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「暇なら物理攻撃しろ」と、双剣を渡されて旅立つ召喚士の少年の物語~【召喚士の旅】Summoner's Journey  作者: 桜良 壽ノ丞
One last fight~いつか、二度と逢えない君たちへ~

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One last fight-07



「バベル、盾を構えろ!」


「何かいる。この先に集まっている」


 バベルが暗闇を凝視し、盾を構える。ジュディがライトボールを前方へと飛ばした時、奥が広くなっている事に気が付いた。


「ああ、魔物の気配がこの奥に集中している。潜んでいるつもりか」


 ステアとオーディンはバベルを召喚しており、魔物の位置を把握している。その他の者も先の暗闇の中、壁を這いまわるような音に気付いていた。


 ステアとオーディンが警戒を促す間にも、洞窟の先ではライトボールの光を避けようとする影が見えた。魔物がいる事は間違いない。


 ライトボールがバベルのすぐ手前まで戻り、周囲の岩肌が灰色を取り戻す。コツコツと鳴る足具の音が再び響き始めた。


「ロイカ、ジョエル。2人は仲間を守る事だけを考えて」


「俺、キリム、バベル、ブレイバ。前に出るのはこの4名だけだ。オーディンは必要に応じて外へ合図を」


「承知した。アスラとノームが来たなら、我も前線に出ようぞ」


 キリムとステアが前に出る。いつもふわりとした雰囲気のキリムが、今はまるで別人だ。口調は穏やかなのに冷たく、ジョエルは何かを言い返そうとして躊躇ってしまった。


「わたし達、仲間です! キリムさんの仲間です」


「うん、有難う。だから安心してみんなを任せられる」


「キリムさん……」


 ロイカが食い下がるも、キリムは考えを曲げない。双剣を構えたまま、バベルに続いて歩き始める。


「攻撃に専念できる事に感謝する。俺とキリムが倒し損ねた結果がこれだ、すまんが助力を頼む」


「まあ、まずはキリムとステアのやりたいようにやらせてくんねえかな」


「2人が全力を出すため、俺達は他の危険を全て排除する。主よ、2人の援護を」


「分かったわ。補助術は掛けられるだけ掛けましょう」


「あの、私もキリムさんとクラムステアの回復を担います! ブレイバ、いいかな」


「おう! 倒れても無理矢理起き上がらせてやれ」


 ブレイバが空気を軽くしようと言葉を口にした時、バベルが広い空間に足を踏み入れた。バベルは結界を発動し、前後左右、更に上方からの不意打ちに備える。


「ギエェェェッ!」


「ロイカ! ジョエル! 頼むぞ!」


 奥から奇声が響いた直後、バベルが張った結界の上に、大きな黒い塊が落ちてきた。塊は真っ赤に血走った眼を見開いている。


 一瞬固まった皆だったが、それが熊型の魔物だと気付いた時、ようやく戦意が戻った。


「僕より前に出ないで! 行くよ!」


 オーディンがスレイプニルに合図を送り、ノームとアスラが駆け付ける。魔法使い達とノーム、アスラが空間手前で陣取ると、魔物の掃討戦が始まった。


「剣……閃ッ!」


「双竜斬!」


 ステアとキリムがバベルの真横に飛び出し、大量に集まった魔物へと双剣を振るう。耳をつんざくような悲鳴が洞窟内にこだまし、魔物達は興奮を連鎖させていく。


「エバノワ、デュー! 貴様らはライトボールで俺達の視界を確保しろ! エミー、デイビス、貴様らは手分けして皆の視界を!」


 ステアが指示を出しながら、バベルと共に空間の中心を目指す。キリムがステアを襲おうとする魔物を切り裂き、バベルは盾で魔物達を殴りながらキリムを結界で包む。


「ディン!」


「わぁってるよ!」


 ステアはブレイバの事を以前の名で呼ぶ。誤って呼び慣れた名で呼び、更に気付かない程余裕がないという事だ。


「地……撃! ディラン、打ち上げるぞ!」


「おう!」


 グウェインの斧が、飛び上がったディランの足裏を打ち飛ばす。何度も見かけた斧ならではの合わせ技だ。ディランが洞窟の天井を足場にし、気力をめいっぱい込めた一撃を放つ。


「バベル、反射を!」


「破ァァッ!」


 バベルが結界で耐えた分が、一気に魔物達へ跳ね返された。魔物達は果実を壁にぶつけたように弾け、小さな肉片を撒き散らす。


 亜種の巣窟に群れている魔物は、おおよそが子飼い状態になった個体だ。自身より強い者から逃げる事も出来ない捨て駒に過ぎない。


 魔物が捨て駒を用意する目的は、敵を少しでも消耗させるためか、もしくは……。


「フレイムストーム! 魔物の死骸を焼きます!」


「クラムバベル! 炎からみんなを守れるか!」


 ジュディとマノフはその意味をよく理解していた。魔物の死骸から立ち昇る負の力は、亜種やガーゴイルたちの餌となる。戦わせても、死なせても、亜種などの強い魔物にとってデメリットがない。


 そんな駒、もしくは糧を焼き払う事で、亜種の強化を止めることが出来る。


「前に出る! 亜種だけは残っているはずだ!」


「キリムさん! 一度戻って!」


「奥に逃げられたら厄介だ、この場で倒す!」


「キリムの言う通り、広い場所で戦うべきだ。グウェイン達の武器もその方が好都合だろう」


「駄目です! バベルさん!」


 エミーが大声で叫び、バベルが咄嗟に前へ出る。すぐにデューとエバノワの身体強化魔法を浴びせられ、キリム達は駆け出しそうな足を1歩後ろに下げた。


「見て下さい、さっきの熊型の魔物!」


 がらんと広くなった空間に、エミーの抑えた声が響く。キリムは前方を警戒しながらも、エミーが指し示した床を確認した。


 そこには、空間へと足を踏み入れた瞬間に襲い掛かって来た、熊型の魔物が転がっていた。


「死んでる……けど、反射が、効いてない?」


「最初から死んでいたという事だな」


「えっ」


 結界に襲い掛かったのであれば、相応の傷を負っているはずだ。死ぬのであれば、他の魔物のように破裂に近い死に方をするだろう。しかし、この魔物は結界の反射を受けた形跡がない。


「この熊見て、牙が……尋常じゃない長さだ。見た事がない魔物だけど、多分亜種だ」


「その亜種を殺し、俺達へ放り投げた存在がいる」


「へっ? や、やだ……」


 デューが思わずブレイバの後ろに隠れる。オーディンが槍で前方を指し、来るぞと呟く。


「この先に感じ取れる魔物は1体だけだ」


「何だと? とても大きな集団のように脳裏に浮かんでいるぞ」


「ぞろぞろと連れ立っている感じはない。気配の点は大きいが、1つの点として動いている。集合体ではない」


「……という事は」


 この洞窟に入った目的は1つ。洞窟がもっと奥まで続いている可能性はあるが、徒歩10分以内の距離で感じ取れる気配は1体。その正体は想像に容易い。


「フフフ、お待ちしておりましたよ」


 洞窟の奥から、不気味に笑うやや高めの男の声が響いてきた。それはこの場で聞きたくはない声だった。


「ガーゴイル……」


「もう少し遅くても良かったのですがねえ。やはりここだとバレていましたか」


 ガーゴイルがいた事については、狙い通りで良かったとも言える。問題は、その声がゴースタのものであるという事。エバノワにとっては残酷だ。


「亜種を取り込んで回復を図っていたか」


「キサマらが外を警戒する事は分かっておりましたからねえ。誰にも見つからずに潜むには、ここくらいしかなかったのですよ」


 ライトボールの明かりの中、影がその姿を露わにする。その姿もまた、出来れば目にしたくないものだった。


「ゴースタ……」


「おや? これはこれは。母親殿ではないですか!」


「息子の体を……返しなさい」


「返しなさい? フッ、中身が入れ替わっても気付かなかったあなたが、身を案じるフリですか」


 ガーゴイルがエバノワを嘲笑う。エバノワは怒りで唇を噛み、肩を震わせる。見かねたオーディンがエバノワの肩を抱いて落ち着かせた。


「我が主に仇をなす者は許さん。幾度目かの敗北を味わえ、そしてもう次はない」


「おや、いいのですか? ワタクシを殺せば、体の持ち主も死ぬのですよ」


「……なんて卑怯な奴」


 デューがボソリと呟く。ゴースタの姿をしたガーゴイルはデューへと視線を向け、鼻で笑った。


「こんなに大勢で押し掛けられ、ワタクシはたった《《一人》》。どちらが卑怯だと言うのでしょう」


 ガーゴイルは皆の感情を引き出そうとしている。キリム達が苛立ちと憎しみを覚え始めていた時、エバノワがまたオーディンよりも前に立った。


「私が責任を取ります。もう私の息子はいない。みんな、あの姿でも怯まないで。あれは人じゃない、息子の姿に化けているだけ。心配なら最初の1撃は私に任せて」

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