 そう言い剣を構え走ってくる盗賊。他のやつより動きが少し良いが、その程度だ。俺はロウガで剣を弾き、そのまま回転し石突きの方で薙ぎ払う。骨が折れる感触がするが、気にせず振り抜く。盗賊は変な声を出しながら吹き飛んだ。


 もうこれ以上は敵わないと悟ったのか次から次へと逃げて行く。逃がすか!


「ウィンドカッター」


 俺は盗賊目掛けて風の刃を放つ。後ろから迫る風の刃に、盗賊たちは顔を青くするがもう遅い。ザシュッ! っと、音がするのと同時に切り口から血飛沫が噴き出て、先程まで生きていた者は、ただの肉の塊へと変わった。


 それから生き残りはいないか確認してからみんなの元へ戻る。みんなも既に終わっていた様だ。


「みんな大丈夫か?」


 俺がみんなに聞くと、みんな大丈夫と答えてくれる。御者さんが少し怪我しただけで、既にアレクシアが治してくれた。


「お兄ちゃ〜ん!」


 みんなを確認しているとメイちゃんが抱きついてくる。目には涙を溜めて。よっぽど怖かったんだな。俺は頭を撫でてあげると、メイちゃんは顔を擦り付けてくる。よしよし。


「それで、レイ。どうするの?」


 アレクシアはそう言い、盗賊の死体を見る。死体は放っておくとアンデッドになってしまうからな。処理しなければ


「片付けよう。レーネ。地面に大きな穴を掘ってくれ。俺とダグリス、ケイトにバードンと御者さんで死体を入れるから他のみんなは休んでいてくれ」


 俺がそう言うと、女性陣は困った様な嬉しい様な表情を浮かべる。女性陣に死体の片付けをさせる必要なんか無いしな。


 そうして俺たちは手分けして死体をレーネの開けた穴に入れていき、死体を燃やす。火魔法はあまり高く無いが死体を燃やす程度なら大丈夫だ。そして燃え終えるとレーネに地面を埋めてもらう。死体を燃やした時の匂いが充満していたので、風魔法で吹き飛ばしたが、嫌な匂いだった。


 俺たちは盗賊の処理のために時間を費やしたので今日は、襲われた場所から少し離れた森で野宿する事になった。襲われた場所の近くだと、また現れそうな気もするが、何も見えない夜に進むよりかはいい。馬も疲れているしな。


 メイちゃんやロイは昼間の襲撃で精神的に疲れたのかもう寝てしまった。プリシアさんが側に寄り添っている。


「レイ。見張りはどうするんだ?」


 みんながご飯を食べ終わると同時にダグリスが聞いてくる。日の出まであと10時間と言ったところか。そう言えば、何気に野宿って初めてだったな。今までは何とか町について宿で休んでいたから。


「5班作ろう。初めがダグリスとレーネ。2番目がケイトとバードンとエマ。3番目が俺とエアリスで、4番目がシズクとエレアで、5番目がアレクシアとヘレンで行こう。プリシアさんはメイちゃんとロイについてあげてください」


 俺がそう言うとプリシアさんは頷く。順番が決まったので、ダグリスとレーネを残して、みんな毛布を取り出す。万が一の時に買っていたのが役に立った。


 俺はそんな中こっそりと抜け出す。昼間の襲撃の時に実は数名ほど逃しておいたのだ。そして、ライトに姿を消してこっそりと後をつけてもらっていたので、アジトの場所もわかっている。中にはまだ200人ほど残っているらしい。かなりの大きさだ。


 しかし、みんながぐっすりと眠れる様に、盗賊たちには消えて貰おう。

いつもより早いですが投稿します!

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