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「暇なら物理攻撃しろ」と、双剣を渡されて旅立つ召喚士の少年の物語~【召喚士の旅】Summoner's Journey  作者: 桜良 壽ノ丞
One last fight~いつか、二度と逢えない君たちへ~

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One last fight-05



 バベルは今、ステア、レイナス、ジョーアの3人から召喚されている。クラムが複数名から本体を同時に召喚される事などあり得ない。


 召喚自体は可能でも、本体は先に召喚を発動させた者以外には応じる事が出来ないのだ。この場合、ステアの後に召喚したレイナス達は、バベルの意識体のみ召喚が可能なのだ。


「バベルくん、何か変わったところは?」


「何もないよ、だけど2人の霊力も感じるんだ」


 バベルの召喚維持に際し、霊力の消耗は殆どない。困る事がないのであれば、この状態を保ち続けてもいい。


「とにかく、早く向かった方が良いね」


「あの、キリムさん。何で歩いて向かうんですか? クラム達の瞬間移動を頼ってもいいのでは」


「歩いて向かうのも消耗しちゃうし、時間が掛かるとガーゴイルが力を付けちゃうんですよね?」


 ガーゴイルが潜んでいると思われる洞窟は、既にキリム達が行った事のある場所だ。瞬間移動にも問題ない。ただ、キリムはそこにリスクがある事を分かっていた。


 ガーゴイル討伐を行うと当時に、キリムは参加者を死なせない事を重要視している。そのため瞬間移動は出来ないのだ。


「亜種が洞窟の外まで出て来てる。外見と中身が異なるから光を苦手にしてるかは分からないけど……負の力が集まる場所をわざわざ出て行くってことは」


「亜種ですら恐れる何かが洞窟に潜んでいるという事だ」


「え、じゃあそれこそ洞窟に早く向かった方が」


 ジュディが首を傾げる。その横ではロイカがハァとため息をついた。


「つまり、魔物を倒しながら安全を確保しつつ進まないと、洞窟に着いた途端、亜種に囲まれて終了ってことよ」


「うん、そういうこと。洞窟の入り口で待ってもらうのに、現地で亜種がすぐ近くにいたら?」


「あっ……そっか。挟み撃ちとか、待ち伏せとかされてたら困るよね。なるほど」


 洞窟の周囲の安全を確保し、洞窟の中でも挟み撃ちを防ぐ。キリムはそのために1日を費やすことを必要な事だと考えている。ジョエル達もなるほどなと頷き、歩いて進む事に同意した。


「何というか、ガーゴイル討伐に緊張して周りが見えてなかった。倒せるかどうかより、安全に向かえるかが重要なんだな」


「ねえオーディン。スレイプニルを入り口に待たせられないかしら」


「それは構わないが、主は洞窟内を歩いて行くのか」


 オーディンはスレイプニルの背に乗り、自身の前にエバノワを座らせていた。カーズの効果で疲労はかなり軽減されるものの、主だけ歩かせるつもりはない。


 見た目は老婆だからか、他の者も羨ましいとは思わない。むしろ心配だから馬に乗ってくれと提案したほどだ。


「体もとても軽いし、大丈夫。見た目と年齢ほどお婆ちゃんじゃなくなったのでしょうね」


「嬢ちゃん! 疲れたら言ってくれよな。オレ様が負ぶってやるからな」


「えっ、いや、大丈夫! 有難う、心配してくれ嬉しいわ」


「へへっ、いいってことよ」


 ブレイバが得意気に笑い、いつでも疲れろと訳の分からない気遣いを見せる。そんなクラム達に何を思ったのか、ステアが真剣な表情でキリムへと視線を向ける。


「キリム。お前も疲れるのか」


「え、まあ……時々は」


「そうか。何故言わんのだ、疲れたら言え。俺がこいつらより気が利かなかったというのは納得いかん」


 ステアの妙なプライドが周囲の者を笑わせる。それから1時間おきほどで「おい、疲れたか」を繰り返し、キリムはとうとう4回目で根負けした。


 勝ち誇ったように笑みを浮かべてキリムを背に乗せ、ブレイバとオーディンを鼻で笑う。真っ先に反応したのはブレイバだ。デューが背に乗ってくれたなら、自分の方が先だったのだ。


「あー、あーっ! そういう態度取る? 嬢ちゃん乗れ! ステアの奴め、なんだよ羨ましい奴だな!」


「……スレイプニルではなく、俺が運ぶという手があったか。主、洞窟内は俺が」


「大丈夫よ。フフッ、なんだか……息子がもう1人出来たような気分だわ。あの子も本当に優しい子だった」


 エバノワが寂しそうに笑う。皆が何と言っていいか分からない中、人の感覚を理解できないオーディンは違った。


「誕生は俺の方が先だ。そいつが次男という事で良いだろうか」


「ふふっ、そうね、そういう事にしようかしら。もしあの子がまだ生きているのなら……仲良くしてあげてね」


 オーディンは真顔で善処すると言い、スレイプニルから降りた。エバノワだけがスレイプニルに乗った状態だ。


「スレイプニルはまだ主だけを乗せた事がなかった。独占したいとうるさいのでな」


 クラム達の主への独占欲丸出しな様子に、皆はたまらず笑い出す。この中でカーズではないクラムはバベルだけ。バベルは羨ましいと呟き、レイナスとジョーアをよいしょと肩に乗せた。


「わっ! え、すごい! 力持ち!」


「クラムに抱え上げてもらうなんて、初めて……」


 2人は嬉しそうにはしゃぎ、バベルの事を褒めながら喜ぶ。バベルは先頭を歩きながら、一行を振り向いた。その得意げな顔に、ステア達はムッとする。


「ステア、僕を召喚しているんだから、ステアも僕の主だよ。僕が背負うべきだ」


「なんだ、貴様の世話にはならんぞ。それよりキリム、お前は何故さっきから黙っている。なぜ喜ばん」


「放っておいて、恥ずかしい……」


 クラム達の謎の対抗心に付き合わされ、キリムは両手で顔を覆う。やがて日も暮れ、一行は見張りを代わりながら野宿を始める。


 キリムは栄養が必要だからと肉などを用意し、食事で士気を上げようと宿と同じような食事を振舞う。魔物が襲ってくることもあったが、自信を付けた面々が苦戦する事はなかった。


「みんな、頼もしいね」


「装備の質の向上、強いと聞いていた亜種の撃破、自信を持つ理由がいくらでもあったからな」


「クラムのみんなもいるからね。洞窟の中がどうなっているか分からないけど、亜種が留まらずに逃げ出すってことは、いると考えて間違いない。奴はまだいる」


「ああ。行ってみたがいなかったらという不安もない」


 真夜中、キリムとステアの見張り番の時間になった。2人は周囲に気を配りつつ、明日の決戦を前に心境を語り合っている。


「洞窟の奥がどうなっているか分からないけど、ゲートの材料を集めきっているとも考えられない」


「付近の魔物の数はあまり変わっていないようにも思えるからな。だが亜種などを厳選して狩っていたとしたら、数体で条件を満たすかもしれん」


「そこなんだよね。亜種も危険を察知して出て行っている。亜種は狩られている可能性がある」


 キリム達は、手の内をおおよそ明かしてしまった。ガーゴイルも死月を含め、警戒すべき技がある事は理解しているだろう。


 飛び回る事が出来る場所ではなく、わざわざ洞窟に潜んでいる事も心配だ。ガーゴイルにはその方が有利だというのか。


「攻撃の手は前回と同程度か、もしくはやや下回っている。ただ、生存を考えるのならバベルの存在があればマシだ。壊滅さえしなければ守りようはある」


「そういえば、バベルくんを複数人が同時に召喚できたよね。あれって、どういう事だと思う?」


「バベル本人に聞かなければ分からんな。一体……」


「僕が盾で戦えるって事だよ」


 ふとバベルが起き上がり、キリムとステアの許に歩み寄った。バベルは2人の会話を聞いていたのだ。


「僕の結界は、召喚士を中心にして発動する事も出来るみたいだ。2人の周囲に張ることが出来た」


「という事は、洞窟の外で待ってもらう間も?」


「うん。僕は守れる。そして、ステアを中心に結界を張れば、僕が先頭を歩いていく事も出来る」


「守りたい、前に出たい、ってことだね」


 バベルは暗がりの中、大きく頷いた。


「うん。ジョエルとロイカには、守る事より妨害や攻撃に回って欲しい。ガーゴイルは僕が防ぐ」

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