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今はただ「この」己に掛けて −複数の加護と前世の「知識」を持つ俺は、親友勇者と離れアイデンティティを保つ−  作者: ダメ親父
第一章 追憶の中の旅立ち、秘密を共に

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邂逅

いよいよ、第一章の最終話です

お楽しみに下さいませ

m(_ _)m


2026-01-10 誤字脱字、数文字の加筆(意味が変わるような加筆ではありません)

風呂の後、食事は四人で取った。

それぞれ個室を用意されたのに、何故か当たり前の様に俺の部屋に、しかも全員の食事が運ばれてげんなりした。


「今後の予定だけど、レミドは事後でいいだろ。

決めちまおうぜ。」

食後、デザートを頂いてる時にバルがそう言った。

ちなみにデザートはブレッドプディング。

甘みを抑えてある酸味が強いジャムが添えてあって、そのまま食べても、ジャムを付けても美味しかった。

あ〜、わかった、わかったから、咀嚼しながらこっち見んなよ、アーネス。


バルの提案に、デザートの美味しさも相まって、それでいいかな、いいかもとか思っていたら、勢いよくドアが開きレミドさんが入って来た。


「なんか勝手に決めようとかしてない?

あたしを除け者にするとか、何?

死にたいの?」

めんどくさい感じで、めんどくさい人が来た。

なんかやたら癖が強くない?

うちのパーティーメンバー。


「めんどくさいヤツは放っといて、リーダーから決めようぜ。

てかリーダーはアーネスで決まりか。」

なんか鼻息荒いレミドさんを無視してバルが言う。


「あんた何、普通に無視してるのよ!

おい、聞いてるの?!

その耳、腐ってるのかしら!?」

更に騒ぎ続けるレミドさんを華麗にスルーしてアーネスが驚く。

「えっ、ジェスでしょ?」

こいつは。


「勇者パーティーの勇者がリーダーじゃないとか、どんなパーティーだよ!

寝言はベッドの中でしろ!」

「ハァ?!

判断力、作戦立案能力、企画力、交渉力、全部ジェスのが上じゃんよ!

俺は基本、ジェスの尻に付いて行ってるだけだってのっ!」

「前にも言ったじゃねえか!

俺は、お前に、『次は何する?』とか聞かれた試しがないんだよ!

いっつも勝手に決めてくクセに!

それにお前、『ヤダっ!』の一言で何回、俺の提案を蹴ったよ!

覚えてないとか言わせねぇからな!」

お互いに胸倉掴んで睨み合い。


そんな中で落ち着いたのかなんなのか、座ってデザートを自分にも用意させるレミド。

てか、皆して勝手し過ぎだろ。

もう誰にもさん付けなんてするか。


とか思ってたら、いつの間にかすぐ横にディディが立ってた。

「何を喧嘩なされてるんです?

余り酷いと氷漬けにしますよ?」

と、物理的に周りの気温を下げながら言われた。

「だってジェスが………。」

「だって、ですか?」

「いや、あの、ゴ、ゴメンなさい。」

怖っ!

目、怖っ!

ヤバい。

勝てる気が一切しない。


「お前、マジでこんなおっかないのと付き合う気になったな。」

バル、やめて。

今、それは言わないで。

見てる、見てる!

めちゃくちゃこっち見てるから!

結局、俺達は二人揃ってディディに頭を下げ、ゆっくりと席に座った。


「で、リーダーはアーネスって事でいいんだな?」

バルの問い掛けに、アーネスはふくれっ面で俯く。

まだ納得してないのかよ。


「今後の予定とかあるのか?

冒険者としての指針とか目標とかは?」

予定はともかく、指針とか目標なんてものはない。

「いやさ、そもそも俺達は院を出たら冒険者として日銭を稼いで生活してくつもりだったんだよ。

加護がわかって流されに流されてここまで来たけどさ。

目標があるとしたら生きる以外は今んとこないよ。」

皆一斉にヤレヤレといった体で首を振る。


「魔王はどうすんだよ。

お前が忘れるわきゃないよな。」

ああ、もう。

触れたくないから、黙ってたのに。


「それはさ、情報収集とザーベックの監視を殿下にお願いして、俺達は個人の腕を磨くしかなくない?

俺達だけで探すって無理でしょ?」

どうやら戻って来たアーネスが小首を傾げながら言った。

その仕草はカワイイ女子の特権だぞ。

お前がするな。


「ふむ、確かにそうじゃな。

となるとジェスが建前で口にしておった、見聞を広めるという名目で国内外の依頼をこなして回るのが、良いじゃろうなあ。」

爺様、なんであんたも小首を傾げるんだよ。


「あら、いいじゃない、諸国を巡る冒険の旅。

若い勇者のイメージにはぴったりじゃ?」

あんたもか、レミド。

それにあんたのそれはカワイイってより、何かを企んでるようにしか見えないのよ、表情的に。

てか、爺様のモテパワーはレミドには無効なのか?


「バーゼル伯領を拠点に動いちゃダメなの?」

確かにそれは楽でいい、気持ち的に。


「微妙だな。

依頼は常時あるし、実入りはいいだろう。

地理的な面だけみたら悪くない。

国内では南よりだが、大陸中央だしな。

ただ国内外を飛び周るには、拠点として正直不向きだ。

更に南にインゼル伯領があるっちゃある。

そっちは他国との交易で賑わってるし、協会は小さいながら新しい迷宮が見つかったとかの情報もある。

ただ直通の街道がないから、向うにしてもバルクーア領経由での大回りになるってのがな。

てかぶっちゃけ他領への接続が、軒並み悪くて使いづらい。

南への街道がつながってるなら話は変わるけどよ。」

マローダさんが言ってたヤツか。

魔物の巣の中を無理矢理、街道を通すって言ってたな。


「拠点は持たないで飛び回るしかないのかなあ。」

アーネスが珍しく溜息を吐いた。

「王都も国内ならどこにでも向かえるけど、国外に出向くには不便だしな。」

拠点ね。

俺の中ではそれほど重要じゃない。

実際、アーネスが言うように旅から旅の生活がほぼ決まってるんだし。

あれ?

旅から旅か。


「ならさ教会を拠点にするってのは無しなの?」

思わず口に出た感じでポロっと言ってしまった。

「どういう事じゃ?」

ジード爺様が珍しく真顔で聞いて来た。

なんか圧がある。


「いやさ、俺達って教会公認なんでしょ?

なら、拠点代わりに使えないかなって。

無理に一か所にこだわる必要も今のところないからさ。

ホームって言われたらバーゼル伯領だけど、活動拠点は幾つあってもよくない?

それこそ教会は無数にあるんだし。

宿代わりに使おうってわけじゃないけど、協力はしてくれるでしょ?

情報とかそっち方面で。」

場所によっては巡礼者とかいるだろうし。

いや、いないのか?

アイツの知識では聖地巡礼とかあるけど、俺達の世界では「地上の全てが聖域にして神々の居所」って教義だからな。


「ふむ、確かに悪くないかもしれん。

遍く聖地をこの目にと言って、各地を巡る神官もそれなりにおるしの。」

あっ、いるんだ。


「なるほどな。

神官は大抵どこの国もほぼ素通りだしな。

爺さん程のは流石にいないが、自由人も多い。」

「私もいいと思うわ。

何処の国でも神官に旅費を握らせて、諜報員に使ってるもの。」

ああ、ありそう過ぎる話で嫌だ。

アイツの世界でも聖職者のスパイってのがいるらしいしな。


「教会と協会の二本柱で情報を集められたら、色々と楽になるんじゃないかなって。

ただそうなると、魔禽の扱いに長けた同行者が欲しいけど。」

「どっちかのを、金払って使わせてもらえばいいじゃねえか。」

バルがそう言ったので、会員証と一緒に下げた珠を皆に見せる。


「あら魔禽の帰還珠じゃない。」

「バーゼル伯のだよ。

多分だけど、殿下からも渡されると思う。」

「ああ、あん時のか。

回収されてなかったんだな。

まあ、それなら魔禽を扱えるヤツが欲しいってのはわかる。」

「横から失礼します。

おそらく私は外されます、無用の憶測を呼ばぬように。

別の意味合いもあるでしょうが。」

特に表情を変えることもなく、ディディが言った。

まあ、それはそうだろう。

元々、「今回の旅」の世話係兼護衛だった。

でも別の意味合いって。

ああ、俺の帰る場所としてバーゼル伯領に留め置かれるって事か、ディディは。

俺達のことはバーゼル伯の耳にも入ってるだろう。


「えっ、ディディは一緒じゃないの?!」

驚いた顔をするアーネスだけど、俺が魔禽の使役者を欲しがる理由に気付いてなかったんだな。

「仮に同行したとしても、連絡員という立場になるでしょう。

魔物狩りはともかく迷宮探査等では、足を引っ張る事になりかねません。

私の体力面での話ですが。」

スポットでの参戦はアリだと思うけど。

ダメージ源として、ディディは優秀だ。


とはいえ、レミドと能力的に被る。

それに魔王討伐が現実になった場合は、残ってもらいたい。

俺のわがままかもしれないけど。

だから王都かバーゼル伯領で一旦離れる事を、俺はとっくに納得してた。


「クラウディア、お前は自分を低く見積もり過ぎだ。

少なくとも、魔術師としてのお前は超が付く一級品だぞ。

それに体力面で劣っていても、単発での戦闘で後れを取る事はそうそう無い。

お前が同行者から外されるとしたら、蒼槍城の守りが手薄になるからだ。

それと伯爵がお前に上着を着せないのは、メイドとしてなってないからじゃねえ。

護衛の側面が強いからだ。

第一、伯爵が引退したくらいでおとなしくしてると思うか?

今回はコイツらを優先したけど、そうじゃなければお前は、後発隊の伯爵と同行してたに違いない。

今後もそうなるだろう。」

バルの言葉が正しいんだろう。

前衛のバックアップから、いざとなれば前に出ても魔術で対処出来るだけの実力があるディディは、バーゼル伯としても側で運用したい戦力だろう。


「そうじゃな。

お前さんとは一度の戦闘しか一緒しておらんが、魔術の精度、速度は確かに高かったし、状況の判断力も中々の物じゃ。

バーゼル伯の陣容がどんな物か儂は知らんが、簡単に替えの利く人材ではあるまい。

メイドをやらせてる理由はわからんが、居城の防衛には欠かせないのではないかね。」

ジード爺様がお茶をすすりながら言った言葉は、その通り過ぎる。

年の功かね。


「ありがとうございます。」

少し意外そうな表情の後、はにかんだような笑顔でポツリと言うディディは、さっきの凍り付くような顔とは違い、年相応に見えた。


結局その日の話し合いは俺の、

「教会と協会を活用して各地を巡る」

って方針で決まり、アーネスの意向通りにバーゼル伯領に一度戻る事でまとまった。


「てかレミド。

お前、ここにいていいんか?

王国正騎士軽騎士団副団長補佐さんよ。」

「よくもそんな長ったらしい肩書き、口にする気になるわね、あなた。

私が王城に残ったとしても、やる事なんてほぼないわ。

特に儀式関連や施策施政に関してはね。

差配は済ませたし、それ以外の面倒事は研究馬鹿の副団長に押し付けて来たもの。」

それを聞いて、会った事もない副団長さんが不憫に思えた。

てか、副団長が研究畑で補佐のレミドが現場指揮なのか?

そのレミドが抜けて大丈夫なのか、王国正騎士軽騎士団。

うん、確かに長いな。


その後。

レミドが各種体液を採取させろとか言い出して、それを聞いたディディと睨み合いになるとか、しょうもないすったもんだはあったが、それぞれの部屋に戻っていった。


一夜開け、身支度を済ませてトイレに出たら、ディディとアーネスが何やら廊下で話しをしていた。

「あっ、おはようジェス。

今日も一日空いてるだろ?

俺はジード爺様に稽古を付けてもらうけど、ジェスはどうする?」

それ、いいな。

俺もそうしよってなんだ、何かディディから圧が、すんごい圧が来るけど。

アーネスも何かニヤニヤしてるし。

ん?

ああ、そういう。


「ディディは時間ある?」

「はい。

今日はお暇を頂きました。」

食い気味かい。

コレは、誘えって事でいいんですかね。


「じゃあ、王都を案内してくれる?

バルと買い物はしたけど、もうちょっと見て回りたくてさ。」

まるっきりの嘘ではない。

逃げ回ったから、景色はわかってるけど、ゆっくり回ればイメージが変わるだろうし。

アーネスバリにパァって笑顔になったディディは、コクリと頷いた。


今日はデートだ。


念の為、剣だけは腰に吊るして門の外で待つ俺に後ろから、

「行きましょ。」

と、声を掛けて来たディディを見てちょっと驚いた。


普段きっちりまとめてある髪は編み癖が付いているけど、フワッとしたポニーテールになっていた。

付け根の銀色の髪留めが日差しを反射していた。

プレゼントしたピアスも付けてくれてる。

膝丈のキュロットパンツは淡いサンドベージュ。

胸元に縦にフリルをあしらった大きな襟が特徴の、ほとんど白に近いほんのりピンクのシャツはノースリーブだ。

出来る女のイメージが強いけど、今日はなんかカワイイが勝ってる。


「何、なんか変?」

思わずボウっと見ていた俺に戸惑ったのか、自分の服装のチェックをし始めたディディに、

「いや、ゴメン、あ〜、うん。

似合ってるよ。

さ、行こう。」

と声を掛けて手を差し出す。

握り返してくれた時の笑顔は、今まで見た中で一番だった。


買い物、ランチ、観光と一通り楽しんだ。

夕方になって戻った俺達を、ニヤついた野郎三人と観察するような目つきをしたレミドが待ち構えていた。

面倒くさいなぁ。


「ほれ。」

そう言って俺にバルが何かを投げ渡して来た。

キャッチして見てみたら、魔禽の帰還珠だった。

「さっきガスリーが帰って来てソレを渡されてな。

バーゼル伯のと一緒に持ってろよ。

グレゴリオ殿下んとこのヤツだとよ。」

やっぱ俺が持つんかい。


「明日は早いらしいぜ。

それと行列ん時の服をメイドに出しておけってよ。

なんか礼装は別に用意するって言ってたけどな。」

コレは朝から「整え」られるって事かな。

面倒くさい。


てか、男三人の汗が凄いな。

どうやらみっちりやってた様だ。

ちょっと浮かれてたけど、そんな気分は消しとこう。


明けて翌日。

この時期には珍しく雨がパラついた。

ポツポツと地面を少し湿らせる程度の雨だったが、さながら涙雨と言った感じだった。

俺達の世界にそんな言葉はないけれど。


陛下の国葬はしめやかに執り行われた。


王都各所の教会の鐘が一定の間隔で、カーン、カーンと鳴り続けていた。

様々な白い花で覆われた棺が馬車に乗せられ、緩やかな速度で王都を巡る。

王都北東の丘にある墓所に運ばれて、屋外で荼毘に付された後、埋葬されるそうだ。


朝からメイドさん達に、全身くまなく整えられてぐったりしたが、全身が白の礼装に着替えると気持ちが引き締まった。

父さんの時も、母さんの時も白い服を着せられたっけな。


俺達の世界では喪を司る色は白。

アイツの世界というか国とは真逆だが、

「光の先へ見送る」

って意味合いがあるらしい。

屋外での火葬なのも同じ意味からだとか。


俺達は馬車で王都東門に向かった。

棺が通る沿道には、何かしら白い服を着た人が立ち並んでいた。

混乱を避ける為に並ぶ騎士も、鎧こそ通常の物だったけど、皆腕章と短いマントは白だった。


東門前の広場は「白」で埋め尽くされていた。

参列した市民のすすり泣きがあちこちから響く中、白馬で統一された騎士団と、間に合った者と王都に詰めている貴族、その長い葬送の列を最前列で見送った。


別邸に戻る途中、バルは一旦家に戻ると言って帰って行った。

なんでも剣だけ持って手ぶらで来ていたらしい。

ジード爺様も一度大聖堂に顔を出して来ると言って別れた。


朝食の時にバルが、

「出発は朝食を食ってからでいいか?

集合場所は南門な。」

とか言っててなんの事かと思ったけど、そういう事か。

「整え」られてる時も珍しく無言だったし、この時も普段なら即質問してただろうアーネスが、なにも聞かなかった。

結局この日、朝晩の挨拶でしかアーネスは口を開かなかった。


「よ〜し、揃ったし行くか。」

バルのバカデカい声が響いた。

王都南の市街門。

バル、ジード爺様、レミド、俺、アーネス。

マローダさんとディディ。

ここまで一緒に来たバーゼル伯騎士団の面々。

トゥーレが笑顔なのには、安心した。

爺様がいるからかもしれないけども。


国葬の翌日。

天気は快晴。

出発には、絶好の日だ。


「ところで、一番最後に来たアナタがなんで仕切ってるのよ?」

ジト目のレミドがバルを指差しながら、冷静に突っ込む。

昨日は口数が少なかったアーネスも、今は声を出して笑っていた。


「そう言うなよ、千影の魔女様よ。

それじゃ、リーダー。

なんか一言頼むわ。」

バルが雑な振りでアーネスを促す。


驚いた顔をしたアーネスだったけど、ちょっと考え込む仕草の後で、拳を突き上げて声を張った。

「それじゃ、出発!

目指すはバーゼル伯領都!

みんな、帰ろう!」

俺も付き合って拳を上げたけど、他に拳を上げたのはトゥーレだけ。

あとはみんな、「後方腕組み勢」だ。


「ちょっ、なんで!?えぇ〜!?」

アーネスの困り顔を見てバルとレミドはニヤニヤして、他はみんな微笑んでいる。

放っておくと埒が明かないので、アーネス肩を叩いて俺が先に歩き出した。


今回は六人乗りの馬車一台、トゥーレが操る荷馬車が1台、先頭をターナーさんが、カレンさんとドルドーニュさんが両脇を固めて馬でいく。

俺達が乗る馬車の御者はバル。

約束通り、隣で俺とアーネスが交互に馬車の扱いを教えて貰う。

とはいえ、門を出るまでみんな徒歩だ。

相変わらず、王都の人の出入りは多い。

安全には配慮しないとな、勇者パーティーだし。

小一時間ほど掛かって王都から出た俺達は、混雑が落ち着くまでしばらくそのまま歩いた。


ふと、周りの音が消えた。


漂う空気もなんだか違う。

横を見ればアーネスの顔も緊張で引き攣っていた。

なんだ?

なんだこの、強烈な不快感は。


振り返りみんなに視線を送る。

はっ?

なんで?

なんでみんな普通に談笑してる?


背筋に汗が伝う。

いつの間にか目の前にボロいフード付きのマントをまとった、恐らく少年というか、俺達と年近い男が立っていた。


少し強く風が吹き、街道脇の草を揺らす。

フードが少しめくれ、男がそれを手で押さえるまでのほんの一瞬、顔が見えた。


黒髪。

不健康そうに見える、汚れが目立つ白い肌。

それとは不釣り合いに、やけに赤く見える小さな唇。

まるで血のように赤黒く、不吉な輝きを放つ双眸。


何故かはわからない。

咄嗟に俺もアーネスも、腰に手を伸ばした。


何事もないようにその男は脇に少しそれ、すれ違って行った。


「どうした、お前ら。」

バルの呑気な問い掛けと同時に、周囲に音が戻る。

俺達二人はすぐに振り向いた。

だがそこに、「不吉」さを漂わせたあの男はいなかった。

街道を行き交う人に紛れてしまったんだろうか?


「なんだったんだ、今の。」

そう呟いたアーネスの頬に汗が一筋垂れていた。

俺も手汗が酷い。

鼓動も五月蝿い位に高まっている。


「そのうちわかるよ。」


風に乗って、そんな声が確かに聞こえた。

アーネスも聞こえたのか、辺りを見回している。

みんなは怪訝な顔をして、俺達を見ていた。

「今のって。」

アーネスは言い淀んだけど、俺の脳裏にある単語が浮かんでしばらく消えなかった。


魔王。


俺達がそれをちゃんと認識するのは、それから数年の時が必要だった。


第一章 完

如何だったでしょうか?


第一章はコレにて終幕です!


沢山の方に読んで頂けて、嬉しく思っています


ちなみにディディとのデートは敢えて端折りました

全体に長くなってますしね

てか、バルとの買い物とディディとのデートはSSでやる予定です(汗)


第二章は現在準備中

未定ですが、遅くてもGWまでには投稿する予定です

本編まではSSでお楽しみ下さい

書き上がり次第、月曜日に投稿します


最後に!

ここまでお付き合い下さった皆様、ありがとうございます

ああ、そこの一見さんもありがとうございます

m(_ _)m


本編95話(数話、統合してるので本来は99話)も投稿出来たのは皆様が読みにいらして下さったおかげです


いや、ダメ親父も頑張りはしたんですけど、続けられたのも、復帰する気になったのも読みに来てくれる方がいたからです

m(_ _)m

これからもよろしくお願い致します!


ではまた


ダメ親父でした〜

m(_ _)m


次回 戦場への帰還(本編二章第一話)

SSはサブタイ未定です

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