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「暇なら物理攻撃しろ」と、双剣を渡されて旅立つ召喚士の少年の物語~【召喚士の旅】Summoner's Journey  作者: 桜良 壽ノ丞
GATE~すべてに意味があるのなら~

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GATE-03



 * * * * * * * * *




「ここだよ」


「わー……お」


「もう少し落ち着いた雰囲気を想像していたが」


 2日後にエンキとワーフがジェランドから戻り、そこから更に3日。

 どうしても先に図面を引いておきたいと言われ、結局キリム達は5日後にヤザン大陸を訪れた。


 ヤザン大陸の南東にあるゼムニャー島は、冬でも温かくて過ごしやすい。この時期は北半球で夏真っ盛りの地域よりも人気の観光地だ。


 遠浅で砂の層が沖まで続く海岸線、拓けた平らな町並みは、来る者をいっそう開放的な気分にさせる。町に雇われた警備の旅人も、暑さのためか鎧などは脱いでいた。


「なんだか、装備を着てる俺達が場違いに思えるね」


「フン、こいつらのように半裸で歩きたいなら止めはしない」


「あ、うん……やめとく」


 砂浜には水着姿の観光客が大勢いて、赤や青のパラソルを立てている。泳ぐ者、寝そべって日光浴をする者、走り回る者、様々だ。キリムは視線をどこに向けていいのか分からず、ふと沖の方へ目を向けた。


「船が出てるね、沖で魔物の襲来を警戒しているんだろうか」


「海の魔物……サハギンは大丈夫だよね。驚かせたり、悪い事をしなかったら襲ってこないよね。僕、サハギンとは戦いたくないんだ」


「そうだね、俺も同じ。元々警戒心が強いし、わざわざ襲いには来ないかも。前にいっぱいもらった紅貝の殻、ワーフが嬉しそうに持って行った後、どうなったんだっけ」


 青と白のグラデーションは水平線を溶かし、空と海が続いているかのようだ。海沿いに集まる人々には、魔物への恐怖など全くない。


 旅人なのだから、軽鎧を着ていようが目的が他にあろうが、観光をすることも自由だ。しかしキリムは遠巻きに眺めるだけに留め、バベルが戦ったという場所を案内してもらう事にした。


「瞬間移動するね」


「うん……って、言いながら瞬間移動されると心の準備が。えっとここって、町からそんなに離れてない場所、だよね」


「うん、外壁は見えていたよ。もう暗かったし、木がいっぱいで魔物がどれくらいいるのか分からなかったんだ。バアルの力だと、木が落雷で焼けちゃうし戦い辛くて」


「そっか、宿よりも東にあるから、先に夜が来ちゃうのか。しかもそんな戦いなら時間が掛かるのも仕方ないね」


 葉が多く下草もびっしりと生えた森の中は、その当時が嘘のように静かだった。魔物がとめどなく湧いていたのか、それとも元々大量にいたのか。


 普段から危ない場所だったなら、ここまで人気の観光地にはなれなかっただろう。それどころか、人が定住を諦めていたかもしれない。


「数日前に狩り尽くしたとはいえ、それほど多く湧くのであれば、もう数体は遭遇してもいいはずだ」


「最近多くなってきたって言ってたよ」


「魔物の源である負の力も、ある程度の限りがある。多くなったとしても、ある程度で魔物の数が横ばいになるはずだ。原因がある限り、魔物はゼロにはならん」


「それなのに増え続けたって事は、何か今までとは違う変化があった事になるんだ。それと同時に、倒して数日経っているのに、それまでいた場所に全くいない状態もおかしいんだよ」


「昨日今日で戦闘があったような痕跡もないな」


 大量に湧くきっかけが何かあったにも関わらず、今は嘘のように魔物が見当たらない。頭上のどこかで鳥がさえずり、猿が仲間を呼ぶように吠えている。脅威とは無縁のようだ。


 キリム達はゼムニャー島のこれまでを知らない。原因調査であればすでに旅客協会の出張所が行っているだろう。1から情報を集めるより、既にある情報を聞きに行った方が早い。


「協会に行こう。首を突っ込むべきかは分からないけど、何か嫌な予感がするんだ」





 * * * * * * * * *




 キリム達はこじんまりとした海辺の宿を取り、荷物や装備を部屋に置いて出張所に向かった。キリムは白い半袖に紺のハーフパンツ、バベルは黄色いタンクトップに黒い短パンだ。ステアは黒いハーフパンツを穿いているものの、上は黒の長袖だ。


 クラムに暑さ寒さなど関係ない。よってこれしか持っていなかったのだから仕方がない。


「こんにちは」


「はい、ようこそ」


 出張所は簡易的で、骨組みに木板を張っただけの簡素な平屋だった。職員も男性2人しかおらず、各職のギルド支部は置かれていない。緊急時を除き、休日は閉館となるそうだ。


 若い男性職員はキリムやステアの正体に気付いていない。短い黒髪に良く似合う爽やかな笑顔を浮かべ、キリムではなくステアに声を掛けた。


「さて、ご用件は?」


「俺ではなく我が主に聞け」


「主……あなたは雇われている方でしたか。失礼、そちらのあなたは何かクエリを発行したいのですか?」


 装備を着ていないせいか、キリムは一般人だと思われている。キリムの見た目はせいぜい20歳手前の青年、バベルにいたっては少年だ。キリムは仕方ないと呟いて名乗った。


「あの、ダイナ大陸から来ました、キリム・ジジです。こっちはクラムステアとクラムバベルです」


「キリム・ジジさん……あっ、えっ……キリム・ジジさん!? あの、えっと、あのキリム・ジジさん!?」


「多分、そのキリム・ジジで合ってます」


 キリムは大切にしている召喚士バッジを見せ、登録番号を読み上げる。いつの間にか別の男性職員も傍に来ており、2人は「おお、おお……」と照合しながら驚く。


「ボク、ナルシャ・ジュガンダと言います! こちらは上司のセンベロイ課長」


「キリム・ジジさん! まさか観光にお越しだとは! さあ、絶景スポットをご案内しますよ! 夕陽を見るのなら西の岬に! 美味しい海の幸をご希望ならベヨリエンゼイ亭を!」


「いや、あの……観光に来たとは言ってないんですけど……」


 出張所が設置された割に暇なのか、上司のセンベロイは観光案内を申し出る。他所であればクエリが何十枚と張られている掲示板も、わずか2枚があるだけだ。


「この島には、最近になって出張所が開設されたと聞いた」


「え? ああ、はい。人が集まる場所なので、治安維持と魔物から観光客を守る事を目的に建てられました」


「でも、これまで何百年も出張所がなかったのに、何故今になって……クエリもそんなにないようですし」


 キリム達が何故訪れたのかが分からないまま、ナルシャが問いかけに答える。


「簡単に言えば、今までとは違う魔物が増えてきたからです」


「今までと違う……?」


「はい。この島は元々ゴブリン族やウーガ族のような魔物がいませんでした。土葬時代の墓から生まれたアンデッド、動物型のウォーウルフや蛇型のブラッドシャークなどがいるくらいで」


「え、僕がこの前戦った時、ゴブリン族がいっぱいだったよ。ウーガもいた」


「ええ、そうなんです」


 ナルシャは頷きながらセンベロイへと視線を向ける。センベロイが頷いて奥の部屋に行った後、資料の束を持って戻って来た。


「そちらのテーブルでお話ししましょう。心配いりません、クエリを受けに来る人も出しに来る人も3日に1度くらいです」


「それなら出張所など……」


 ステアはそう言いかけ、なるほどと頷いた。センベロイの目はそれを正解だと告げている。


「この出張所の目的は、そもそもクエリや旅人のサポートではない」


「おっしゃる通りです」


「ボクたちは、今までいなかった魔物が湧くようになった原因を探っているんです」


 そう言って、ナルシャは掲示板に貼られたクエリを1枚剥がした。キリムがその内容を読み上げる。


「町の周辺の森の調査。見つけた魔物の種族と数を報告して欲しい、必ず倒す事……」


「これ、実はボク達旅客協会が出したクエリなんです」

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