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「暇なら物理攻撃しろ」と、双剣を渡されて旅立つ召喚士の少年の物語~【召喚士の旅】Summoner's Journey  作者: 桜良 壽ノ丞
One last fight~いつか、二度と逢えない君たちへ~

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One last fight-11



 バベルは穏やかな表情のまま、ゆっくりとガーゴイルへ視線を移した。挨拶を済ませ、後は結界と共に瞬間移動をするだけだ。


「バベルくんの願いは? みんなの願いじゃなく君の願いはないのか!」


「恩を売ったつもりなら失敗だ。キリムは生涯後悔し続ける」


「ガーゴイルを封印するのが使命なら、何故盾を? 何故守護のクラムを?」


「そうです! あたし達、こんな終わり方求めてません!」


 ただ、バベルを止めようと掛けるも、代替案がない。200年、300年経った時、またガーゴイルが復活する可能性は大いにある。


 ガーゴイルの負の力が復活しない方法は何か、皆が必死で考えていた。特にキリムはバベルの事を弟か子供のように接してきたため、どうしても諦めきれない。


 エバノワやジュディ達も、バベルの親しみやすさはよく知っている。


「ねえ、クラムバベルが封印されちゃったら、召喚してるクラム達は?」


「消滅じゃないから、クラム達には影響がない!」


「えーっと、じゃあ、じゃあ……」


 ジュディ、ロイカ、エミーの3人が頭を抱え、その場駆け足で知恵を出し合う。エバノワは何も口に出せないまま、アスラと共にゴースタへ回復を施していた。


 ゴースタの意識がハッキリしたら、何か糸口が見つかるのではないかと考えているのだ。


「ガーゴイルを倒した後、燃やして灰を集めて……袋に入れて置いとくとか!」


「バベル、お前が結界の中に入らなくてもいいじゃねえか!」


 デューとブレイバも知恵を出し合う。アスラやノーム達も、自身の能力で何かできないかと考えていた。


「妾やエールが浄化できるやもしれぬぞ。少なくとも人の子らは、そなたの行動を望んでおらぬ」


「おいらが土の中に閉じ込めるのはどうかい?」


「土の中に埋めたとしても、復活する事は分かり切っている」


 ステアが首を振り、いっそ自分が結界の中でガーゴイルを倒そうと提案する。しかし、そのタイミングでキリムが「あっ」と声を上げた。


「土の中……グラディウスの核!」


「ああ、奴はバベルとなって復活した。埋めた所で意味を成さない」


「そうじゃなくて! ノーム、ミスティに埋められたグラディウスの核、確認できない!?」


 キリムが焦ったように「早く、早く」と繰り返す。ノームは頷き、その答えを告げた。既に確認済みだったようだ。


「バベルの覚醒の話を聞いて、確認したよ。結晶はなかった!」


「やっぱり」


 キリムは自らを圧し潰さんばかりのバベルに手を伸ばす。


「バベルくん! 君を残したままこいつを消し去れるかもしれない!」


「かもしれない、じゃ駄目なんだ」


「結晶化したクラムが願いを吸収して、復活するんだよね? ガーゴイルは?」


 キリムの言いたい事が分かったのか、ステアが強引にバベルをガーゴイルから引き剥がす。バベルが慌てて結界を広げると、ステアも滑り込んだ。


「駄目だ! 僕が維持しなくちゃ!」


「それは貴様を召喚し続けられない事態になった時、つまりキリム達に何かがあり、俺達が消滅した時、奴が復活して成す術がなくなる事か」


 バベルが返答に困って俯く。その隙にジョエルとビシュノフも駆け寄り、結局全員が結界の中へと侵入する。


「ロイカ、ジョエル! ガーゴイルを押さえ込んでくれ!」


 キリムは双剣を構え、身動きの取れないガーゴイルに対峙する。俯いたバベルを、エバノワがそっと抱き寄せた。


「他に方法があるかもしれない、あなたはそう考えていたんでしょう?」


「……」


「息子を助けようとしてくれたあなたと、皆があなたを救いたい気持ちは一緒です」


「ああ。皆を守る事と自己犠牲は同義ではない」


 エバノワとオーディンに諭され、バベルの張りつめた表情が柔らかくなった。


 バベルは自身の焦りを理解していた。自分が犠牲になる事など最初から苦ではなかったものの、キリム達との日々に未練がなかったわけではない。


 バベルが皆を守ろうと焦っていた時、ゴースタが正気を取り戻した。結界に閉じ込められる千載一遇の好機が訪れた事で、ベストではなくベターを取ったのだ。


「クラムは復活する時、人々の願いを吸収する。過去の記憶はなくても、意志は引き継ぐんだ!」


「それは分かってる!」


「意志も記憶も保ったままのガーゴイルなら、尚更核となる結晶が必要なはず!」


「試してみる価値はあるだろう! バベル、結界を保っておけ! 結界の中で倒す!」


「ギエェェェ!」


 ステアとキリムがガーゴイルの左右に立つ。ブレイバがガーゴイルの尻尾を切断した。キリムとステアの狙いを察し、ガーゴイルの気を逸らせたのだ。


「行くぞ!」


「死月」


 キリムとステアは持参したエリクサーを飲み干し、死月を発動させた。黒い鏡が浮かび上がり、ガーゴイルの姿を映す。


「こうすりゃ、固定が楽になるだろ!」


「アンカー」


 ブレイバがガーゴイルに剣を突き立て、オーディンが足の甲を槍で貫通させ、地面に縫い付ける。


「グググ……ッ」


「も、もし駄目だったら? もし何も残らなかったら?」


「復活する事は分かってんだ、そうなりゃガーゴイルの復活を語り継いで、復活を警戒し続けるさ!」


 ロイカとジョエルが暴れるガーゴイルを押さえ込み、エミーとデイビスが補助魔法で皆を強化する。デューとエバノワは、ブレイバとオーディンに持てる霊力を全て注ぎ込むつもりだ。


「噛み……つくなっつってんだろ!」


「俺が槍を杭にする! 兄貴が頭を押さえてくれ!」


「ロイカ!」


「背中を支えろ!」


 圧し負けそうなロイカの背中を、ジュディとマノフが支える。ノームが引っ掻きを喰らわせようとする前足を岩で固め、アスラが全体に回復を施す。


「お、おれ達はジョエルさんを!」


 待機組の者達もロイカとジョエルを支え、死月で捕らえようとするキリム達を助けようとする。


 文字通り、全員が全力でガーゴイルを押さえ込んでいた。


「捕らえた!」


 2枚の黒い鏡がガーゴイルを捕らえた。ガーゴイルの体が2枚にそれぞれ吸い込まれていく。


「成功したわ!」


「割れ! 割ってくれ!」


 キリムが大声で呼びかける。ロイカとジョエルが倒れ込んで荒い呼吸を整える中、2人を支えていた者達が頷く。最後にゴースタも起き上がり、エバノワと共に短剣を握った。


「破ァァァッ!」


 キリムとステアを除いた全員が、黒い鏡へと一撃を喰らわせた。ある者は槍で、ある者は魔術書で。


 黒い鏡には大きな亀裂が入り、パキパキと音を立てて粉々に割れ始める。


「バベル、まだ結界は解くな!」


「ギエェェェェッ!」


 ガーゴイルの断末魔が響き渡り、黒い鏡が塵となって地面へと降り積もる。ステアとキリムは共に力を使い果たし、膝をついて肩で息をするのが精いっぱいだ。


「消えた! 倒したわ!」


「まだ終わりじゃない。核があるかどうかで、今後の数百年が決まる」


「そ、そうだったわね」


「妾が塵を浄化する。人の子よ、手で触れるでない」


 アスラの浄化を待ち、全員が一斉に黒い灰を掻き分ける。クラムの復活と同じ原理であれば、結晶がある可能性は高かった。


「結晶って、どんな大きさ!?」


「手のひらに握れるくらいだ! ええい、これただの石だよな」


 皆が灰を掻き分ける中、スレイプニルがゆっくり寄って来た。その灰の匂いを嗅いだかと思うと、予想外の反応を示す。スレイプニルがくしゃみと鼻息で灰を思いきり吹いてしまったのだ。


 だが、おかげで灰の山はなくなった。


「ブシュンッ」


「あっ、あーっ!」


「うわっ……!」


「あ、あった!」


 ジュディが灰まみれの手を気にもせず、漆黒の宝石を摘まみ上げた。すぐにそれをバベルに手渡す。


「これじゃない? こんなの、さっきまで地面になかったよね!」


「魔物の負の力を吸収するって事は、強力な結界の中にあれば吸わないって事だよな!」


 ジュディがディランとハイタッチをし、バベルの反応を待つ。


「……どう?」


 まだ息の荒いキリムも立ち上がり、グウェインに肩を借りる。ステアがマノフに肩を借りた時、バベルが皆の顔を見回した。


「これ、だよね?」


 ジュディの念押しに、皆が息を飲んだ。


 風の音も、衣擦れの音1つさえしない静寂。


 バベルは泣きそうな表情を見せた後で、嬉しそうに微笑んだ。


「うん!」


「やった、やったぞ! 誰も……これで誰も失わずにガーゴイルを倒せたんだ!」


 皆が肩を抱き合って喜ぶ。ついにガーゴイル討伐が成し遂げられた。結晶を守り切ればもう復活はない。


 エンシャントの荒れ地に、陽気な歌声が響き始めた。

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