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92.また会おう

 ガルレイクを元に戻してから5日が経った。あの後、3日程で目を覚ましたが、体がうまく動かせない状態へとなっていた。リハビリをすれば動かせる様になるようだが、それも時間がかかるらしい。


 それと同時に、記憶も少し失っていた。ここ数年の記憶を失くしていたのだ。ガリアンさんが確認すると、父親が亡くなった直後ぐらいまで無いらしい。もちろん俺たちの事は誰かはわかっていない。


 ガリアンさんとメリエスさんは、生きているだけでも良いと言う。これからは、3人でリハビリを頑張って過ごして行くそうだ。ここからはガリアンさんたち家族の問題だから俺たちがどうこう言う事では無いしな。


 俺たちはキャロの連れてきた騎士団と一緒に怪我人の手当てや、瓦礫の撤去の手伝いなどをして3日程過ごしてから首都へと帰った。最後にガリアンさんたち3人が寄り添って見送ってくれたのは、印象的だった。


 そして、4日ほど首都で過ごして今日、俺たちは宮殿の入り口にいる。理由は、今日首都を出る日だからだ。今はみんなで馬車に荷物を乗せたりとしているのだが


「なんであいつは顕現したままなんだ?」


 俺の視線の先には、荷物を運んでくれる侍女から荷物を預かるライトの姿だった。ライトは何故か、他の人間からも姿が見える。ガルレイクを元に戻した後にアレクシアたちが戻ってきた時にはかなり驚かれたからな。


 俺の後ろにいつも立っているのだが、人当たりが良く、かなりのイケメンのため、侍女からは熱い眼差しが。今も


「ありがとうございます」


 と笑顔でお礼を言えば、荷物を渡した侍女は顔を真っ赤にして去っていく。そして裏でキャアキャアと騒いでいる。微笑むだけで女の人を落とすなんて凄いなあいつ。


「うぅ〜、私だって魔力があればあれぐらい簡単なの!」


「そうよ主様。だから私たちにもっと魔力を!」


 ライトの姿を見て、俺の頭の上で羨ましそうに見ているヒカリンとマリリン。ここ最近結構な量渡しているがまだ足りないのか?


「後少しなの!」


「そうよ。後少しで追いつける!」


 ……必死だな。別にライトが来たからって、ヒカリンたちを放っておくわけ無いのに。まあ、可愛いから言わないが。ライトは女神の加護があるせいで、ほんの少しの魔力でも大丈夫らしい。その上、ライト自身も戦えるとか。まだ見たことは無いが。


 俺がライトと侍女たちのやり取りを見ていたら


「羨ましいの?」


 と後ろから声がする。振り向くとそこには、首を傾げるキャロの姿があった。


「いや、まあ、それは、ね」


「ふぅ〜ん?」


 俺が言葉を濁すと、キャロがじと〜と見てくる。そりゃ、笑顔だけで女の人が顔を真っ赤にして見てくるのだから、男としては羨ましいでしょ。


「私はあなたの笑顔の方が良いけどね」


「え?」


 キャロがボソッと何かを呟いたのだが小さくて聞こえなかった。その後、何度聞いても答えてくれなかった。何を言ったんだ?


「それよりも、もうお別れなんて寂しいわね」


 とキャロは言う。キャロとは一旦ここでお別れになる。確かに国の象徴である聖女がいなくなれば、国としては困ると思うし。


 教皇やクリスティーナ様は構わないというのだが、キャロは発表するまでは残るというので、俺はキャロの意見を尊重した。俺も寂しいが、キャロの意思を曲げてまでも強要することでは無い。俺が我慢すれば良いだけだからな。


「帰ったら直ぐに発表になる。その後にはまた会えるんだから気を落とすなよ」


 俺がそう言うと、キャロはぷくっと頬を膨らませて怒った表情を浮かべる。どうした?


「もう、レイは女心がわかってないわね。少しの間でも離れるのは悲しいものなのよ」


 そう言いそっぽを向きながら手を広げるキャロ。偶にこうして甘えてくるキャロ。その事を言うとキャロはそんな事ないと怒るが、やっぱり甘えん坊だ。俺は苦笑いをしながらもキャロを抱き締める。キャロも抱き締めてくれる。


「ごめんな。俺にはまだ難しいようだ」


「もう、そう言う事は言わないものよ。……レイの心の音が聞こえる」


 俺の胸元に耳をつけ目を閉じるキャロ。なんでも俺の心臓の音が落ち着くらしい。前にした時に気が付いたらしく、それからはずっとこんな感じだ。


 俺はキャロの頭をポンポンと撫でながら、キャロを抱き締める。周りからは、ニヤニヤと見られているが、もう諦めた。侍女たちはこっちの姿を見てもキャアキャアと騒ぐ。そこに


「キャロライン様。余り人前でそのような事は……」


 とメリーさんがやってくるが


「そんなの気にしないわ。私のやりたい時にやるわ」


 と、そのまま抱きついたままだ。こうなったら俺にはどうにも出来ない。俺はそのまま頭を撫でる。まあ、気持ち良さそうにしているから良いか。


 そこに荷物を積み終えたみんながやってくる。アレクシアたち俺の婚約者たちは、仕方ないわね、といった風に笑っており、ダグリスとケイトはまたしても俺に向かって呪詛を吐く。例の指輪は見つからなかったそうだ。店が竜やギルガスのやってきた方にあって、潰れていたそうだ。


「キャロ。みんな集まってきたからそろそろ……」


「やっ!」


 やっ! て、少し幼くなっている様な気がするのは気のせいか? 俺は何も言えずに頭を撫でていると


「くくく、キャロラインがこんなに甘えん坊なんて知らなかったよ」


「全くだわ。私たちにはそんなに甘えてくれなかったのに」


 と、教皇とクリスティーナ様がやってくる。流石に両親に見られるのは恥ずかしかったのか、俺から離れる。顔も少し赤くなっているし。


「別に離れなくても良かったのに。レイ君。今回は色々と助かったよ。古竜や魔族の襲来から、ガルレイクの事まで」


「いえ、俺はやれる事をやっただけですから」


「前にも言ったように、浮気したら石に戻ってしまうから気をつけなさいよ。あとこれも持って行きなさい」


 教皇、クリスティーナ様の順で話しかけてくれるが、そこまで信用ないのかな俺。それからクリスティーナ様に言われて侍女たちが何か大きな箱を運んできた。


「これは?」


「その箱に入っているのは、トュルークリスタルよ。あなたの精霊さんが渡しといてくれって言うから一部を持ってきたのよ」


 一部って侍女が2人で抱えないといけないほどの大きさだぞ。それに渡しといてくれってことは、これ以上婚約者が増えるとライトは思っているのか。あの野郎。


「くく、まあ、こっちとしてはキャロラインを蔑ろにしなければ何人いてもいいからね」


 教皇は笑いながらそう言うが。


「わ、わかりました。一応貰っておきます」


 それからお世話になった執事さんや侍女さんに挨拶をしていると


「お兄ちゃーん!」


 と俺に突撃してくる少女がいる。俺が受け止めてあげると、顔を上げてにぱっと笑う。


「危ないじゃないか、メイちゃん」


「えへへ〜、ごめんなさい」


 メイちゃんは余り気にした様子もなく、お腹に顔をぐりぐりと擦り付けてくる。まあ、俺も怒っているわけではないので、頭を撫でてあげる。その後ろにはプリシアさんやシスターに孤児院の子供たちがいる。


「もう、行く準備は出来ましたか?」


「はい。でも本当に私も良いのですか?」


 と、少し困り顔のプリシアさん。シスターさんは後ろでニコニコとしている。プリシアさんとメイちゃん、それにロイがナノールまでついてくる事になった。


 シスターさんや他の子供たちは教皇が、孤児院が建つまで保護してくれるらしい。ロイはどうしても俺について行きたいと言い、それに便乗してメイちゃんも行きたいと言うので、俺が折れる形となった。そして2人の保護者として、プリシアさんもついてくる事になったのだ。


 メイちゃんとロイの年齢は10歳らしく、ロイは俺の事を何故か兄貴と呼ぶ。どうしても俺から武術を習いたいらしい。だから俺の空いている時間に基本だけ教えてあげる事にした。この前ちょっとだけ剣術を教えたのだが、直ぐに色々と覚えたので、案外筋が良いのかもしれない。


「うちなら気にしなくても大丈夫ですよ。まだ部屋は余っていますし」


 俺がプリシアさんにそう言うと「レイ君と同じ家……」と呟いている。やっぱり男一緒に住むのは抵抗があるのだろう。


「もしダメなら家を探し「だ、大丈夫です!」そ、それなら良いですが」


 いきなり大声で言うのでびっくりしてしまった。プリシアさんも恥ずかしそうに顔を赤く染めながら俯いてしまったし。まあ、大丈夫なら良いだろう。


「アレクシア姉様。またレイが落としてますよ」


「本当ね。まあ、レイだから仕方ないって最近は諦めているけど。私たちの事を放っているわけじゃないしね」


 後ろでフェリスとアレクシアが何かコソコソと話しているが聞こえない。何だ?


 それから子供たちがお別れの挨拶をしているのを見ていると


「レイ、準備が終わったわ」


 とエアリスがやってきた。後ろにはレーネやエレアもいる。


「わかった。直ぐに行くよ」


 俺はそう言い再びキャロ元へ行く。


「キャロ」


「……」


 キャロ俯いたまま黙ってしまう。仕方ない。人前だから恥ずかしいが


「キャロ!」


「えっ!? むぐっ!」


 俺は両手でキャロの頬を支えて、顔を上げさせ、そしてキャロにキスをする。キャロは突然の事にワタワタとするが、少しすると大人しくなる。周りの声がうるさいが今は無視だ。


 少しすると俺から離れていく。キャロは名残惜しそうに押し付けてくるが、これ以上すると、もっと先のことがしたくなる。


「これで少しは寂しさが紛れるか?」


「……レイのバカ」


 キャロは顔を真っ赤にして俯いてしまう。俺はそんなキャロの頭を撫でる。


 そして馬車に乗り、みんなにお別れの挨拶をする。みんなに見送られながら馬車は走り出す。キャロも笑顔で手を振ってくれる。やっぱり笑顔じゃないとな。


 そんな風にお別れをし少し経つと、馬車の中の雰囲気が変わる。馬車の中には俺と、婚約者たちにプリシアさんとメイちゃん、ロイだ。俺がみんなの方を見ると


「……レイからされるなんて羨ましい」


「そうよ! 私たちもまだされたこと無いのに!」


 とアレクシアが言い、フェリスが怒っている。周りも頷いて、な、なにを……あっ! キスの事か! ……確かに俺からっていうのは無かったか。昔にアレクシアからされただけだからな。みんなが俺をじっと見てくる。……地雷を踏んでしまったか。まずい。


「ねえ、プリシアお姉ちゃん。みんなどうしたの?」


「……これは修羅場ってやつよ。羨ましいなぁ」


 プリシアさん。メイちゃんに変なことを教えないで下さい! 最後の方は聞こえなかったけど。


 俺は無事に帰れるのだろうか?

評価等よろしくお願いします!


訂正

キスで揉める下りを変えました。

ゴッデスサファイヤ⇨トュルークリスタル

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