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「暇なら物理攻撃しろ」と、双剣を渡されて旅立つ召喚士の少年の物語~【召喚士の旅】Summoner's Journey  作者: 桜良 壽ノ丞
【Pageant】悪は正すべきか、滅するものか

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Pageant-08(126)



 キリムは壇上からしっかりと皆へ顔を向け、そのまま言葉を続ける。


「そして、俺からも……僕からも1つお願いをさせて下さい」


 キリムが頭を下げる間、旅人達はその次の言葉を待っていた。誰も聞かないつもりなどない。レベッカが横で「続けなさい」と言って頭を上げさせた。


「デル討伐……デルの処罰は皆さんにお任せします。だけど、どうしてデルがミスティを襲ったのか、本当に各地を襲っているのか、問いただしたいんです」


「ちょっと待った! 殺すなって事か?」


「おいおい、キリム・ジジ、お前は家族や友人をデルに殺されているんだろ!」


「本当の事を言うだろうか? それに手加減して勝てる相手じゃないんだぜ? クラムを従えても勝つのがやっとな強敵だってのに」


 旅人達が異議を唱えるのはもっともだった。デル討伐、すなわちデルを全力で始末する事を目的としている者が殆どで、レッツォも今日は捕らえるという言葉を使わなかった。


「デルが全部やったとして、ミスティを2度、3度襲う事も出来たと思うんです。一方、他の町は居合わせた旅人でなんとかなる戦いで済みました。本気を出していないだけ……なんでしょうか」


「確かに、言われるとそうだけどよ。あっちも力を溜めてんじゃねえの? 召喚士を効率良く狙いたいのなら最小限の力で潰したいだろう」


「生きてたら相当なジジイだし、寿命が尽きる前に何としてでもって考えても不思議はねえ」


「ちょっと待って、それなら今まで行動に移さなかった理由にならないわ」


 旅人達はデルの仕業だと考えるだけで、それ以上の事を考えていなかった。ここにいる旅人の大半は経験が10年~15年程度しかない。


 それ以前のデルの悪行など、ミスティが襲われるまで忘れられていたくらいだ。


「その理由、知りたいと思いませんか。召喚士が憎いといいながら、襲撃が最近になって増えた理由は何でしょうか」


「そりゃあ、知る機会は今回しかねえし、興味がねえとは言わねえよ」


「それを知ったから許すとか、そういう事じゃないんです。何故かも分からずに死んでいった人達に、せめて報告したいんです」


 キリムの呼びかけに、許すという意味でないならと、旅人達は賛同し始める。


 生かして捕える方がはるかに難しい。けれど何より一番デルを憎んでいるはずの少年達が願い出たとあれば、他の者達は駄目だとも言えなかった。


「決まりだね。さあ、倒しに行く奴は集まったかい? ミゴットちゃんと言ったかね。出来ればあんたにもエンシャント渡航組に入って欲しいところだけどね」


「えっ」


「あんた、あたしを誰と思っとるの。世界中で遊んどる旅人をかき集めるくらいの事、このババアが朝飯前さ」


 レベッカはニカっと笑ってミゴットの背中を押し、エンシャント渡航組の集団に向かわせる。


「ほらこの子のパーティーの坊やたち! あんたらも渡航組だよ!」


「ちょっと、レベッカさん! まとめるのは俺の仕事だぞ」


「あんたがチャキチャキ纏めんから、こんなボクと嬢ちゃんが前に出たんやろがね! 情けない、それでもパバスの戦斧士ギルド長かね」


 レッツォは逞しい図体でガックリと肩を落とし、チラリとキリムに視線を向ける。


「悪いね。俺がレベッカさん達に敵わない理由、なんとなく分かっただろう」


「ええ、ギルド長って、大変ですね」


 それからレッツォは気持ちを切り替え、パーティーメンバーに指示を出す。各町や村の警備に回る者への案内を任せようとしていると、今度はステアが行動に出た。


 腕組みをしたまま、瞬間移動をして消えたのだ。


「あれ? ステア?」


「どうしたんだい、クラムステアの召喚を解いたのか」


「いえ、解いてません。というか、ステアは解いても帰りません」


 キリムも訳が分かっていなかったが、ステアは1分も経たずして戻って来た。特に何かを持ってきたようでもない。


「ステア、どこに行ってたんだ?」


「もうじき分かる」


 ステアがそうキリムに告げると、にわかに講堂の外が騒がしくなる。何事かと不審に思っていると、講堂の扉が勢いよく開き、キリムの良く知る者達が入ってきた。


「よーう! ステア、来たぞ」


「へへっ、こりゃ腕が鳴るってもんだ」


「おいらに出来る事があるなら何処にだって行くさ!」


「なんだ、まだ戦ってはおらぬのか。よく効く薬を持って来てやったというのに」


 現れたのは武神クラムディン、炎神クラムサラマンダー、土神ノーム、それに慈悲の神アスラだった。


 皆が口をあんぐりと開いて固まる中、クラム達はワイワイとお喋りをしながらステアの許にやってくる。


「バアルの野郎とラムウの爺さんは、町に入るのはやめとくとさ。地震だの雷だの、町が壊滅しかねないからな。他の奴もめんどくせーから置いてきた。さあデル討伐に出発!」


 クラムディンの元気の良い掛け声に続いたのはサラマンダーとノームだけだ。空回りの後の静寂は無よりも虚しい。旅人は身じろぎすら出来ずにいた。


「気が早いぞディン。今からエンシャントに行く奴の選抜だ。おいお前ら、さっさとキリムとそこの……キリムの友人の姉に固有術を教えろ」


「おうよ!」


「えっ!?」


 ステアはクラムも力を貸すと言いたかったのだろう。そのため洞窟に戻り、その場にいた戦えるクラムを呼んだのだ。


 キリムとミゴットは恐る恐る固有術を教わる。他にも2人召喚士がいたため、それぞれにも気前よく固有術を渡すと、ディン以外は帰って行った。


「ステア、有難う」


「あのグラディウスでさえやられた。この世界はクラムの力を借りずに戦える程、強く出来てはいない」


 ステアや他のクラムにとっても、弔い合戦のつもりなのだろう。キリムはクラムの思いも受け継ぐつもりで力強く頷いた。





 * * * * * * * * *





 選考会場はユネスタ地区の北、ユネスタ海と呼ばれる内海の砂浜だった。細い海峡1つだけでは水の入れ替わりが遅く、外海に比べると濁っている。


 レッツォが説明をしている間、キリムは出来る限り波打ち際に近づき、視線は海の中に向けていた。だが透明度の低さにガッカリし、レッツォへと視線を戻す。キリムは魚が見えるかとウキウキしていたようだ。


「さあ諸君! 魔物1体につき1パーティー、2組同時に行う! 付近に別の魔物が出たら、その殲滅まで行う事! 特に制限はしないが、連戦となった時に役に立たないような戦い方はしないで欲しい」

 

「ったく、性格の悪いリーダーだ。この足場で戦うとなれば、普段よりも力を使わねえと無理だっての」


 キリムが特に何も考えずにいると、隣に槍術士の男が立ち呟いた。見上げれば兜に特徴的な耳のフォルム、漆黒のプレートメイル。


 男はキリムの肩を軽く叩き、兜を脱いだ。


「ニジアスタさん」


「元気そうだな。ジェランドの後も人を救ったと聞いたぜ」


「ぐ、偶然ですよ」


「偶然でも救った事は事実だろ。自分の実績は誇示していかねえと、等級は上がらないぜ」


 黒い髪に、僅かに白が混ざったクーン族特有の猫耳。容姿こそ違えど、ニジアスタの言葉はまるでステアのようだ。


「あのレッツォっておっさん、わざとこの場所を選んだと思うぜ」


「どういう事ですか」


 ニジアスタと仲良く話し始めたためか、ステアはキリムの気が自分以外に向けられてムッとする。腹いせなのか、ニジアスタが答えを告げる前に割って入った。


「こういう事だろう。砂の上は跳躍や回避がしづらい。劣悪な環境で闘う事を想定し、それぞれがそう簡単に普段の戦い方が出来ないよう、この場所を選んだ」


「チッ、俺の台詞を持っていきやがった。まあそういう事さ。疲れるのは仕方がねえ、いつも通りの気力じゃ半分も跳べないから、そのつもりで動きな」


 ニジアスタはそう言って手を振り、後ろから追って来たダーヤと合流した。


「俺の方が先に……ハァ、ハァ、キリムくんに気付いたのに! 俺の方が体力ないって知ってて先に声かけるとか……ハァ、ハァ、卑怯の極み!」


「知るか」


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